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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

前世大魔王は麗しく笑む

作者: 天川ひつじ

面倒なことになった。


アウラは、砂埃の中、懐かしい景色を見上げて思った。


***


アウラは、大魔王の生まれ変わりである。

笑える話だ。


ちなみに今は大変な美少女である。

素晴らしい話だ。


加えて、ただの美少女ではない。アウラの今の姿は、自分を殺すに至った女勇者の姿そっくりだ。

狂喜乱舞だ。



アウラがそのことに気が付いたのは幼少時。

それまであまり気にせずにいた自分の容姿を、大切に扱うようにした。


大魔王は女勇者に惚れた結果、命を落としていた。

自分が惚れた相手の姿をしている。なら、大事に美しく育てるべきだ。


同時に確信した。

自分がこの姿ならば、ではきっと、女勇者が、大魔王の姿をしている。

つまり勇壮な男前。


なぜって最後は想いあっていたわけだから。むにゃむにゃ。


***


大魔王だの何だのというのは、今の世の中では、大変に頭のイタイ子な発言なので誰にも言わずに暮らして大きくなった。


ある日、健やかに平穏な暮らしを過ごしていたら、勇壮な男前にばったり出会った。

運命的な出会いであった。

大魔王そのもののキリリとした姿の持ち主は、やはり、女勇者の生まれ変わりだった。


魔王はおろか魔力さえ無くなったこの世界において、元大魔王のアウラと、元女勇者、今の名をハヤト、の交際を誰も咎めるものはない。大魔王とか言ったらむしろ笑い飛ばされるぐらいの世の中だ。

こうして、誰にもはばかることなく再会を喜び、これから新しい世の中で二人で一緒に過ごしていこうと誓い合った。

めでたい。


***


二人でキャッキャうふふと過ごしていたら、邪魔が入った。

邪魔なソイツは、自分が大魔王の時の一番の側近だった。

馬にけられて死んでしまえと思ったが、魔力のないこの新しい時代でそれは単なる悪口にしかならない。


元側近は、アウラとハヤトの青春謳歌な様子を見て泣き崩れ、この世界に魔力が亡くなったのは、大魔王たるアウラが勝手に女勇者の後を追って死んだせいだ、魔族をすべて裏切ったのだ、と糾弾した。


