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Lovers High  作者: ショコラ*
第五章 黒の泡沫
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微かな変化


「セイさんと話せた?」

「……あ、ごめん嵐。携帯、ありがとね」


 後ろから声を掛けてきた嵐に携帯を返しつつ、私は苦笑した。


「あーあー、恋する乙女って顔しちゃって」

「うっそ、顔に出てた?」

「超出てるっつの。でもまぁ、どうせセイさんが甘々な口説き文句言ってきたんだろ」

「何でわかるの?」

「わかるよ。セイさんって天然プレイボーイな上に、更に経験も積んでるって感じの人だし」

「……そんなに、チャラくないよ」

「あはは、拗ねんなって。経験云々は、過去の話だよ。リネさんたちとつるむようになってからは、全然遊んでないらしいしさ」

「す、拗ねてないです!」


 弟の前で思わぬ失態を晒してしまった恥ずかしさから、私はそそくさとコートを羽織る。


「じゃ、私もう行くから」

「……なるべく早く帰って来いよ」

「准くんがいるから、大丈夫だと思う」

「ならいいけど……」

「お願いだから、もう来ないでよ? トラウマになってるんだから」


 私は溜め息混じりにそう言ってから、マンションの鍵を掴み、玄関へと歩き出した。


「行ってきます」


 部屋に向かってそう叫ぶと、足早にマンションを出る。

 時刻は、正午近く……少し、お腹が空いた。

 お昼は、食べてから行った方が良いのだろうか。

 少し迷った後、私は少しだけ使い慣れてきた携帯を開き、ルイに電話を掛けた。


『――はい』

「あ、ルイ。今平気?」

『ユウ? どうした?』

「今家出たとこなんだ。お昼、食べてから向かった方がいい?」

『いや……藍、ユウの駅の方回れるか?』


 受話機の向こうで、間延びした「りょうかーい」という声が聞こえてくる。

 バックに音楽がかかっているところをみると、恐らく藍くんの車に乗っているのだろう。


『俺たちも今、食事に出たところなんだ。拾うよ、駅前のロータリー辺りまで来られる?』

「うん、わかった」


 電話を切って、駅へと歩いていく。

 准くんと再会したあの日から、ルイたちとのコミュニケーションは徐々にスムーズになってきていた。

 もちろん、怯えて過ごすよりは断然良いのだけれど……セイたちのことを思うと、どことなく後ろめたくもなる。

 ――ルイたちを、敵視出来なくなってきていることが。


 駅前のメインストリートを歩きながら、建ち並ぶショーウィンドーに映る自分の姿を眺める。

 ここ数年、ルイに会うときはほとんど意識して、ガードの固い服ばかりを着ていたのに……今日は何も考えずに、お気に入りのシフォンワンピースに、ショート丈のデニムジャケットを羽織ってきた。

 ハーフアップにした髪は、カーラーを使って少し大きめに膨らまし、少し60年代風のアレンジにしている。

 この髪色と格好でこれをすると、少し派手に見えるかもしれない。

 さらにロングネックレスなどの小物のせいか、どことなく、気が強くて頭の軽い女の子のようにも見えた。

 もしかしたら無意識のうちに、普段から派手なルイたちに感化されつつあるのかもしれない。

 前嵐に、「ユウは周りに染まりやすい」なんて指摘をされたこともあるくらいだし……。


 私って、意志が弱いのかな。

 自嘲しながら溜め息を吐けば、いつの間にか駅のロータリーへとたどり着いていた。

 最寄り駅は、路線上に大学がいくつも並んでいるということもあって、行き交う人たちの中には同年代も多い。

 そんな中、ロータリー手前の人が集まる待ち合わせ場所に立っていると、突如後ろから声を掛けられた。


「ねぇ、お姉さん一人?」

「……」


 思わず眉を寄せて、無視してみる。


「超美人だねー。何、待たされてるの? かわいそー」

「わ、ほんと美人サン!」


 ……サイアクだ。

 相手は頭の悪そうな、男2人組。

 多分、歳は同じくらいだ。


「ねぇ、待ち合わせまででも良いからお茶しない?」

「……放っておいて下さい」

「放っておけないよー。ねぇ、じゃあ番号教えて」

「あははっ、お前超ストレートだな!」


 腕を掴まれて、私はいよいよ困惑した。

 ……やっぱり、セルフプロデュースって大事だ。

 私も格好によっては、こんな人たちにナンパされる対象になるらしい。


「ほんと、無理なんで。やめて下さい、迷惑です」

「えー、冷たいなぁ」


 ぴしゃりと言い放っても、ベタベタと肩を触ってくる。

 どことなく、軽い喋り方は藍くんに通じる部分があるものの、不快感レベルがまるで違う。

 藍くんにはイラっとさせられることも多いけれど、言ってみれば彼は、わざとそうしているような節がある。

 だからそれはおふざけの一環であって、私が本当に嫌がるときはすぐに察し、引いてくれるのが常だった。

 でも、この男たちは違う。

 悪いけれど……正真正銘の、ただのバカだ。


「やめてよ、触らないで!」


 苛立ちと焦燥感から少し声を荒げても、男たちは引いてくれる様子がない。


「いいじゃん、ちょっとだけだから……」

「やめ――」


 言い掛けた瞬間、急に強い力でぐいっと後に引き寄せられ、私の言葉は不自然に途切れた。


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