彼の愛の形
「俺に、全部任せて欲しいんだ」
「え、全部って……」
「その代わり、金銭的な部分は全部俺が負担する」
「はぁ?!」
「一回俺の趣味で、ユウを全部コーディネートしてみたかったんだよね」
ルイの趣味で……って。
まぁルイはセンス悪くないし、その点では信用出来る。
でも「その代わり」なんて言うわりに、全体的に私しか得しない条件な気がするんだけど……。
「悪い話ではないと思うよ? ユウちゃん」
にっこりと笑う准くんに、私は戸惑いの視線を向ける。
「タダでユウちゃんにぴったりなコーディネートしてくれるって言ってるんだしさ。ルイのことだから、いちいち高級な物揃えてくれるだろうし」
「うーん……」
何かそれって、すごい不公平じゃない?
そもそもルイに、メリットが無い気がするし……。
「お願い、ユウ。俺に選ばせて」
それでもルイの顔を見ると、何故だか断るのが意地悪なような気さえしてくる。
何となく空気に流されて、私は曖昧に頷いてしまった。
「じゃ、じゃあ……」
「本当? 良かった」
「決まりだね。この後さっそく見に行く?」
「俺、最近出来たブティックに知り合いいるんだよねー。電話しとこうか?」
「あぁ、頼む。何ヵ所か回ろう」
いまだ困惑している私を余所に、話は勝手にどんどん先へと進んで行く。
他人の事なのに、どうして皆そんなに乗り気なんだか……。
浅はかな私は、この時それが何を意味するのか全然理解していなくって。
ルイがどんな思いで、それを申し出たのか……そのルイを見て、藍くんや准くんがどんなことを考えたのか、気付くことが出来なかった。
だからもちろん、そうすることでリネやヒロやセイがどう思うかなんて、想像すらしなかったのだ。
私が“失っているもの”を取り戻すのは、まだ先のこと。
本当は、知っていたはずなのに。
全部、全部……答えは、私の中にあったはずなのに。
“もう一度”という希望の光はとても甘美なものであるはずだけど、その対象外に置かれた者にとっては、それは酷く残酷で……自分だけでなく、周りの人たちの傷まで増やすものと化してしまう。
ねぇ、ルイ。
私がもっと……もっと、強かったら。
あなたはもっと、幸せになれたのかな?
その晩私は、夢を見た。
微睡みが覚める頃には消えてしまう、泡沫の夢を――
『……君の事、愛してた』
苦しそうに紡ぎ出された言葉は、澄んだ空気に溶けてしまいそうな程に弱々しい。
『こうする他に……どうすれば良かった……?』
木漏れ日に照らされ、逆光になったあなたの顔は、よく見えないけれど。
『どうか……どうか……、俺を、許さないで』
声すらも、涙に濡れたような哀の色。
『俺を、憎んで、恨んで……』
息が、苦しい――
『……そうしたら……』
彼の泣き声と共に、瞳に映るは鮮やかな赤。
青い空と、碧い木々と、赤のコントラスト――
『……そうしたら、俺を……君の中に、刻めるだろう……?』
どうか、俺を忘れないで
それは不器用過ぎるあなたが背負った、哀しい愛の烙印――
Continue...




