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Lovers High  作者: ショコラ*
第三章 始動
26/54

繋がっていく糸


「ごめんね……嵐」


 そっと手当てを施しながら呟けば、嵐はふわりと笑った。


「いや、俺は平気だけど……。どっちかっていうと、ユウがトラウマになりそうだよね」

「うん、完全になった。絶対しばらくうなされるよ……」

「あはは、早く忘れなきゃな」


 全然、笑い事じゃないのに。

 私が視線で非難すると、不意に嵐は真面目な顔をして、口を開いた。


「なぁ、ユウ……」

「なに?」

「ユウに……話してないことがある」

「……うん」


 それは、私も気になっていたことだった。

 さっきのルイと嵐の会話には、確実に私の知り得ない何かが含まれていて……今日までそれに気付いてさえいなかったことにも、ショックを受けていたのだ。


「……すっげぇ大事な話なんだ」

「うん」

「でも、全部は……話せない」


 無意識にうなだれた私の頬に、嵐が指を滑らせる。


「そんな顔すんなよ?」

「だって……」

「『今は』言えないだけだよ。じきに、全部わかる時が来る」

「え……?」

「少しの間だけ……俺を、信じてもらえないかな」


『今に、わかるから』

『俺達を、信じて欲しい』


 不意に、昨日セイの口から聞いた言葉が、頭の中を巡る。

 同じ、だ。


「どうして、って顔してるね」


 嵐は悪戯っぽく笑った。


「昨日……セイさん、だっけ? その人にも言われた?」

「どうして、そんなことまで……?」

「俺は、ユウを幸せに導く為にそばにいるんだよ」


 そう言った嵐が見せた笑顔は、とても大人びていて……

 ずっとそばにいた弟のはずなのに、何故だか、もっと違う誰かのような気がした。

 優しい、誰かのような……

 不思議な感覚が、身体の中を巡っていく。


「嵐……」

「ユウ、俺の話をよく聞いて」


 嵐は再び真剣な表情を見せると、静かに語り出した。


「ルイのことは、もう俺達2人だけでどうにかなることじゃない」

「……」



 真剣な嵐の顔と声に、胸がぎゅっと締め付けられる。

 もうダメなのかもしれない。

 ――けれど嵐は、予想外の言葉を続けた。


「ユウを助けられるのは……あの人たちだけ」

「え……?」


 告げられた内容に、思わず困惑する。

 あの人たち……って。

 この話の流れからすると、もしかして……


「誰の事だか、わかるね?」

「……セイたち?」

「そう」


 嵐は、微笑みながら頷いた。


「まだ完全に名前、覚えてないんだよね。セイさん以外のカップルは、何て言うんだっけ?」

「リネと、ヒロ……」

「そう。キーマンは、ヒロさんなんだ、多分」

「え……?」


 頭の中が、ぐるぐると混乱する。

 私の人生に影を落としてきた、ルイ。

 その闇を分かち合ってきてくれた、弟の嵐。

 モノクロになり掛けていた私の日常に、光を差してくれた不思議な三人組……

 私にとっては大き過ぎるくらいの存在たちは、今までずっとバラバラに認識されていた。

 嵐とルイが直接対決しただけでもショックだったのに、まさか、リネたちまで……?

 予想もつかない内容に、声も出ない。


「でもさっき、ユウは携帯壊されたし、連絡手段を絶たれただろ?」


 そう言って、私が無理に持たされたシルバーの携帯を忌々しそうに見つめる嵐。


「あ……そっか……」

「だからさ……、今ユウとセイさんたちを繋ぐことが出来るのは、俺だけ」

「え……?」

「ユウ、今から言うことを真剣に聞いて、覚えるんだよ」


 そう言って、一枚の紙を私へと差し出した。


「これ、は……?」

「ルイの、死角を狙うんだ」


 嵐の瞳が、強い光を帯びる。


「俺を信じて、ユウ」


 嵐はそう言うと、私に事細かな指示を出した。


 何が何だかわからないけれど……まさかリネたちまでこんな風に巻き込むなんて、考えたこともなかったけれど。

 私の人生を揺るがすいくつものピースが、一本のレール上に集まり始めている。

 正直何が正しいのかなんて、全然わからない。でも……


『信じて欲しい』


 大切な人にそう言われたら、従うしかない。

 私は赤く腫れた瞼を瞬かせながら、 賢い弟の言葉を繰り返し、来たる明日の戦いの為に涙を飲み込んだ。


Continue...

 ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

 普段ほとんど前・後書きとも無く、碌に挨拶もしない作者で申し訳ないです。

 日々アクセスして下さっている皆様にはもちろん、お気に入り登録・ポイント評価等をして下さった皆様にも、改めてこの場でお礼申し上げます。


 まだ折り返し地点にも達していない『Lovers High』ですが、これから本格的に物語が展開していきます。

 尚、次章からは序章時のように、章ごとにセイ・ユウと視点が交互に変わっていく形となっております。(が、基本的に時系列は被ることなく先に進んでいくので、シーンが重複することはほぼない形となります)


 視点変化についてはお好みがあるとは思いますが、今後とも見守って頂ければ幸いです。

 それでは、少しでもお楽しみ頂けるよう努めますので、今後とも宜しくお願い致します!

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