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Lovers High  作者: ショコラ*
第二章 境界線、突破
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疑問


 セイは言葉を選ぶかのように、ゆっくりと言葉を続ける。


「どうしても……いっしょにいてほしいんだ。なんていうか……」

「セイ?」

「うーん……癒し、系?」

「は?」

「うん、そうだ。癒し系なんだよね、ユウは」


 思いがけない言葉に、きょとんとする私。


「リネがこの間そう言っててさ。うまいこと言うなーって、ヒロと感心したんだ」

「……」


 癒し系……?

 想像もしていなかった私を形容する言葉に、なんと返したらいいのか困惑してしまう。

 癒し系……ペット枠的な? とりあえず、悪い意味ではないんだよね?


「だから、そばにいてほしい、。俺たちの心がギスギスしないように」

「……あははっ、何それ? 変なの!」


 思わず吹き出すと、セイもつられたように笑う。


「もちろん、セイたちがいいって言ってくれる限りはいっしょにいるよ」

「それなら良かった」


 目を細めて微笑むセイに、胸がギュッと締めつけられる。ときめきが隠しきれなくなる前に、慌ててほかの話題を探した。


「そういえばさ。私たちが知り合ったキッカケって、リネが私に声をかけてくれたことだったじゃない?」

「うん」

「あのとき、『講義の課題で描く女の子のイメージに合ってる』って言われたんだけど……あれっきりその話、出てないんだよね」

「あははっ! リネのやつ、きっともう忘れてるな」


 楽しそうに笑うセイを見て、思わずほっとした。実は最近このことを思い出しては、不安に駆られていたから。


「じゃあ、リネの課題が終わっても……私、3号館カフェに遊びに行っていいんだよね?」


 ここまで来たらちゃんと安心したくて、核心を突いてみる。うかがうようにセイを見れば、セイにとっては予想外な質問だったらしい。驚いたようにぴたりと笑うのをやめた。


「えっ、どういう意味?」

「リネの課題のために始まった関係なら、終わりもあるのかなって……もちろん、そこでプツッと縁が切れるとまでは思ってないけど。もう毎日会う理由はないって言われたら、何も言い返せないし……」

「バカだな、ユウは」


 あきれたような言葉とは裏腹に、優しい声でセイがつぶやく。


「逆だよ、逆」

「逆?」

「課題の方が、口実」

「……」

「ユウとはこれからも、ずっといっしょにいるつもりだよ」

「でも……どうして?」

 

 どうして、私なの?

 みんなに出会ってから、何度繰り返してきたかわからない疑問。本当に癒し系要員を求めていたのだとしても、私は特別目立った存在ではない。それこそ大学内を探せば、癒し系候補の女子なんてたくさん見つかるはず。

 わざわざ私である必要性が、いったいどこにあるんだろう?


「どうして、か」


 セイはふわりと笑った。どことなく切なそうな、意味深な微笑みだ。


「今にわかるから」


 それだけ言って、私の頬にかかった髪をすっと指先で払ってくれた。その瞳があまりにも真剣で、まっすぐで……私は何も言えなくなってしまう。

 なんて不思議な人……不思議な人たちなんだろう。

 謎だらけで、なにひとつ納得のいく説明もないのに、出会った当初から強烈な引力を感じ続けている。私自身も知らない、自分の根幹の部分が揺るがされているような感覚――


 本当は、今すぐにでもその理由を知りたい。

 でもその一方で、セイたちが何かしら説明できない事情を抱えているのはなんとなくわかっていた。これだけ優しい人たちが、意地悪で隠しているとは思えない。

 それなら……私は「そのとき」を待つしかなかった。ひとまず一番重要なのは、みんなとずっといっしょにいられること。それさえ叶えば……あとのことは大抵耐えられる。


 その後私たちは公開されたばかりの映画を観て、近くのカフェでお茶をして、ショッピングを楽しんだ。疑う余地もなく、定番のデートコースだったと思う。

 唯一周囲の男女と違っていたのは、距離が近いのに手は繋いでいなかったこと――つまりはふたりの関係性が「友人」なことだった。


 でもそれは、私にとって都合の良いことでもあった。もしセイと特別な関係になる可能性が出てきたら……私は。どれほどセイに心を寄せていようと、セイから離れなきゃいけなくなってしまう。


「――ユウ?」

「えっ、なに?」


 はっとして顔を上げれば、セイがお店の扉を開けて待ってくれていた。いつもならヒロのポジションだけれど、今はふたりきりだから、ずっとエスコートしてくれている。

 今までデートしたこのとあるどんな男の子よりもよく気づき、嫌味無くさらりとそれをこなしてしまう。同じ歳なのに……と、感心せずにはいられなかった。


「やっぱりセイって、結構遊び人だったでしょ?」

「え?」


 やってきたのは、セイがお勧めだと教えてくれたアンティーク家具のお店。個人でやっているお店なのか、チェーン店にはないおしゃれな空気感がある。


「この年で、ここまでエスコート上手な人見たことないよ。かなり場数を踏んでる感じ……」

「そんなことないよ」


 そう言いながらもセイは、気まずそうに目を泳がせた。


「リネたちと出会うまでは相当遊んでたって噂は、本当なの?」


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