未熟な革命家〔前編〕
今回は恭助と星歌の過去についてです。
今から3年前……
「おい待て!」
「誰が待つかバカ野郎!」
「んだと! 絶対に捕まえてやるっ!」
当時中学2年生の僕と星歌は下校中、たまたま万引きの瞬間に遭遇した。
被害にあったのは近所の銀行にお金をおろしに来たおばあちゃんで、犯人が掏ったバックにはそれなりの現金が入っていたようだ。
その後、星歌が警察に連絡し、僕が犯人をしつこく追いかけるというチームプレーで何とか捕まえる事が出来た。
「や、やっと捕まえたぞ!」
「にーちゃんよぉ…… バックは返すから、見逃してくれねぇか?」
「なに馬鹿なこと言ってんだ。観念するんだな!」
星歌が言うには、警察が来るにはまだ時間が掛かるとの事だった。
僕は犯人が再び逃げないように監視をする。
「なぁ、頼むよ。俺だってやりたくてやってる訳じゃないんだ」
この男、まだ言うか…… と呆れていると
「このままだと対魔会の連中に殺されちまう……」
呟くように言ったその言葉を聞いた瞬間、僕は犯人の胸ぐらを掴んでいた。
「お前は今、対魔会と言ったか!?」
犯人の男は一瞬、しまった。と言うような顔をしたが、すぐに冷静を装って
「何言ってんだにーちゃん。そんなこと言うわけ……」
「正直に答えろ!」
僕は男の首に手刀を当てて、声を荒げる。
緊迫した空気におののいたのか、男は声を震わせながら、
「い、言ったよ! それがどうした!」
「それがどうした。だと……?」
対魔会というのは世界最大級の犯罪組織で、所属する人の殆どが魔力保持者で構成されている。
奴らはA~S級の危険魔道具を売買し、不法に利益を得て、さらにその危険魔道具を犯罪行為に利用しているので、全世界の魔法警察が全力をもってその情報を捜索しているのだ。
しかし、リーダーがとてつもなく頭の切れる人物らしく、全く尻尾を掴ませないので、これまで逮捕にたどり着けずにいる。
そんなやつらの情報を聞けるかもしれない。その気持ちから、僕は相当に焦っていた。
「それで、お前は対魔会のメンバーなのか?」
「あぁ。と言ってもかなりのしたっぱだがな」
「では何故、対魔会であるお前はこんなところに来ている?」
「そいつぁ言えねぇよ」
普通、対魔会ほどの犯罪組織がこんな都会にいるわけがない。
警備が手厚いので、すぐに見つかる可能性があるからだ。
「お前の身柄は警察が守ってくれるはず。それに、もう罪を重ねたくないだろう?」
「……」
「頼むから教えてくれ!」
必死に説得を試みる。
すると、犯人はゆっくりと口を開き
「……密売だ」
「何?」
「上の連中はこの先にある港の廃倉庫で魔道具の密売を行うらしい」
「それは何時頃だ?」
「午後6時には取引が始まる。奴らなら手早く済ませるはずだぜ」
現在の時刻は午後4時45分。密売の開始までまだ1時間弱ある。
「わかった。協力ありがとな」
「俺はにーちゃんに協力した訳じゃねぇさ。
ただ、もうコソコソと隠れる生活に飽々したんだよ」
そう言う男の顔は、少しだけ晴々としている様な気がした。
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「対魔会の密売を取り押さえる!?」
僕が星歌に今までに得た情報を話すと、案の定とても驚いた。
「あぁ。僕らだけでやるんだ」
「で、でも魔法警察の到着を待った方が良いんじゃ……?」
「さっき捕まえた犯人ならもう逃げないよ。それに、取引が始まるまでもう時間がない」
僕がそう言うが、星歌は不安そうな顔をしたままだ。
「性格な位置を見つけるには星歌の《俯瞰》の力が必要なんだ。手伝ってくれるか?」
僕は星歌にそうお願いした。
すると星歌は決心した顔で
「わかった。だけど……」
「だけど?」
「無理しないでね」
彼女が懇願するような瞳でそう言ってくる。
もちろん、今回の件に関しては、最悪な展開も視野に入れなければならない。
だけど
「大丈夫だって」
僕は自信満々にそう言い、港に向かい走りだした。
そう。この浅はかな行動が、
後に僕の一生外せない鎖の元になる。
当時の僕は、自分の力に慢心し、根拠の無い自信に溢れていた。
そのせいで取り返しの付かない事になるなんて、これっぽっちも思っていなかったんだ。