自分は別に好んで大魔王になったわけでもなかったし、単に、皆が自分のもとに集まってきていただけである。

ついでに、自分が何に遊び何に死のうが、お前らに一切関係ない。何を言われる筋合いもない。


魔族を裏切ったの、世界に魔力がなくなったのだの言われても、正直アウラには痛くもかゆくもなかった。


のだが、

秘密にしようと思っていた事をばらされてアウラはブチ切れた。


大魔王は、女勇者の寿命が尽きたのを嘆き悲しみ、女勇者の持つ正義の剣で後追い自殺なんかしたのだ。

カッコ悪い。

それをあろうことかバラされた。


お前なんぞ知らんわ、とアウラが怒鳴りつけたら、元側近はまるで雷に打たれたようにショックを受けて、それから急にブチ切れだした。


あなたがそんなんだったら、この僕が魔王として君臨してこの世の中を再び暗黒の世界に染めてやる、とか叫んで、姿をくらました。


まぁ頑張れ、魔王なら一人称で「僕」はやめとけ、などと思いつつアウラは無感動に見送ったのだが、元女勇者であるハヤトの方が状況を憂えた。

このままでは、放っておけない、心配だ、と言うのである。


彼はキミの事が大好きだったんだと思う、などとハヤトが言ったが、そんなの知らねぇよ、と。

口に出すとハヤトに怒られるのは分かったので、口に出すのはやめておいた。


まぁとにかくハヤトが言うので、アウラとハヤトは元部下の暴挙を止めるために旅をすることになった。

二人旅できてラッキーなどとアウラは思った。


***


さて、元側近が、馬鹿なふるまいをしたせいで、自分たちはラクダに乗って砂漠にまで来た。

なぜならば、大昔、自分たち魔族が暮らしていた砦が、このあたりに位置していたからだ。


女勇者だったハヤトは少し緊張している。ただし、大魔王のアウラにとっては懐かしい我が家、みたいな場所で、むしろリラックスできまくりである。


とはいえ、なんか、めんどうだなー


***


さて砦の中に進んでみれば、案の定、人間の身では面倒くさいことに、あらゆるところにいまだに古代時代の人間用のトラップが残っていて、避けなければならない。

また、魔族が絶えたなどとアイツに糾弾された割に、この本拠地には、まだ生き残っていた知能の低い魔物も暮らしていた。


自分のこの美しい姿が傷つくのは不快なので、アウラは、ハヤトとともに丁寧に一つ一つトラップを解除したり回避したりして進んでいた。が、どんどん面倒になってきた。


あまりに面倒になってきたので、半分眠っていた岩と同化する魔物を揺り動かし、

「おい、お前、ちょっと奥まで連れってってくれや」と、上から目線で頼んでみると、

知能の低い魔物は、むしろハヤトの大魔王の姿の方に目を止め、大魔王命令だと判断したらしい。

言われるままに、二人を頭の上に載せて、ぐんぐん奥へと進んでくれた。


***


「なんで奥まで案内されてんだよ!」

崩れ落ちた王座に座っていた元側近は、二人が魔物に案内された様子に激怒した。

「行け! あの裏切り者を始末しろ!」

幼少時に語られる物語の悪役のセリフそのまんまを剣の魔物に吐いている。独自性と貫禄が足りない。


剣の魔物は眠りから覚めて、ウォゥと条件反射的に命令に従い、アウラたちに切りかかろうとしていたが、いかんせん眠りが長すぎたらしく、その動きは非常に緩慢である。


「なぁ、剣よ、王座の主を振り返ってみろ? アイツ、全然ふさわしくないぜ?」

アウラが呆れたように剣に話しかけると、緩慢な剣はゆるゆると王座を振り返り、そこに座っている貧相顔の青年を認識した。確かに相応しくない。


剣の魔物は、ゆらゆら揺れて、それからまたポテっと倒れて、再び眠りについた。

ぐー・・・。


***


結果として、アウラとハヤト、対、元側近。つまり、二対一。ボコられた元側近は負けをかみしめて涙を流した。


負けたくせに元側近は、大魔王とあろう者が人間なぞにほだされて情けない、だの、さんざん負け犬発言をするので、

「お前だって、人間に生まれ変わってるだろ」

と現実を教えてやる。


しかし、なぜコイツまで人間になっているのか。

力のある魔族はみんな人間になったのか。

まぁ別にどうでも良いがな。


オィオィ 泣く元側近に、ハヤトの方が同情的であったが、ハヤトが不要なことを思い出した。


自分たちが死んだ場所はどこになるのか、などと言うのだ。


***


のらりくらりと追及を逃れようとしたが、ハヤトがなんか正義感あふれる全うな理由を言い出して、言い逃れるのが面倒になった。


仕方ないから、奥の場所に連れて行ってみることにした。


でも、あぁー。自分の情けない死に姿がそのまま残っていたらいやだなぁー


***


歩いていくのも面倒だし実際人間の足ではいけない場所になるので、岩の魔物にのって再び向かう。

元側近は置いておく。まだ泣き崩れているがどうでもいい。

ハヤトが気にしているが、あんなヤツどうでも良いだろ。


辿り着いた奥の部屋は、ちょっと人間好みに採光など考えてある部屋になっている。

惚れてたからな。ふ。


などと思って余裕ぶっこいていたのが仇になった。

この部屋は奥にあるので、どうやらいろいろ保管状態が良かったらしい。まだ遺っていた。


寝台の上に白骨。これは女勇者。

寝台の傍に、倒れ伏している、泥の塊。これは、大魔王。

で、さらにその傍に。


「誰だ、これ!!」

アウラは知らない泥の塊を指さした。


泥の塊と正義の剣が、大魔王の泥の傍にあるのだ。

誰だと叫んだものの、たぶんアイツだ、という気しかしない。

元側近だ。


なんでお前も人間なんだ、と思ってたら。

お前も後追い自殺しただろ、正義の剣で!



