表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lovers High  作者: ショコラ*
第四章 時を経て
29/54

同志


 滑らかな口調でそう言ったウェイターが去ると、俺たちは3人揃って顔を見合わせた。


「藤原って……」


 ユウと同じ苗字だ。

 どういうことだ……?


「まさかユウのことじゃないよね? ウェイトレスしてるなんて、聞いてないけど……」

「バイトはしてないって言ってたよ」


 首を傾げたリネに、俺もユウ本人から聞いたことのある情報を口にする。


「その藤原って奴が来れば、全部明らかになるだろ」


 ヒロにそう言われ、俺たちは頷いた。

 とてもじゃないけれど、ゆっくりメニューを眺める気になんてなれないまま数分を過ごした俺達。

 まさかその直後に、衝撃的な出来事にあうだなんて、誰一人として予想が出来なかったのだ。


「……お待たせ致しました。高谷尋人様」


 「失礼します」という声の後個室内に入ってきのは、どこか見覚えのある柔らかなミルクティ色の髪をした、すらりと背の高い青年だった。

 一礼をした彼が、顔を上げた瞬間。

 その顔を見た俺は――いや俺たちは、思わず息をのんだ。

 目を見開いた俺を真っ直ぐと見つめる彼は、優しい瞳で……昔と変わらない瞳で、微笑みを浮かべていた。


「お久しぶりです……、やっと、お会い出来た」

「……アルド!」


 無意識のうちに、俺は椅子を蹴るように立ち上がって、彼の元へと手を伸ばしていた。

 胸が一杯で、涙が出そうだ。

 俺と同じように少し目を潤ませた彼も、腕を伸ばして、俺からの抱擁を受け止めてくれる。

 他人から見たら、男同士何をしているのだろうと不思議に思われるかもしれない。

 ここが仕切りに囲まれた密室であることに、感謝してしまった。

 この再会を前に、興奮しないでいられるなど無理な話なのだから。


「お久しぶりです。お元気でしたか……?」

「お前こそ……、というか、アルド……お前、まさか……って今は名前、何ていうんだよ?」


 とりあえず体を離して、俺は不自然に言葉を繋ぎ合わせる。

 最早頭の中は、完全にパニック状態だ。

 それにしても本当に、この瞳の雰囲気はあの頃とまったく同じだ。

 よく知っていた彼の面影に懐かしさが込み上げ、胸がいっぱいになる。


「あははっ、落ち着いて下さいよ……長篠誠さん」


 彼は俺の名前をスムーズに口にすると、そのまま椅子へと促してくれた。

 そこでようやく彼から一度目を離してテーブルを見れば、懐かしそうに目を細めるヒロと、感極まって涙を抑えるリネが目に入る。

 ……そりゃそうだ。

 ユウの他にも再会出来る相手がいたなんて、一体誰が想像出来ただろう?


「皆さんも、お久しぶりです。……この世でもう一度お会いできたことを、光栄に思います」

「畏まるな。もうそういう時代じゃないだろう」

「そうだよ……! でも、本当に久しぶり。また会えて、私も最高に嬉しい!」


 頭を下げた彼に、ヒロとリネも言葉を掛ける。

 顔を上げると、彼はふわりと笑った。


「……ここではあまり時間が取れないので、手短にお話しますね」

「あぁ。聞きたいことばかりだよ」


 俺がそう言えば、彼は誰よりも誠意に溢れた瞳で、俺に笑い掛けてくれた。


「貴方に恥じない為にも、俺は今日まで、ユウを見守ってきました」

「え……?」


 彼はにっこり笑うと、しっかりとした口調で言葉を続ける。


「改めまして……俺の今の名前は、藤原嵐と言います。今世ではユウの弟として、生まれてきました」

「お、弟……っ」

「ええぇ?!」


 思わずどもる俺と、叫び声を上げるリネ。

 だって、仕方のないことだ。

 まさか……まさか、こんなことってあるのだろうか。

 いや、実際起きているのだから、あるんだろうけれど。


「あはは、驚きますよね。でも俺も半年前までは、何も覚えていなかったんです。自分の予想ではありますが、恐らく皆さんの記憶が戻った頃、俺の記憶も戻ったのかと」

「きっとそうだな。俺とリネが再会したのも、半年前だ」

「やっぱり、そうだったんですね」


 ヒロの言葉に、頷いて応える嵐。

 俺は信じられなくて、ただただその顔を見つめていた。

 そこにはちゃんと彼の面影が残っているというのに、言われてみれば、確かにユウと通じる部分も見て取れる。

 2人の間に、過去には無かった繋がりが生まれていることが、何とも不思議だった。


「最近ではユウも、少しずつ……何かを思い出し掛けているようです」

「そうか」

「ただ……問題が」

「問題?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