1話 貧乏魔導師の苦難
此処は大陸の中央にある全ての国の始まりとも言われる大国アルキメデア第十五地区魔工都市ディアロである。
大国アルキメデアは15の地区により分かれており、完全実力制により居住地区が決まる。
地区が若い程力を持つ貴族や王族などが住み世界最高峰とも言われる人材の宝庫にもなる。
無論、他の国と比べても圧倒的に栄えてはいるが、此処、ディアロは言わば掃きだめの都市である。
勢力争いに負けた貴族や中流以下の庶民や他国からの移民などが住む都市であり人口は50万人程であり魔工都市の名前の通り
魔工学の研究施設や、魔工技師の育成機関などがあり後は魔導書の闇市などが有名である。
星が創り出したと言われる魔導書は魔導師には必需品ともいえ、星の導きの元に所有者を選ぶと言われている。
そう魔導書には意志があり高位の魔導書となれば人の姿を取ることもある。
基本的に魔導師の一族は魔導書を召喚する術式を物心がついた頃位に教え召喚させ、魔導師ギルドによるランク付けがされる。
魔導書と契約すると使える魔術適正や魔力などに変化が現れる為そういった能力値により初期のランクはつけられるのだ。
ランクは最も下がランク50であり最高位はランク0のマスターと呼ばれる者達でありマスターは現在世界に20名程しか存在しないのだ。
基本的に初期のランク付け以外はそのものが成した功績やあるいは新たに魔導書と契約した場合などに変更されるものである。
主にランクを功績であげる方法としては魔導師ギルドの様々な依頼をこなしたり、魔人や魔物など人に害を成す者を討伐した際に魔導師ギルドがランクの昇格を言い渡す。
ランクが高くなれば待遇や給料や受けられる支援など全てにおいて変わる為、庶民が一番てっとり早く地位を向上出来ることから
魔導師は大人気の職業であり力ある貴族なども高位の魔導師が多い為、完全実力主義の職業のひとつである。
基本的に優れた魔導師でも初期はランク10が最高であり、後は実力によりランクを上げていく形になる。
そんな実力主義の職業である魔導師として大成し栄華を勝ち取るべくアルキメデアに来た一人の若者がいた、
そう僕。シオン・カーティス、アルキメデアより遙か南に位置する小国メルデアの没落貴族の家に生まれ今年で18歳となる。
現在は魔導書の召喚に失敗し魔力の暴発により周囲に大きな被害を出した為国を追放され莫大な借金を抱えた唯の貧乏魔導師であり
不幸中の幸いとして借金は友人が肩代わりしてくれた為、奴隷の身分には落ちなかったが急ぎ金がいる状況には変わらず。
起死回生の成り上がりを目指しアルキメデアまで来たわけだ。
しかし現在のランクは49と低い為、受けられる依頼も少ない。
しかも魔力暴発を起こした落ちこぼれとして悪名も名高い為、他の国では仕事に困り、世界一大きい大国アルキメデアに来たので当然伝手もない。
誰も受けないような危険な仕事を受けるしかないわけである。。
なけなしのお金で此処ディアロで安宿もとった為ほぼ一文無しだ。
そんな僕は依頼を受けるべくとりあえずディアロにある魔導師ギルドに向かうのであった。。
魔導師ギルドの外観は非常に綺麗で教会を思わせる建物であり特に第15地区とはいえアルキメデアの魔導師ギルドともなれば非常に大きい。
ギルドに入ると奥にカウンターが20個程あり受付嬢達がいる、幸い昼下がりなのもあって空いていた為、僕は受付にすぐ向かうことが出来た。
「あの、すみません、登録魔導師のシオンです、依頼を受けたいので手配をお願いします」
と僕は銀髪で20代位の受付嬢に声を掛ける。
「いらっしゃいませ、シオン様ですね?私はエリマールと申します。登録の確認をしたいので登録証を拝見出来ますか?」
と笑顔で丁寧に言われ僕は首輪型の登録証を受付嬢に渡す。
「はい、どうぞ」「ありがとうございます!」
確認作業をしていたエリマールさんの確認が終わったようだ。
「確認出来ました、えっとシオン様はランク49の魔導師ですね。現在受けられる依頼ですが
魔物の討伐依頼のみとなりますね」
そう言われ疑問を僕は口にする
「あの、通常は僕のランクですと魔物の討伐依頼は手配されませんよね?」
エリマールさんは実に嫌そうに答えてくれた
「はい、通常であれば低ランクの方には物品の代理輸送や採取などが一般となっておりますが
シオン様は異名持ちであると共に限定魔導師であるため通常の依頼は受けられません」
限定魔導師とは何かしら過去に事件などを起こし権限を限定されている魔導師のことだが他の街のギルドでは言われたことが無いため
その言葉に僕は驚く。
「あの、以前に他のギルドではそのような事はなかったのですが最近変更があったのですか?」
それを聞いたエリマールさんはどこか呆れたように答える。
「はい、シオン様は此処に来る前にサイクロプスの討伐をされてますよね?
その際に依頼主を脅して報酬を上げさせたという告発を受けたのもありまして限定魔導師として認定されてますね。」
確かに僕は此処に来る前にサイクロプスの討伐を受けたが討伐終了後に依頼主は報酬を一切払わないと言い
僕はそれに対し脅しに近い行為はしたが本来であれば契約違反なのだから
お咎めは無しなはずだ、しかし限定魔導師と認定された以上は何を言おうと仕方ないだろうと諦め僕は聞く。
「では現在受けられる依頼をお願いします」
それを聞きエリマールさんは答える。
「では都市外れにあるメルザの森のガーゴイル討伐になりますね」
ガーゴイルといえばランク30の魔導師が数人掛かりで倒すような魔物であり、少なくとも49の一人だけに依頼する内容ではなく、言わば死ねと言われてるようなものだった。
「えっと、ガーゴイル討伐は一人でですよね?」と僕は思わず聞き返す。
すると不思議そうにエリマールさんは言う
「はい、一人での討伐になりますね。他に受けられる依頼も無いに等しいのですがやめますか?」
と聞かれ僕に受けない選択肢は無いため渋々受けるのであった。
「すみません、受けます」
出来れば…さくっと終わればいいな。そう思いギルドを後にするのであった。。