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転生先は現人神の女神様  作者: 子日あきすず
ファーサイス 不死者の森編
36/88

34 豚ちゃんは出荷よー

今日は2話同時になります。

これは1話目。


作戦が終わり、これと言った急ぎの用事が無くなった為、のんびりと過ごした。

当然ギルドには行って報酬もらってきた。またたんまり貰った。

ドラゴン素晴らしい。


そしてある日の午後、いつもどおりティータイムしてたら思い出した。


「あ、そう言えば教会の事忘れてたわ」

「教会がどうかしましたか? また何か粗相でも?」


『また』って所が笑えるわ。普段の評価がよく分かる。


「力を与えてる側の我々からしたら、今すぐにでも叩き潰したいのだけれど、《回復魔法》が無くなったら困るでしょう? だから国王にでも愚痴ってやろうかと」

「ああー……あー? 特に困らないのでは? ほぼ利用されていないかと」

「……と言うか、何でこの国教会なの? 精霊信仰って聖堂じゃなかったかしら?」

「それはですね……うちもそれなりに長い歴史があるのですよ。精霊信仰は比較的新しいのです」

「精霊信仰ができる前から教会があった……と」

「そういうことです」


まあ確かに、そう簡単に建て替え、とは行かんわな。私じゃあるまいし。


「まあ、私よりも精霊達が潰したくてしょうがないみたいでね? 現状私の命令で止めている状態なのよ。でも、この間の作戦で会ったけど、予想以上にゴミだったからもういいかなって。既に《回復魔法》は没収してるし」

「……えっ? 今なんと?」

「精霊達が我慢できない?」

「いえ、最後です」

「ああ、《回復魔法》は没収済みよ。あれは我々神々の力。こうして私がいるなら回収も当然可能」

「そう言えば、ブリュンヒルデさんはあの時いませんでしたね」

「そうか。貴女達拾ってきた直後だったわね。ブリュンヒルデが来たのはその後だから、回収できるのは知らないか」

「回収済みなら潰しても変わらないのでは?」

「回収済みはゴミ共だけで、一応まともなのは残したままよ」

「ああ、なるほど。ふむ……」

「現状考えてる事と言えば、精霊達の命令を解除すれば、気に入らない奴をたこ殴りにしに行くだろうから、そうすれば騎士達も被害の調査やら何やら言って入れるんじゃない? そしたら『たまたま』別の何かが見つかったりするかもしれないけど」

「ふふふ、それは名案ですね。ええ、ええ。精霊様が暴れたら、騎士達が暴れた原因を調べなければなりません。国民の前でおきたことです、隠し通すこともできませんから公表せざるを得ません。じゃないと国民が安心できませんからね。それはいけません」

「ということで王の所行ってくるけど?」

「私もお供いたします」

「じゃあちょっと行ってくるわ」

「「行ってらっしゃいませ!」」


"ゲート"でお城に移動し、国王のところに突撃。ブリュンヒルデにした話をしたら、何か喜ばれた。特に宰相さんに。どんだけ嫌われてるんだと。


「あいつら、碌な事しねぇからな」

「ええ全く。しかも税を無駄遣いするんですよ。どうやって締め上げるか考えていましたからね」


という目が笑って無い状態でお言葉を貰いました。結構怒らしい。

まあ、そういうことなら遠慮はいらんな。精霊達を開放しよう。


「じゃあ、好きにさせるから。契約精霊は動かさないよ」

「そうですね。いちゃもん付けられる可能性があるので、契約精霊は動かさない方がいいでしょう」

「できるだけ書類系は残しておいてくれ」


つまり書類系以外はどうでもいいんだな?


「リュミエール、命令解除していいわよ。紙に触れないように言っといて」

「分かりました」

「じゃあ、私は帰るわ」

「おう」


ブリュンヒルデは自分で帰ってくるって言ってたから、先に撤収。

のんびりティータイムと行きましょう。


帰ってきた時には既に、殆どの妖精、精霊がいなかった。今頃教会は阿鼻叫喚の地獄絵図か……。

頑張れ騎士達。




王都でそこそこ広い土地に建っている、白をベースとした教会。

表は大きい礼拝堂があり、裏には居住区などが存在する。

そこは、神々にお祈りする場所で、とても静かで厳かな雰囲気が漂っている……べきなのだが……。

いや、ある意味では現実離れしたような、とても貴重な光景を目の当たりにしている事だろう。


なんせ今の教会は、精霊達が飛び回り、怒り狂っているのだから。



本来妖精や精霊といった者達は、魔眼持ちかエルフやドワーフと言った者にしか見えない。

それ以外では物理的に干渉する場合に姿を見せるが、基本的に干渉する事がない為、精霊を見たことある人は少ない。

もう1つとして、聖域がある。これは特異点と言われるマナが出ている場所で、エネルギーを気にする必要がない為、割りと精霊達の姿を見ることができる。聖域にたどり着ければ、の話だが。


