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Lovers High  作者: ショコラ*
第二章 境界線、突破
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ニュー・メンバー


第二章『境界線、突破』



 長い髪をなびかせ、颯爽と構内に入るリネ。そのうしろにヒロ、セイと続けば周囲は感嘆のため息をつく。

 けれど今日に限っては、不穏な囁きも混じっていた。その原因は――


「わ、来たよ!」

「噂って本当だったんだ」


 ……聞こえてます。聞こえてますから。

 そう簡単には受け入れられないだろうし、仕方ないのかもしれないけれど……


「え、あの子が?」

「そうそう」


 その場に居合わせた生徒たちから始まり、学内は“ニュー・メンバー”の話題で持ちきりになる。

 ――リネの隣を歩く、私の話題で。





 リネたちといっしょに過ごすようになってから、早くも4日がたつ。今日は別館で実習の授業があったから、近くの講義室で授業をしていたリネが迎えにきてくれて、カフェに行くまでの間にセイとヒロとも合流した。気づけば確認をとるまでもなく、毎日いっしょにランチをとっている。


 同じ時間を共有することで、新しく知ったことも多い。3人はみんな違う学科専攻で、住んでいる場所もバラバラ。そもそも知り合ってからそんなにたっていないらしい。リネとヒロが出会ったのは半年前で、セイは3ヶ月前から行動を共にするようになったと聞いたときは驚いた。それならどうして、昔馴染みのような空気感があるんだろう?

 突如私が加わったことも含め、やっぱり謎の多い人たちだ。


 雑談をしているうちに3号館のカフェに着き、さりげなく前へ出たヒロが重いガラス扉を押し開けてくれる。リネと私が中へと入るとセイが扉を受け止め、うしろから来る人を気遣いながら閉めた。


 もうひとつ、わかったこと。どこへ行くにしても何をするにしても、ヒロは先頭をきってくれる。そして最後尾には必ずセイがいて、私やリネに何か不都合がないか常に目を光らせていた。まるでお姫様を守るナイトみたい……大学内に危険なんてないはずなのに。


 正直今でも気恥かしくてたまらないのだけれど、これは暗黙の了解のうちに成り立っているスタイルらしい。リネがあまりに堂々としているから、今さら「これはどういうことなの?」なんて聞けなかった。


「ユウ?」


 不意に声をかけられはっとする。今日もセイの笑顔はまぶしい。


「考えごと?」

「ううん、なんでもない。今日はあったかくて気持ちいいね」

「そうだね。ユウは暑いのと寒いのどっちが得意?」

「断然暑い方。冷え性だから、寒いの苦手で」

「そうなの?」


 言いながら、セイは自然に私の手を取る。


「本当だ。この気温でも手が冷たい」


 うわあ、手をにぎられてる……!

 セイにとってはなんてことのないスキンシップかもしれないけれど、私にとって大事件だ。動揺しまくる心を見透かされないよう、必死に平静を装う。


「あ……、でも、今日は冷えてない方だよ」

「これで?」

「真冬は氷みたいになるから」


 想像したのか、セイは彫刻みたいにきれいな顔をしかめる。繊細なガラス細工を扱うみたいに、そっと私の指をなでてきた。


「ちゃんと温かくして、守らなきゃね」

「……うん」


 なんとかうなずいてみせると、セイはそっと手を放してくれる。私は心臓をバクバク言わせながら、離れていく手を目で追った。


 ――さらにもうひとつ、わかったこと。

 セイに触れられると……その優しい声を聞くと、なんだかおかしな気分になる。もう離れたくない、その笑顔をもっと見ていたいと強く思ってしまう。これまでに付き合ってきた恋人たちにさえ感じたことのない不思議な感覚だ。

 リネやヒロにも似た感情を抱いているものの、セイへの気持ちはより鮮烈だった。付き合ってもいないのにこんな図々しい感情を抱いていると知られたら、気味悪がられてしまいそう。


「はい、どうぞ」


 いつものようにイスを引き、私を座らせてくれるセイ。お礼を言うと、背後に花が見えるような完璧な微笑みを返される。

 リネ、ヒロ、セイと同じ空間で同じときを過ごす――それは、ほかの時間が色()せてしまうほどキラキラ輝いていて。たとえ周囲から突き刺さるような視線を向けられていても、この場を絶対失いたくない自分がいた。


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