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世界に一人だけ”俺”

作者: 初月・龍尖

 やぁ、俺だ。

 俺は今、草原の真っ只中で逆立ちをしている。

 何故逆立ちをしているかって?理由は一つ、何か思い出せないかと思ってだ。


 目が覚めたのは草原、しかも全裸。

 直ぐに記憶を辿ってみると俺の記憶に欠落がある事が判明したんだ。

 欠落していたのは”名前”と”何故草原に居るのか”の二つに関連した記憶だ。

 何処から何処までが関連した記憶なのか判らないので少しでも多く思い出せる様に血を頭に持って行く為に逆立ちしているのだよ。


 なーんにも思い出せないので、次に実行すべき事を考えるべきだろう。

 小説的な展開ならここが異世界なんだ!って解る所なんだろうけど、ステータスも見れないし、普通見れないような動物も居ない。動物が居ないっつーか、生き物の気配が無い。


 じゃあアレだ、魔法的な物は使えないのだろうか。魔術でも妖術でも奇跡でも呪術でも忍法でも良いけど、俺は魔法と呼称したい。

 なんでかって?魔的法則に則って行使されるモノと言う言葉が俺に刺さるのさ。

 取り合えず、右手の人差し指の先に火を点けてみよう。小説からの受け売りだけど出来るかな?

 まずは、身体の中にある魔力っぽいモノを感じる。

 身体を巡る温かいモノ、これが魔力かな?

 魔力(仮)を人差し指に集中させて火をイメージする。ライターみたいな感じだ。

 おぉ出来た、って大きすぎるぜ、もっと小さくできないか?魔力の制御が上手くいってないからか?

 火炎放射みたいな火を消して緻密な魔力制御を習得しないとダメだな。で、この火はどう消せばいいんだ?

 手を燃す気配は無いからいいが、空に炎が上がっていってる。イメージで火を出したからイメージで消せば良いと思ったが、どうにもそれだけでは上手くいかないみたいだ。

 恐らく、魔力制御技術が低い為に魔力で出来た炎が制御出来ていないと言う事だと思われる。

 じゃあ、魔法で水を出して消せば良いじゃないか。火を出したと同じ様に右の人差し指から火に重ねる様に水をイメージする。相反する属性による消失を狙ってみるつもりだ。

 反発属性による消失に成功。但し、消失時に巻き起こる水蒸気で視界が一時真っ白になったがな!

 魔力制御技術を高める為に身体に巡る魔力を隅々まで精査する。

 精査して解った事がある。魔力が常に俺の身体に入ってきている、そのせいで魔法の威力が跳ね上がっているらしい。

 入ってくる魔力のが多く、俺の身体には良く解らない程の魔力が渦巻いている。そんな渦巻く魔力の制御なんて出来る訳ねぇよ。

 なんて思っていたけど、俺は思いついた。制御できないなら溜める為の領域を作ってそこから魔力を引き出したらどうだって。

 制御を確かにする為に色々やってみた結果、俺は想像を魔力で魔法に創造する様な感じな事が出来る事が可能な事が分かった。

 その実験の副産物として色々可笑しな魔法が出来てしまったけど。

 恐らく、俺の身体に溜まった強大な魔力で強制的に想像を魔法にしていると言う事なのだろう。この世界の魔法システムってどうなってるんだ?

 魔力による魔力の溜まる領域、魔力貯蔵魔法、で良いかな?魔法で魔力を貯蔵する魔法って理論的に合ってるのだろうか。

 身体に入る魔力は魔力貯蔵魔法で一旦貯蔵されてそこから引き出して魔法を使う。これなら制御も楽になる筈だ。


 再び右手の人差し指から火のイメージ、今度はライターみたいにチロチロとした火が灯る。やったぜ。

 制御も魔力引き出しも上手くいっているみたいだし、色々周りを調べてみよう、何か情報があるかもしれない。



 探知魔法で周囲をくまなく探知するっと。

 お、鉱脈見っけ。しかし、深くて取りには行けないな。魔法で持って来る事は可能かな?

 む、消費魔力が多くなりそうだ。取るのは止めてマーキングだけしておこう。



 やはり、周囲に生き物は無し。不毛な土地なのか?

 取り合えず、町探さないと。この周辺に生き物が居なくても人里に出れば居ると思う。思いたい。


 魔法で足元の土を迫り上げて周囲を見渡す。両手の親指と人差し指で輪を作り千里眼魔法を使う。


 町は簡単に見つかった。俺が今居る場所から直線距離で多分十五キロぐらい先だ。


 ジョンソン、十五キロも歩くのは大変でしょ?ならこれを使うと良いわよ。

 まず、千里眼魔法で位置を確認するわ。次に意識のアンカー打つのよ。後はそのアンカーに引っ張られる様に転移魔法を使って到着よ。



 と言う訳で、町に到着。転移魔法ってあんなにヌルっとした感覚なんだな。あんな感覚何回も味わいたくは無いな。


 町、しかし、人の気配無し。探知魔法にも生き物は引っかからない。

 とりあえずは服が欲しいな。何時までも全裸じゃあ人と出会った時悪いしな。

 えっと、服屋服屋っと。ショーウィンドウ無いからよく判んないな。一軒ずつ見るしか無いか。


 片っ端から入ったが突然人が消えた様な状態の家ばかりだ。

 中途半端に料理が作られていた家や竈に火が付いたままの家、書きかけの書類と飲みかけの飲料がある家。

 連れ去られたにしては争った痕跡が無いし、一気に死んだにしては死体も血痕も無い。

 特命を帯びてこの街から全員居なくなったとか?

