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Lovers High  作者: ショコラ*
第一章 足枷
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同席


 カフェ内でもひときわ柔らかな陽の光が注ぐ席には、両ひじを着いて組んだ手の甲にあごを乗せたリネと、隣で微笑むセイが座っている。まるで絵画のような光景で、改めて彼らの美しさに感心してしまった。

 自分の状況も忘れて見とれていると、顔を上げたリネがこちらに気づく。そして大きく目をみはった。つられてこちらを見たセイも驚きの表情になり、満面の笑みを見せてくれたけれど……次の瞬間リネが何か言って、表情をくもらせてしまう。どうしたんだろう?


「ちょっと、ヒロ!」


 ふたりの目の前まで歩いていくと、ヒロはようやく私の肩から手を外してくれる。

 そういえば私、ヒロに触れられた状態なんだった! やっぱりリネの前では失礼だったんじゃ……これが表情をくもらせた理由ではと思い、血の気が引いていく。


「まさか、さらってきたんじゃないでしょうね!」

「えっ?」


 けれど話は思わぬ方向へ。ヒロより先に私が聞きかえしてしまう。

 さらうって……誰が? 誰を!?

 心の中でツッコミを入れる私をよそに、セイまで困惑してヒロを見つめる。


「俺をなんだと思ってるんだ、お前ら」


 ヒロはうんざりしたようにつぶやき、当たり前のようにリネの隣へ腰を下ろした。


「入り口で立ち止まってたから、案内しただけだ」

「え……本当なの、ユウ?」


 リネは私を見て確認してくる。私を気遣うような、優しい声で。


「うん、本当。ごめんね、突然来たりして」


 気まずくてうつむく私。この3人の“聖域”に足を踏み入れようなんて、あまりに図々しかったかもしれない。でも――


「来てくれたんだね、嬉しいよ」


 隣から聞こえた声に、思わず顔を上げた。わざわざ席を立って隣に来てくれたセイが、私を見ている。なんてきれいな笑顔なんだろう……何度見ても慣れそうにない。


「座って。俺の隣でもいいかな」


 みんなが囲む丸テーブルにはひとつだけ空席があった。リネとヒロが距離を詰めて座っているから、促された席はセイの隣みたい。こんな近い距離に座るなんて……心臓がもたないかも。


「ありがとう」

「どういたしまして」


 イスを引いて座らせてくれたセイにお礼を言えば、嬉しそうにはにかまれる。ちょっと……呼吸が苦しい。こんなに動揺させられる男の人は、セイが初めてだ。

 目を合わせられなくなっていると、リネがキラキラした瞳で乗りだしてきた。


「本当にユウの方から来てくれたんだね。嬉しい!」

「迷惑じゃなかった?」

「迷惑? どうして?」


 馴れ馴れしくなかったかとか、ヒロと歩いて嫌な思いをさせなかったかとか、いろいろ思っていたものの……きょとんとした顔を見る限り、リネにとっては些事だったみたいだ。変に気を揉んでいたことこそ失礼だった気がして、自分が恥ずかしくなる。


「ユウ、ご飯はある? 買ってきた?」

「うん、あるよ」


 セイから聞かれて、慌ててバッグから昼食――自前のボトルに入れた紅茶と、朝買っておいたサンドイッチをテーブルに出す。改めて見るとリネの前にはカフェで注文したであろうリゾットが、セイの前にはパスタがあった。ヒロは購買帰りだったようで、袋からパンを出している。


 いっしょにランチタイムを過ごすだけなのに、嬉しくてたまらない。思わず微笑めば、みんなも笑みを返してくれた。特にセイはじっと私を見つめてきて……自分がリネのような美女でないことが申し訳なくなる。どぎまぎして首をかしげれば、はっとしたように「ごめんね」と謝られた。

 その苦笑いを見て、昨日のことを思い出す。そういえばセイには、孝明を彼氏だって紹介しちゃったんだっけ……


「あの、セイ」

「うん?」


 ああ、もう。しっかり目を合わせるのがこんなにも難しいなんて! ぼうっとしないよう、必死に意識を集中させる。


「ユウ?」

「だ、大丈夫! 昨日はごめんね」

「昨日?」

「帰りの……」

「……あぁ、彼氏のことか」


 優しい表情は変わらないながら、セイの声音がワントーン下がった気がした。セイに何かあったと察したせいか、リネとヒロが放つ空気も少し張りつめる。


「かなり失礼だったでしょう?」

「大丈夫だよ、気にしてないで」


 セイが優しい人で良かった。とりあえず怒っていないことに安心し、先を続ける。


「実は昨日別れたの」

「……え?」


 出会って日の浅い相手に、こんな話をされたところで困らせるだけかもしれない。それでもセイには、事実を知ってほしくて――勇気を出して話し始める。セイはもちろん、リネとヒロも真剣に耳をかたむけてくれた。


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