妖精と精霊というが、基本的にこの違いは力、魔力量などの差でしか無いので、一般的には両方まとめて精霊、精霊様と言われている。



そして今の教会は、大小、色様々な精霊が飛び交っていた。

精霊とは神々に代わり、自然を管理する者である。精霊の力=自然界の力と言える為、非常に強力で、その為地獄絵図と化している。


そもそもこうして精霊達が暴れているのが異常なのだ。

精霊達は基本、自分勝手というか、マイペースというか、自由人というか、そんな存在である。

基本的には空中を、世界をふらふらと飛び回っているだけだ。

そして、稀に気に入った生物などに加護を与えたりする。その加護は生物にとって非常に有り難いもので、病気になりにくかったり、怪我の回復が早かったりと言った恩恵がある。

気に入った土地があれば、そこに住み着き、土地に加護を与える。その加護は、植物達の成長を促したり、果実などの味が良くなったりと言った恩恵がある。

つまり、基本的に精霊達は生物達に害を与える事はまず無い。それどころか助けてくれる存在だ。

だからこそ精霊様と、様付けで呼ばれる事が多く、身近な神として信仰される。


にも関わらず、この有様である。しかもよりによって教会が、である。

神々に感謝を、祈りを捧げる、聖職者。

神々の代理である精霊達からすれば、自分達の主に祈りを捧げる者達である。

その住処を『集団』で『襲撃』である。

傍から見たら『何事だ!?』となるのが普通だろう。

ただでさえこの王都には聖域があり、普段から精霊達の穏やかな、楽しそうな姿を見ているんだ。

楽しそうに遊ぶ小さい精霊、果実を収穫して運んでいる精霊、美味しそうに果実に齧り付いてる精霊など、非常に穏やかな、微笑ましい姿を日常的に見るようになったんだ。

そんな精霊達が大群で暴れていたらそりゃ気になるだろう。


教会からは当然悲鳴や叫び声が聞こえる。


「せ、精霊!?」

「か、壁がー!」

「や、止めてくださいませ! 精霊様! っ! きゃーっ!」


そりゃあもう、大混乱である。


「何の騒ぎだ! っ!? なんだこれはー!」

「「「「「「うるせー!」」」」」」

「ぐっほぁ!」


裏から出てきた男が、精霊達による全方位からの蹴りによって、その場で崩れ落ちた。


「やめっげほげほ! ぐふっ! や、やめ! がっはっ!」


崩れたところで止められる事もなく、死体蹴りである。


そして、別のところでも……。


「せ、精霊!? あのルナフェリアとか言う奴の指矩さしがねか!」

「「「「「「様をつけろよデコスケ野郎!」」」」」」

「がはっ!」

「誰にもっ!」

「ぐっふ!」

「命令なんかっ!」

「ぐはっ!」

「されて!」

「がふっ!」

「ないよ!」

「や、やめっ!」

「「「「「「うるせー!」」」」」」

「がっはっ!」

「「「「「「このっ! 罰当たりめがー!」」」」」」

「がっ!」


この光景を目撃した……してしまった女性は真っ青になりながら、部屋の隅でガタガタしていた。

その女性は《回復魔法》が使えるので男に助けを求められたが、精霊達の睨みにより動けず、隅っこで体育座りをし、ガタガタしていた。


そんな光景が所々で目撃され、これは尋常じゃないと騎士達に知らされる。

仕事とは言え、知らされた治安部隊の騎士達はたまったもんじゃないだろう。