 まぁ、服は手に入ったし良いか。


 次に商店やら武器屋やらに入って武器、防具、薬なんかを回収、収納空間を適当に作ってそこに放り込んでおく。

 ギルドっぽい建物で色々な本を発見。武技の解説書とか魔法の解説書とかを回収。

 鍛冶屋でインゴットとか金槌とかを回収。

 炉に火は入ったままだし、作りかけの剣とかもあったけど、人は居なかった。


 町の広場で回収してきた物を鑑定魔法っぽい物を作って色々鑑定してみる事にする。

 結果、凄い事が判明した。

 インゴットやら薬草やらの素材類、武器や防具などの武具、ポーションなどの薬、全てが魔力を含んだ物になっていた。

 ギルドから持ってきた本を頭の中に直接ぶち込みこの世界の情報を取り入れてから鑑定したんだが、通常品が魔力に長時間触れる事によって出来た品ばかりだった。

 武具やら薬やらがそんな状態だったらもしかて、と思って着ている服を鑑定した所、コレも同じ様な状態だった。

 この世界の魔力ってそんなに多いのか?とか思いつつ次の行動に移る。

 ギルドで見つけた地図によると北の方に王都があるらしい。適当に街を巡りながら王都を目指す事にするか。







 気が付いたら俺は倒れた。良く解らんが倒れた。


 色々な街を見た。が、やはり生き物は居なかった。物資は大量にあったが。

 そうやって歩いて王都に到達して気が抜けたのか、いきなり身体が動かなくなった。


 倒れてどれぐらい時間が経った?

 時間の経過が判らない。


 俺ってどんな姿をしていた?

 身体が保てない。


 俺って誰だ?

 記憶が保てない。


 誰か、助けてくれ。


 誰か、誰か、誰か、誰かだれかダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカdarekadarek





 どれぐらい経ったか判らないが、目を覚ます事が出来た。”俺”の肉体は死んだが。

 まぁ。肉体なんて物は最初から無かったんだがな。

 結果を先に言ってしまうと、俺は剥き身の魂に魔力で出来た肉体が張り付いていた状態だったみたいだ。だから、魔力を大量に吸っていたんだ。と思う。


 肉体は消えてしまったが、魂は無事だったので今の状態は幽霊と言われる状態だ。

 万が一に備えて情報を魂に刻み込んでおいたのが功を奏したのか魔法やら武技やらは使える様だ。貯蔵しておいた魔力や物資も無事。

 とりあえず、肉体が無いと物に触れないから肉体造らないと。

 魔力そのものが肉体だったのなら不定形な肉体にすれば想像通りの姿になれるんじゃね?


 と、考えていた時期が俺にもありました。

 不定形な肉体の受肉は完了した。

 しかし、不定形過ぎて長い時間一つの姿になって居る事が出来ない。

 完全に醜悪な生物です、ありがとうございました。


 思考を放棄しつつ、身体が不完全なまま、王都を探査する。

 物資を回収しつつ隈なく巡る。

 一番の収穫は図書館の存在だ。一般書から禁書、魔導書まで全て回収し情報を魂にぶち込んでおきました。

 その本達のおかげで不定形の解決策が思いついた。

 操肉のローブで姿を固定すれば万事解決。

 操肉のローブと言う装備は呪い系の装備だ。ローブを纏った存在の肉体を遠隔操作出来ると言う物なのだが、操作者を俺の魂にして、俺の肉体に着せる事により俺の肉体を俺が操作出来るようになる訳だ。

 通常だったら肉体が変化する事は無いので仲間割れさせる為に装備させたりするものらしいけど、俺の肉体は不定形なのでこのローブを着ていればどんな姿でも自由自在な訳だ。


 肉体操作で竜っぽい姿になってまだ巡っていない町や遺跡などに赴き、物資を回収する。

 勿論、竜種やゴブリンなどの魔物の巣にも向かい全てを回収する。


 そうやって移動する内に脳内の地図はほぼ完成した。一カ所だけ入らなかった場所があったが。

 入らなかった場所とは山だ。名称は神の山となっている。



 神の山の麓に到着。山に入ってすぐ感じたのは魔力とは違った力だ。

 神を冠した山なのだからこれは所謂神力と言う物だろうか。

 山頂に近づくにつれて神力は濃くなってゆく。

 休憩はしない。と言うか必要無い。俺は元々魂だけの存在。肉体は魔力そのもの。体力やらスタミナやらは無限、と言うか設定されていない。

 山頂について俺は理解した。

 理解したと言うか、俺は全てを見ていたんだな。

 この世界に落ちた時に破損した魂の一部分が神力によって補完され、全てを思い出した。


 ムカつくか?いや、以前の人生は退屈だったし、ファンタジーな世界に落としてくれてありがとうと言いたい。

 この世界に落としてくれた天使よ、ありがとう。

 この世界は俺のモノだ。こんな良い玩具を俺に与えてくれるなんて良い奴らだ。


 この世界に満ちている神力やら魔力やらを全て吸ったら俺も神の末席に就けるのだろうか。

 まぁ、なれるだろうな、楽しく気楽に世界を作り変えてやるよ。


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