ハヤトが、スタスタ歩いて、正義の剣を泥から抜いた。

聖剣である。キラリと光り輝く。


「・・・まだ十分使える」

ハヤトが言ったが、一体お前、それなんに使うつもりだ。



***


ハヤトが、剣を掲げ持ち、何やらブツブツ呪文を唱えている。


「何してるの?」

女言葉を取り戻してかわいく尋ねるのに、ブツブツ言うのに集中してて返事もくれない。


そのうちシュウゥウ…と剣から煙が立ち上った。

本当に何やってんだか。


大魔王の姿のハヤトが聖剣なんか持っててなんかビミョー。お前、世界を手にした感じがするぞ。

大魔王の姿ってフツーにスペック高いからな。

まぁ人間として生まれているから、本来よりできないこと多いけどな。


***


なんか一人儀式やってたハヤトが、聖剣を片手に、アウラのもとに戻ってきた。


アウラは予感がして首を傾げた。

「私を殺すの?」


女勇者だったハヤトは笑って

「僕を愛してた?」と尋ねた。


「愛なんてのは魔族にはないのよ」


「そう」


「でも人間でいうなら愛と言える」


「そう」


アウラは予感がして背の高いハヤトの姿をじぃと見つめた。

「私を愛していた?」


「わからない」


「そう」


「随分苦しんだから」


「そう」


ハヤトはアウラに顔を近づけて透かし見るように瞳を覗き込んできた。

「でも僕は、キミに心を持っていかれたのかもしれない」

少し悔しそうに。己の罪を認めるように。


「魅せるのも魔力だから」

アウラは包むように微笑んだ。


「そう」

ハヤトも微笑む。

「帰ろう」

ハヤトは、剣を持っていない方の左手をアウラに差し出した。


「殺すのかと思った」

アウラが言うと、ハヤトが言った。

「それは終わったよ」


***


結局、魔族は人間に負けたのだ、と、思う。


大魔王は、女勇者の前にも、たくさんの勇者を迎え撃った。

大魔王自ら撃つまでもなかった。魔族の方がはるかに強かったのだ。砦にまで来れないものがほとんどだった。

人間の勇者なんて、砦の入り口で寝っ転がっている岩の魔物の足元にさえ及ばない。砦のトラップなんて、別に必要がなかったぐらいに。トラップが多いのは、少し知能の発達した魔族の誰かが、自分の考えた新しい仕掛けを試したくてたくさん設置しただけだ。


そんな中、女勇者は砦に通した。女勇者はそれまでの勇者よりも極弱で、砦以前で止めに出るのもおっくうなぐらいどうでも良い存在だった。


どうせ勝手にトラップに引っかかってしまうだろう。あんなに頑張ってトラップ設置したヤツに今回は花を持たせてやろう。


案の定、誰も出るまでもなく、ご一行は次々トラップに引っかかって死んでいった。

あまり簡単にいなくなるのもつまらなくて、いたぶったりもしたのは魔族のご愛嬌だ。


女勇者の方は、仲間をすべて惨殺されたのに自分一人が生かされて、けれど自分の力が遠く及ばないことも知らしめられる。いろいろ悲惨な状態にある。


そんな状況を気が向いたらチラ見しているうちに、なぜか人間でいうところの惚れている状態に大魔王たるものがなってしまったのは、きっと敵対する神の策略に違いない。


***


正義の剣、とかいう剣を、女勇者は持っていた。女神の加護がついてる聖剣だそうだ。

でも、そんな剣、魔族にはあんまり効かなかった。

女勇者の技量も力も足りないもので。


それでも、結局、負けたのは大魔王なのだった。つまりあれはたぶんハニートラップだった。


女勇者にうつつを抜かしてしまい、人間なんで死ぬのも早く(体もボロボロになってたし)、それを嘆いてしまい、大魔王たるアウラは、正義の剣を使って、自ら命を絶つことを試みた。

