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幕末最前戦の戦士たち  作者: コトハ
はじまりは夢の中で
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新設!救護班二

目を覚ますと近藤局長が心配そうにのぞき込んでいた。


え!まだ夢みてる………


また寝てしまったの!!


ああ!何で私寝た?!


ご飯食べる所だったのに!


「福田君?気分はどうだ?」


局長の大きな手が頭に置かれた。


「近藤局長……」


あったかいお味噌汁があったのに!


「やっぱり一人で救護斑は大変だな。もう一人つけようかね?うん。そうしよう」


髪をなぜながら、局長は一人頷いた。


「局長……」


卵焼きもあった!


「どうした?どこか痛いか?」


「………お腹がすきました」


ぐーーと、タイミングよくお腹が鳴った。







ご飯に漬物のお茶漬けと簡単な夕食を済ませた。


夢の中は、まだ夕方だった。


食器を片づけていると、玄関から芹沢局長と新見局長


それから………後二人……誰だったかな?が入ってきた。


「こんばんは」


こっちに気付いた芹沢局長が扇子を片手に


「おう!福田君。近藤局長に御目通り願いたく参上した」


「えっと、お待ちください」




奥の部屋で近藤局長と土方山南両副長、芹沢局長たちは、何やら話し合い。


寝ていた沖田さんが起きてきた。


「もう、大丈夫ですか?」


「うるさくて寝てられない」


「お茶でも出そうと思うんですけど、どこにあるか分からなくて………」


そこへ山南副長が廊下から歩いてきた。


「話し合い終わりましたか?」


沖田さんが尋ねると


「どうもこうも。会津藩お抱えになった時に、浪士組の資金も話しておくべきだったな」


「お金がないのは、昔からでしょう?」


「そうだが、隊士も増えて浪士組の形を作るのに、いろいろと物入りだろ」


………浪士組お金に困ってるのかな?


「うちには、当てはないし、芹沢さんが大阪まで行って、調達するって言うんだが」


「へー、大阪か。行ってみたいな」


山南副長の深刻さが、沖田さんには全然伝わってない様子


勝手口が開いて八木家の女中さんが


「お酒お持ちしました」


と、重そうに徳利を数本持ってきた。


「酒など頼んでませんが?」


「芹沢さんのご所望どす」


山南さんは申し訳なさそうに受けとった。



「沖田さん、今晩は前川さんの所で休みなさい。福田君も」


「はいはい。酒癖悪いからな。芹沢さん」


荷物を持ってお向かいの前川邸に移動した。


道を挟んでもう一つの浪士組の借りている家……前川邸は、八木邸よりも広くて大きなお屋敷だ。


前川邸の人は浪士組が入ってすぐに引っ越してしまったらしい。


広い土間を抜けて屋敷に上がると隊士達は布団を広げていた。


「福田君も適当に休んでね」


そう言って沖田さんはあいてる所に布団を敷き始めた。


「え!でも、沖田さん私は………」


沖田さんの耳元で小声でつぶやく。


「……女だってバレたらヤバいんですけど………」


「………そうだっけ?」


うんうんうなづくと


「福田君って、女って気がしないんだよなぁ……」


「どういう意味ですか?」


「じゃあ、こっち」


敷きかけの布団を持って入ってきた土間の方に行ってしまう。


慌てて積んであった布団を抱えていると


「お手伝いしましょうか?」



ふっと持っていた布団が軽くなった。


このハーフみたいな人は


「井上新左衞門さん」


「はい。今夜はこちらでお休みですか?」


「ええ。局長達の話し合いがあるみたいです」


布団を抱えて沖田さんの後を付いて行ってくれる。


いい人だね………


沖田さんは土間を抜けて外へでて、土蔵の前で止まった。


井上さんに気付いて一礼して


「この中って寝られるかな?」


何で倉庫で寝るの?!


「寒くないですか?」


だよね!井上さんの言うとおりだよ。


「俺、人がたくさんいると眠れないんだよなぁ。あいてる部屋ないよね?」


「その奥の部屋は、あいてるのではないでしょうか?芹沢局長達も、お使いではなかったですよ」



「じゃあ、そこで寝るよ。ありがとう。井上君」


それから井上さんは灯りと火鉢も持ってきてくれた。


井上さんに笑顔でお礼を言って雨戸を閉めると


沖田さんは並んで敷いてあった布団を

部屋の端に引きずって移動させた。


もう一枚も一番遠くにずるずるずる………


「これでいいな」


「すみません。気を使ってもらって………」


「これだけ離したら、いくら寝相悪くても、蹴られないだろ?」


「………だからこんなに離したんですか?」


「他に理由があるか?」


「………いえ。ないです」


女の子だから気を使ったとかないのか!!


……でも

私も沖田さんて、知らない男の人って気があまりしない。


普通男の人と二人っきりで寝るなんて、考えただけでも、何だか気まずそうだけど全然そんなことない


沖田さんはすぐに寝息を立て始めた。


声がお兄ちゃんに少し似てるからなのかなぁ………


お兄ちゃん、学校始まってるのに病院に来てたな………



この夢いつ終わるのだろう………





話し声が聞こえて、雨戸を隔てた廊下から人の気配がした。


真っ暗で何も見えないから、まだ夜中なんだろう。


「………そうですか……殿内さんは………」


沖田総司の声。


「………江戸から………京に残った同志だと思っていたが………」


近藤局長?


「芹沢局長も………」


「………俺がやろう…………」


やろう………?


何の話だろう?


「だめです。近藤さんに何かあったら、浪士組はどうするんですか?俺が行きます」


沖田さんの声がはっきり聞こえた。


突然強風で雨戸ががたがた音を立てた。


ぎゅっと目を閉じて布団にもぐりこむ。



それから二人の声は聞こえなくなって、いつの間にかうとうと眠ってしまった。






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