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Lovers High  作者: ショコラ*
第二章 境界線、突破
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別世界


「ずっと、みんなといられたらいいのに……」


 無意識に声に出てしまって、はっとする。顔を上げると3人の視線がこちらに向いていた。


「あ……」


 赤面する私を見て、リネが笑う。


「ふふ。私もそう思う」

「会いたくなったら、いつでも呼べばいい」


 続いてヒロまでもが、優しい言葉をくれた。


「好きなときに電話して。夜中でもユウなら大歓迎だよ」


 セイまで……。どうしよう、一生分の運を使ってしまっているかも。

 じっと見つめられて呼吸の仕方を忘れそうになる。


「ありがとう……。あの、みんなお休みの日は何してるの?」


 照れ隠しに話題を変えたのはバレバレだったみたい。微笑ましそうに見守られて、逆に恥ずかしくなる。だけど優しいみんなは、からかわずに話を合わせてくれた。

 

「休みかあ。うーん……何してるかな?」


 首をかしげたリネに、ヒロは片眉を上げる。


「最近お前、引きこもってるよな。立て続けに映画3本観たり……」

「だってヒロ、出かけるとすぐ怒るんだもん」

「浪費が目に余るからだろ」

「浪費じゃない! 本当に必要なんだから」

「色も形も同じ服が、クローゼットに何着あるんだよ」


 おっと。もしかして、これは。


「ふたりはいっしょに住んでるの?」


 小声で隣のセイにたずねれば、くすりと笑われる。


「そうだよ。楽しそうだよね」


 やっぱり……って、ちょっと待って。知り合ったの半年前って言ってたよね……? 同棲までいくの早くない?

 いやでも短い交際期間でぱっと結婚したなんて話もよく聞くし、案外そういうものなのかもしれない。リネってお嬢様っぽいから、家とか厳しそうなイメージだけど……


「セイ、なに勝手に言い切ってるの? 半同棲だから」

「半同棲?」

「ひとり暮らししてた部屋は解約してないの。まあ、最近全然帰ってないけど」

「親にそのことは……?」

「ママには一応伝えてる。パパには……近々挨拶しにいく予定だよね?」

「ああ」


 すごい、結婚を前提にってやつだ……!

 友人の中に、将来まで見すえているような恋人たちはまだいない。軽口を叩き合いながらも、互いを見る目に愛情がにじみ出ているリネとヒロに見入ってしまう。


 素敵だなあ……私にはまぶしすぎる恋愛。心底愛する人に好きと伝え、同じように想いを返される人生はどれほど幸せなんだろう?

 不思議と妬みの感情は生まれず、ただただ美しく尊いものに感じられた。私のように、どっぷり暗闇に浸かっている世界とはまるで違う。


「ユウ?」


 無意識に視線を落としたところで名前を呼ばれ、セイと視線が交わる。


『俺が守ってあげる』


 不意に、この前言われた言葉を思い出した。

 ――セイは本当によく見ている。ヒロが堂々と「立ち向かう」イメージなら、セイは常に「見守っている」イメージ。私が良からぬことを考えていると、高確率で見抜かれている気がする。

 思わず自嘲気味に微笑めば、私を見つめる視線はますます鋭くなった。


 もしも私の中にある、暗く(よど)んだ部分まで見透かされてしまったら……そう思うと怖くてたまらない。多くは望まないから、セイの笑う顔を隣で見ることだけは許してほしい。少しでも「さよなら」のときを遠ざけたい――


「セイは? お休みは何をするの?」


 自然な流れを装い、先ほどの話題を振ってみる。セイは一瞬納得のいかない表情を浮かべたものの、今は追及するタイミングじゃないと思い直したようだ。ふわりと微笑み、質問に答えてくれる。


「ふたりがこの調子だから、俺はさみしく過ごしてるよ。買い物行ったり、映画観に行ったり」

「外に出るタイプなんだね」

「うん、家だと時間を持てあましちゃって」


 ……実は周囲から、セイの噂も嫌というほど聞かされてきた。

 リネとヒロが恋人同士と周知されているように、セイもまたひとり身だと知れ渡っているらしい。そうなれば「もしかしたら自分が恋人に」と夢をふくらませる女子が現れるのは必至。過去のセイはプレイボーイだったというから、それも彼女たちの行動を後押ししたのだろう。


 これだけ格好良ければ十二分に想像がつくものの、初めて聞いたときは正直ショックだった。3ヶ月ほど前――リネとヒロと出会ったあたりから、ぴたりと女の子と遊ばなくなったという情報だけは救いだったけれど。

 とにかくそんな事情もあって、突如セイの隣に現れたニュー・メンバーへの風当りは依然強かった。


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