グランプリ
頭上に弾丸が飛び交う雑踏を駆け抜ける。
逃げ切るため肺に酸素を通わせようと呼吸するも、臭ぇ空気のせいで細かい咳となって漏れちまう。
「くそっ!今日はとことんツイてねぇ!」
朝飯を調達しようといつものレストランに忍び込んだまでは良かったが、張ってたボーイに見つかっちまった。
空腹のまま街をうろついてると、先週ボコったドリューのやつが数十の仲間を連れて報復に来やがった。
「群れの中でしか自分の存在を確立できねぇ、ドブ野郎め!」
そう捨て台詞は吐いたものの俺は一目散に逃げ出した。流石にあの数全部は相手に出来ねぇからな!
方々を駆け回るも、ついに俺はあいつらに包囲されちまった。
怒りに狂った顔でドリューたちは俺を壁に追い詰めたのだが、奴らはまだソレに気づいていなかった。
「覚悟しろよ、チビ助め」
「・・・残念だったな、デブ野郎ども。詰めが甘いぜ」
俺は足元のマンホールをくぐりぬけ、地下空間にダイブした!
「お前ら何してる!早く追うんだ!」
「無理だよドリュー。腹がつかえて通れないよ!」
あいつらの恨めしそうな声を聞きながら、俺は悠々と薄暗い地下道を進んでいった。
・・・流れ流れてたどり着いたこの街は犯罪・闇金・汚染空気となんでもありの世界だった。
だけどこれでいいんだ。今まで暮らしたどんな街だって真の意味で俺の居場所じゃなかったから。
「この街だったら幽霊や悪魔でさえも受け入れてくれるだろうよ」
その昔、街の洗礼をあびてボロボロになった俺を介抱してくれたジジィは欠けた歯を見せて笑っていた。
(あんたは何が目的でこの街でずっと暮らしていたんだ・・・?)
少し高く盛られた土に向かって話しかける。喪失が心に痛みをもたらすことなんて久しく忘れていたのにな。
(この街は何でもありみたいだ。だからきっと、俺が生きてゆく意味だってきっとここに-)
そう言い残し、また彼は街へ向かう。その生活は毎日が冒険そのものだ。
彼はその命の価値を知るため、誇りを胸に走り出す。
白ねずみオペンペンの冒険はまだ始まったばかりなのだ!