相手が精霊だ『いったいどうしろと?』としかならないのだ。しかも1体ならまだしも集団。

知らされたからには、知らなかった振りはできないわけで。

勝てるわけもなく、近づいたらあれの仲間入りと言うのが分かる。


「おい……」

「……なんだ」

「……俺は行かねぇぞ?」


『ああはなりたくないからな……』と騎士はボロ雑巾のようになって転がっている男を指差した。

それに同意するようにその場にいた騎士達は頷いた。

そして彼らは、一先ず近くの住民たちを避難させ、安全確保を優先した。

今のところ周囲に影響は無いので、余裕を持って避難させることができた。


「なあ……」

「……なんだ?」

「……何したら精霊様がああなるんだ?」

「……確かに、なんだろうな……」


そう話す騎士達は、遠い目をしていた。

ゾロゾロ騎士達が集まってきたが、全員同じような目になった。


「あれ、でも無事な奴らがいるな?」

「ん? ああ、そう言えばそうだな。確かに無事だ。と言うか、差が酷いな……」

「つーことは、あいつらが何かしたのか?」

「その可能性は……あるな」

「と言うか、そうなんだろう。精霊様が意味もなく暴れるなんて聞いたことがない」

「……そうだな。大体喧嘩売った馬鹿がえらい目に遭うって聞くな」


その言葉の後、騎士達は顔を合わせ、顔を顰めたり、苦笑したりと様々だった。

全員思い当たる節があるんだろう『馬鹿』の部分に。

ただ、彼らは騎士だ。国に仕えるものであり、貴族も中にはいる。『馬鹿』と言う訳にもいかないので、誰も口には出さなかった。口には出さなかったが、全員思っていることは同じだろう。


「で、どうしようか、これ」

「…………」


ぶっちゃけ動きたくない、動きたくないのだが、騎士としてそうもいかない訳で。

とりあえず、渋々無傷の無事な人達の救助、と言うか回収に向かう。

その際話しかけた時に、スーッと精霊が出てきて、ジーっと無言で見つめ、しばらくしたらスーッと消えた。回収する側も、される側もびくっ!っとして固まり、消えた時に安堵の息を吐いてそそくさと撤収した。中には1発蹴り込まれる奴もいたようだが、それだけだった。


騎士達には何事もなかったが、1つだけ問題があった。

それは、ボロ雑巾と化した者を回収しようかと思った時、大量の精霊達が壁になるように、スーッと現れて、思いっきり睨まれるのである。

その際、会話できることは知っているので、ぶっちゃけ個人的にはどうでもいいが、仕事上そういうわけにもいかないので、頼んでみる訳だが……全員同時にぷいっとそっぽを向くのである。

何度かやってみても変わらないので、こりゃダメだとそそくさと撤収する。

ちなみに、誰がやっても同じで、そっぽ向いた後しばらくするとまた正面を見るんだが、その際頼むとまたぷいっとそっぽを向く。

そしてたまに、並んでる所から精霊が動いたと思うと、蹴り込むのであった……。相当怒っているらしい。その際、『うっ』という声が一応聞こえるため、生きてはいるようだ。


そして、騎士同士の話し合い(笑)の末、1人の騎士が精霊達の前に行って交渉するが、当然そっぽを向かれ、その際腰の剣に手を伸ばした瞬間、一斉に騎士をガン見し、それにびくっ!っとした瞬間一斉に蹴られて、後ろに倒れた。

