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①タイムカード

どうして僕が彼女に惹かれたのか。

初めに思い出すのはタイムカードの名前であった。

とあるサービス業の社員をしていた私は、翌年で三十も半ばに突入する中年だった。

中途で入社して何年も過ぎ、今自分が担当している営業のカウンター業務は慣れているが、その時期は繁忙期でパートの人をたくさんいれないと仕事が回らないくらいの時期であった。そんなわけで一時的にパートの人はたくさん入ってきた。そんな中の一人に彼女はいた。

サービス業とはいっても、パートの大半は割と年齢層がわたしより少し上か、高い主婦層中で、彼女は20代前半か半ば、その部分は職場の中で若い世代がいないため、はじめ、目立っていたかもしれない。と、いっても彼女は決して美人でもスタイルがいい人目を引くような感じではなかった。私が彼女をはじめてみた際の印象ははおとなしめで、少しぽっちゃりしているな、もう少し痩せたらいいのに、と率直に思った印象だった。

それなのに、私は何故か彼女に気が付くと視線がいっていた。

だけど、その時は、日頃若い子を見ていないせいかと自分では思い、気づいていなかった。


そんな中、帰りのタイムカードを押すタイミングが彼女と偶然重なった。

「お疲れ様です。」彼女はそう、すれ違いざまに私に挨拶をし、私も同様に、

「お疲れ様」 そういって、彼女の後にタイムカードを押した。

そのタイミングで、私はふと思った。

そういえば、彼女の名前はなんていうんだろうと。

振り返ると彼女は着替えてなかったのか、右の出口でなく左の女子更衣室のある方に歩いていた。

あたりを軽く見渡したが、誰もいないことを確認し、私は何気なく彼女が押したタイムカードの名前を帰り際さりげなく見ようとした。そして、見た名前に不意に驚き二度見してしまった。

「佐々木真希」

そこにはそう書いてあった。

「真希」

その名前は偶然自分が今付き合っている彼女と同じ名前だった。

今付き合っている彼女とはもう5年ぐらい付き合っている。ちょうど今年、結婚をしようと考えている。その彼女の名前と同名。

不意のちょっとした衝撃に私は苦笑いをした。大したことはないが、そんな偶然もあるのかと。

その時、私は気が緩んでおり、

私に向けられている視線に気づくのが数秒遅れた。

その視線に気づき左側を振り向くと彼女は不審そうに私を見て立っていた。



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