なんでその剣を使ったかというと、普通の剣では、回復力の方が優って、絶対死なないからである。


そして、結果として、後追い自殺に成功したのだ。


***


今、再び、王座のある間に戻ったアウラとハヤト。

ハヤトは、泣き崩れる元側近を、もうちょっとそっちに行っていてくれるかな、と横に避けさせて、王座に正義の剣を突き立てた。


ゴォゴ…、と、途端、地鳴りが起こる。


「ハヤト、一体何を」


アウラの問いに、振り返ったハヤトはニコリと笑った。

「次に勇者が現れるときに、また使えるように」


「・・・? 魔族は死に絶えたけど?」


「神様はそう考えてないみたいだよ」

ハヤトは穏やかに微笑みながらそう言って、泣き崩れる側近・・・どっちかというと人間の部類で見ても貧弱な方の人間・・・の腕を取り上げ、立たせてやった。


「アウラ、帰ろう。僕は、キミが好きだよ」


「うん。私も」


「キミは、魔族を滅ぼした僕を憎む?」

ハヤトは静かに尋ねた。まるで月のような微笑みを浮かべながら。内面は測りようもない。


アウラは笑った。

「ハヤト、あなたは、魔族を滅ぼしてなどいないわ。勝手に滅亡しただけよ。恨むはずないわ」


ハヤトは微笑みながら、少し申し訳なさそうな顔をした。

「それは違う」


アウラは言った。

「滅んだものに、未練なんてないわ。あなたが傍にいれる今が幸せ」


ハヤトの頬に太陽のような明るさが差した。ハヤトは照れてはにかんだ。


だから、全てが、良し。


***


ボコられた元側近は、アウラよりもちゃんと事情を知っていた。


正義の剣は、魔族の命を絶つことができる剣。

普通、魔族は殺しても、また時が来れば魔族として生まれ変わる。

正義の剣は、それを絶てる。

正義の剣で死んだ魔族は、人間として、生まれ変わるから。



元の暮らしに帰って落ち着いてから、元側近はしょんぼりと事情を話した。


魔族の力の8割ぐらいを、大魔王が持っていた。

その残りの半分ぐらいを、元側近が持っていた。

その二人が正義の剣で、自ら命を絶ってしまった。

正義の剣は、二人の持つ魔力を消してしまえた。


だから、この世界にあった魔力の、ほぼ9割が、無くなってしまって…。

今の、魔族も魔力も残っていないような、新しい時代が来たのである。


「絶対あれ、神が仕掛けたハニートラップだったんですよ! この色ボケ!」

元側近が喚きたてる。


「うるさいな。過ぎたことを喚かない。無くなったものを欲しがらない。別にいーじゃん、今の世の中でさ」

アウラは聞く耳がない。


魔力も消えてしまった世の中で、魔法技術も衰退し、魔法知識や、文字衰退による古代史の消失さえ起こったという。

結果、今の世は、大魔王などというのが存在した、なんていうことも忘れている。大魔王の姿さえ伝えられていない。

だからこそ、アウラはハヤトと、誰に気づかれることもなくともに過ごすことができるのだ。

なんて完璧な状況だろう。


「あなたがあの剣で後追いなんかしなかったら、世の中天下だったんですよ!」

元側近だけが喚いている。


「自分だって後追いしたくせに。私がいなくなっても、あんたが残って頑張ればよかったのよ」


「あなたがいない世界なんて!」


「・・・」

アウラは語る言葉が惜しくて口を閉じた。

つまりこの元側近は、人間に生まれ変わったものの、冴えない人生を送っていたようなのだ。

で、過去の栄光にすがったりしちゃってるようなのだ。


めんどうくさいなー。


記憶だけは持っていた元側近は、アウラたちに会うまで古代資料を調べまくり、今の状況を確認したらしい。

勉強熱心なことである。

どうせなら、前世の記憶を持ったことを生かし、廃れた古代文明の学者にでもなるのが適している。

まぁ、アウラたちに被害が出ない範囲での活躍を祈る。


そんな中、女勇者だったハヤトがさわやかな笑顔でアウラのもとにやってくる。

元側近が「ヘッ、ノコノコやってきましたよ、女狐が!」などと言うのをアウラは力の限り蹴りつけた。

お前は自分の暮らしでも考えとけ!


