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Lovers High  作者: ショコラ*
第五章 黒の泡沫
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彼の愛の形


「俺に、全部任せて欲しいんだ」

「え、全部って……」

「その代わり、金銭的な部分は全部俺が負担する」

「はぁ?!」

「一回俺の趣味で、ユウを全部コーディネートしてみたかったんだよね」


 ルイの趣味で……って。

 まぁルイはセンス悪くないし、その点では信用出来る。

 でも「その代わり」なんて言うわりに、全体的に私しか得しない条件な気がするんだけど……。


「悪い話ではないと思うよ? ユウちゃん」


 にっこりと笑う准くんに、私は戸惑いの視線を向ける。


「タダでユウちゃんにぴったりなコーディネートしてくれるって言ってるんだしさ。ルイのことだから、いちいち高級な物揃えてくれるだろうし」

「うーん……」


 何かそれって、すごい不公平じゃない?

 そもそもルイに、メリットが無い気がするし……。


「お願い、ユウ。俺に選ばせて」


 それでもルイの顔を見ると、何故だか断るのが意地悪なような気さえしてくる。

 何となく空気に流されて、私は曖昧に頷いてしまった。


「じゃ、じゃあ……」

「本当? 良かった」

「決まりだね。この後さっそく見に行く?」

「俺、最近出来たブティックに知り合いいるんだよねー。電話しとこうか?」

「あぁ、頼む。何ヵ所か回ろう」


 いまだ困惑している私を余所に、話は勝手にどんどん先へと進んで行く。

 他人の事なのに、どうして皆そんなに乗り気なんだか……。


 浅はかな私は、この時それが何を意味するのか全然理解していなくって。

 ルイがどんな思いで、それを申し出たのか……そのルイを見て、藍くんや准くんがどんなことを考えたのか、気付くことが出来なかった。

 だからもちろん、そうすることでリネやヒロやセイがどう思うかなんて、想像すらしなかったのだ。



 私が“失っているもの”を取り戻すのは、まだ先のこと。

 本当は、知っていたはずなのに。

 全部、全部……答えは、私の中にあったはずなのに。

 “もう一度”という希望の光はとても甘美なものであるはずだけど、その対象外に置かれた者にとっては、それは酷く残酷で……自分だけでなく、周りの人たちの傷まで増やすものと化してしまう。


 ねぇ、ルイ。

 私がもっと……もっと、強かったら。

 あなたはもっと、幸せになれたのかな?


 その晩私は、夢を見た。

 微睡みが覚める頃には消えてしまう、泡沫の夢を――


『……君の事、愛してた』


 苦しそうに紡ぎ出された言葉は、澄んだ空気に溶けてしまいそうな程に弱々しい。


『こうする他に……どうすれば良かった……?』


 木漏れ日に照らされ、逆光になったあなたの顔は、よく見えないけれど。


『どうか……どうか……、俺を、許さないで』


 声すらも、涙に濡れたような哀の色。


『俺を、憎んで、恨んで……』


 息が、苦しい――


『……そうしたら……』


 彼の泣き声と共に、瞳に映るは鮮やかな赤。

 青い空と、碧い木々と、赤のコントラスト――


『……そうしたら、俺を……君の中に、刻めるだろう……?』


 どうか、俺を忘れないで


 それは不器用過ぎるあなたが背負った、哀しい愛の烙印――



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