その後、ものすごい勢いで仲間の、話し合い(笑)してた騎士達に回収されていった。

完全に生贄、実験台のソレだった。可哀想に。

まあ、精霊達も騎士達には何の恨みも無く、人の本質を直感で理解する為、かなり手加減されていた。

ちなみに、その蹴られた騎士はしばらくご機嫌斜めだったらしい。



そんなこんなで、時間が経ち、気づくと精霊達の姿は消えていた。

騒ぎのものがものだけに、治安部隊だけでなく、城からも騎士が来ており、結構な数で捜索された。

その後、王都にある聖域では普段通りの精霊達が見えていたのだが、その数日の間、国民は気が気じゃなく、ざわついていた。

調査の結果、教会の様々な不正が出てきて公開できるものは公開された。

『神々や精霊の名を使って不正を行っていた為、激怒したのだろう』という事で、国民は納得し、日常に戻っていった。

当然ボロ雑巾のようになっていた者は王都から叩き出され、上層部は法国に抗議するとニッコリしていた。無事だった者達は一応残されているのだが、さぞ肩身の狭い事だろう。

ちなみに、残った者達はどちらかと言うと精霊信仰のようで、味をしめた教会の上層部がずっと居座っており、残ったもの達からしても、奴らは邪魔だったらしい。

今後はマシになるだろう。なんたって精霊達の襲撃を体験しているのだから。


この間、ルナフェリアは残った契約精霊達とティータイムを楽しみながら、魔眼で見て内心爆笑していた。完全に娯楽と化していた。この世界は娯楽が少ない。

ジェシカもエブリンも、2人して『いい気味です』と言っていた。




「教会も片付いたし、しばらくのんびりしましょう。次は何しようかしら」

「近いうちに収穫祭がありますよ」

「収穫祭?」

「はい、収穫祭です。3日間続くお祭りですね。自然の恵みに感謝を。ということでパーっと行くお祭りです。他国からも結構な人が来ますよ。まあ、1月程は先ですが」

「収穫祭ねぇ……」

「新作料理のお披露目などが各店で行われることが多いですね」

「ふむ。1月先となると、熟成肉が何個かできてるわね……。そうだ、ローストビーフも作りましょう。オーブン……あった方がいいかしら? 収穫祭で新作肉料理2品作りましょうか」


あれ? 『次は何しようかしら』とか言ったけど、私ほとんど何もして無くね?

1.リュミエールとオスクリタに魔法を使わせて、自分も使った。

2.《月の魔眼》で見てた事を隊長格に知らせた。

3.ベテラン騎士や冒険者達の救助活動。

4.ミストレイスドラゴンとエルダーリッチの排除。

うん、4個しかやってないな?

いや、いや、いや。十分か。他のやつにはできないことをしていたんだし、いいだろう。

報酬はたんまり貰っているんだし、逆に言えばそれだけの事をしたと判断されたんだろう。

そういうことにしておこう。『人類』からすれば十分なんだろう。例え私が物足りなくてもな!

…………オーブン作ろ。




オーブン アーティファクト

ルナフェリアの作品。

調理器具の1種。

温度調節機能付き。


はい、完成。

いや、うん。私からすれば単純なオーブン作る分には時間かからんよ……。

ちょっと大き目の作っておいた。持ち運ぶもんでもないし、燃料魔力だけだし。

温度設定可能で、温度を一定に保つという設定に多少考えたぐらいかな……。

『そういう物』にするのは止めた。嫌な予感するから。

神器 オーブンとか堪らんわ。

アーティファクト:神が与えしアイテム。

という時点で、私が作った物は問答無用でアーティファクトになるから、そこを気にするのは止めた。

与えしとか言ってるけど、与える気は毛頭ない。誰がやるか。自分で使うから作ったんだ!

快適生活とアーティファクト量産と言う天秤は、余裕で快適生活が勝ちました。



そう言えば、本人達に確認しておかなきゃなるまい。


「ジェシカ、エブリン。座りなさい。大事な話をしましょう」

「「は、はい」」


ジェシカとエブリンを向かいに座らせ、ブリュンヒルデは立っている。

魔眼で大体は把握しているとは言え、本人の口から聞くのは重要である。

普段から魔眼で思考は読んだりしているけれど、わざわざソレを言うこともあるまいて。

悟り妖怪が気味悪がられたり、嫌われたりしているんだ、《真実の魔眼》はあれ以上だからな。


「エブリンはともかくジェシカ。貴女の夢って『困っている人を助けたい』だけれど、具体的には?」

「えっと……怪我や病気で困っている人を助けられれば……と」

「怪我と病気限定?」


ジェシカは一瞬キョトンとしたけれど、言いたいことが分かったらしい。


「はい、怪我と病気限定です。それ以外の事に干渉するつもりはありません」

「そう……」

「治ってからどうするかはその人次第です。私は治すことしかできませんし、それ以外に責任はもてません。偽善者だと思いますか?」

「いいえ? むしろ無駄な正義感がなくていいわ。怪我や病気治してはいさよならできるし。面倒くさそうなら2人で行かせようかと思ったけれど、これなら旅に連れて行ってもいいわね」

「どこに行くのですか?」

「特に決めてないわ。冒険者として護衛しながらふらふらしてもいいし、馬車作ってもいいし」

「なるほど。私も別に場所はどこでも構いません。……法国以外なら……」

「ふむ。エブリンはジェシカと一緒に居れれば良さそうだしいいとして……」

「……まあ、そうなんですけど……」


2人は冒険者登録もしていたようだが、どういう処理されてるんだろうか。

そう言えばあの裏切り者、ステータスリング持っていかなかったぞ?

……気づかなかった事にしよう。侍女として連れて歩けばいいや。

思考破棄。


とりあえず、収穫祭まで大人しくしてようと思う。


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騎士達は、交渉はしてるけど、事情は訊いてないんじゃあ…………?
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