「ごめん、待った?」

相変わらず輝かしく眩しい笑顔のハヤトに、アウラは美少女の極上の笑みで返す。

「大丈夫。あなたが来てくれたらそれだけでオッケー」



立場や状況や力の差に悩まされたり。そんな障害など一切ない。共に人間。

アウラは神に感謝したいぐらいである。

こんなこと思うのは、自分が魔族でなく人間となった証拠だろう。



元側近が言うように、自分たちの姿が入れ替わってることもまた、神の策のうちだったのかも。


自分が愛しいあの女勇者の姿をしているとわかったときは、キャッホーとか思ったりしたわけだけど。


お互いの姿を目印に、結局自分たちはまた出会う。


生まれ変わってなお、ハヤトが使命の続きを果たせるように。


生まれ変わって、再び出会って。元側近の迷惑な暴挙もあって。

やっと使命を果たし終えたらしいハヤト。

彼は自由になったであろうに、変わらずアウラの傍にいて幸せそうに笑みを見せる。


だから、全て良し。


***


元側近が、過去の栄光ばかりに縋り付くせいで。

かつ、前世と今世合わせ技で、今やっと使命を果たし終わったらしい状態のせいで。


ハヤトは魔族を滅ぼしたことを恨んでないかと、アウラに尋ねる。

ふと、それは何かにすがるように。


アウラの答えは決まってる。

恨むはずはない。お前はお前で生きただけで、自分は自分の好きなように生きただけだ。


そんな事言えるのは、自分が結局、トップの実力を持っていたからなのかもしれない、とも気づいているけれど。


アウラの口にする変わりない答えに、ハヤトは安心した笑みを見せるのだ。


そして知っている。

ハヤトは決して、元側近には、そんな質問は、しない。


***


元女勇者は元大魔王に救いを求めて。生まれ変わった今でも、ハヤトはアウラに許してもらいたがる。

相手の種族を絶やしたことを。

己が、思う以上に世界の根底を変えたことを。

魔族は決して悪だけではなかったと。その存在が世の中の魔法を支えていたと、今の世を見て知ってしまったから。


許しが欲しいなら何度でもいくらでも口にしよう。


キミさえいれば、万事オッケー。

神に感謝したいぐらい。本当にね。


弱さは人間の魅力の一つで。

自分の心を求めて知りたがっているのが手に取るようにわかるから。

大魔王では決して口にできなかった言葉を今ならいくらでも口にできる。

猛毒の力を持っていた言葉は人間には力にさえなる。


いくらでも いつでも 傍にいる。


ずっと愛していると口にする。


***


もし世界が、

失った力を憂いてキミを糾弾するのなら。

あの剣を手に、今度はこちらが、そんな世界を変えるから。


***


そうして自分は知っている。


もし自分が、この世を再び変えたいと願ったら。

ハヤト。キミは、自分とともに来てくれる。

共に暮らせるなら、人間の世でなくても構わないのだから。


あの剣を取り。最も力のある存在を滅し。共に世界を変えるだろう。

その昔、大魔王と魔力を滅して、今の世を迎えたように。



キミだって この私に捕らわれている。



「アウラ?」

ハヤトの呼びかけに、アウラは笑む。大切に育て上げた姿の優雅さで。


いつかこの世を厭うまで。この世界を変えるまで。


元大魔王は麗しく微笑む。


今はキミと、人間の世を愛でよう。

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