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Lovers High  作者: ショコラ*
第一章 足枷
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運命の予感




「けじめをつけたくて、3ヶ月ぶりくらいに会ったんだ」

「……そうなんだ。つらくなかった?」

「うん。向こうは浮気してたし、私も全然いい彼女じゃなかったから……ずいぶん前から関係が破綻してたと思う」


 ルイに関する込み入った事情は話せなくとも、きっちり清算を終えたことは伝えておきたい。言葉を選びながら話すと、セイは心配そうな顔をした。


「ユウがいるのに、ほかの子へ目を向けるなんて。信じられないよ」

「別れて正解だな。会う価値がない」


 むっとした顔をしたヒロに続き、リネも「本当に!」と加勢する。この3人にそう言われると、自分が素晴らしい人間になったみたいだ。買い被りもいいところだけれど、大切に思ってもらえるのは純粋に嬉しい。お礼を言えばちゃんとわかっているのかと軽く叱られた。

 一連のやり取りのあと、改めてセイがたずねてくる。

 

「相手はすんなり受け入れてくれた?」

「うん……多分。私から切り出したのが不快だったみたいで、明確な返事はなかったけど」

「心配だよ、ユウ」


 言葉だけじゃなく、その表情からも心配でたまらないという気持ちが伝わってくる。嵐以外にここまで親身に思ってくれる人がいるなんて――それがセイみたいな人だなんて、全然現実味がない。


「何かあったら、というか何かある前に必ず連絡して」

「ありがとう」


 こんなふうに優しくされて、揺れない人がいるだろうか。少なくとも私の心臓は、限界に挑戦するかのように激しく脈打っている。これ以上魅かれてはいけないと思っても、心が言うことを聞いてくれなかった。ずっとここにいたい……


 頭の中で警鐘が鳴る。


 冷たい瞳で私を見つめるルイ。悲しい孤独をまとう人。私をつなぐ鎖を手放せないまま、今も過去から抜け出せずにいる。

 彼が苦しんでいる限り、私も幸せになることは許されない。


「ユウ?」


 セイに名前を呼ばれて、はっと我に返った。


「どうしたの?」

「ううん、なんでもない」


 どこか納得がいかなそうなセイに笑って答える。

 みんなと安全に過ごしたいなら、隠し通さなければ……今までもずっと、そうしてきたように。


 その後も他愛のない会話は続き、夢のような時間を過ごせた。終始楽しそうだったリネは、リゾットの皿を下げるとぐっと身を寄せてくる。


「ねえユウ、明日からもいっしょにランチしようよ。毎日会いたい」


 言葉は甘いのに、強い輝きを宿した大きな瞳が私を捕らえる。凡人の私には抗いようのない強烈なおねだりだ。


「いいの? そんなこと言ったら、本当に明日も来るよ」

「そうしてって頼んでるの。嫌?」


 絶対的な自信を湛えていた瞳が、一瞬不安そうに揺らぐ。反射的に首を振りながら白旗をあげた。天然にしろ計算にしろ……強すぎる。


「俺たちに遠慮すんな」

「そうそう。ユウならいつでもどこでも大歓迎」


 ヒロとセイまでそう言ってくれて、一生分の運を使い果たしている気分。こんなにも魅力的な人たちだから、私が引き寄せられるのは当然だとして。みんなも私を受け入れてくれるのは奇跡としか思えない。

 嬉しくて幸せで、だけど自分が抱えている事情のせいで手放しには喜べなくて。切なさから胸がぎゅうっとなる。


 それでも……どんな苦痛を抱えることになろうと、みんなに会えるなら苦しむ価値があると思ってしまう。1分1秒を共に過ごすたび、夢中になっていった。


「約束だからね、ユウ!」

「うん」


 ルイ、ごめんなさい。ここにいる間だけは、どうか許して。


「……」


 はしゃぐリネと、それを微笑ましく見守るヒロ。その前でセイは私を見つめてくる。まるで心の内を見透かすように。


『本当は今、なにを思ってる?』


 そんな声が聞こえてきそう。私は黙って微笑むしかない。


「大丈夫だよ」


 けれどセイは、私にしか聞こえない小さな声でささやいた。ガラス越しに降りそそぐ陽の光の中で、秘密の約束をするみたいに。

 ずっと揺らぐことのなかった……揺らぐはずのなかった鎖がわずかに音を立てる。


「俺が守ってあげる」


 ああ、神様……

 これが運命じゃないなら、なんて残酷な出会いなんだろう――





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