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幕末最前戦の戦士たち  作者: コトハ
はじまりは夢の中で
46/54

井馬福同盟、四

「おい。福田!おい!!」


お兄ちゃんなのか、沖田さんなのか……


夢現で呼ばれたけれど、まぶたが重くて開けられない。


夢も現実も分からないなんて、我ながら本当に心配になってくるけど……


あ。


福田って読んだから、沖田さんだな……


「お前、公家と知り合いなのか?」


………………くげ?


「渡したからな!」


おでこを紙で叩かれて、まぶたに力を入れた。


「眩しい……」


頬に当たっている紙を取って、寝転んだまま広げた。


あれ?この香りは知っている……どこかで……


布団に入ったまま、紙に包まれた手紙を広げた。


「…………達筆過ぎて、全然読めん」


井上さんに読んでもらおう。


「あ!」


井上さんで思い出した。


公事宿へ行ったときに、お内裏様に恋文もらったことがあった。


――――まさか


「……また、井上さんに怒られるの嫌だから、馬越さんに読んでもらおう……」





大阪にいるはずの沖田さんが、なぜ帰ってきているのかな。


朝餉の支度に部屋を出ると、三人は木刀を手に稽古を始めていた。


「おはようございます……」


脇を挨拶して通りすぎる。


怪我をしてるのもあるけれど、前は寝坊しても、叩き起こしてくれたのに……


かんと木刀のぶつかる音が背後でした。



――――私は


ここで何をしてるのだろう?


「別にいじけているわけではないです」


今朝はかよさんが熱を出してお休みだと、代わりに八木の奥さんが土間で火をおこしていた。


「そうか?うちの旦那はんが、福田はんの様子がおかしいって言いますねん。あの人、福田はんのこと見てるとおもろいって……」


といた米の入ったお釜をセットすると、奥さんが寄ってきた。


「……で、お公家はんの文にはなんて書いてありましたの?」


「え?何で知ってるんですか!?」


「そりゃー福田はん好きとしたら、こんなん知らんわけないでしょう?文貰って喧嘩して、二人と疎遠になってるんでっしゃろ?旦那は井上はん押しですけど、うちは馬越はん押しどすけどな」


…………ちょっと待って。


今言われたことを頭で整理して理解するまでに、少々時間がかかった。


「奥さん……それ、全く全然一個も合ってないですよ」


「え?もしかして……沖田はんか?」


「……それもあり得ないです」


誤解を解きながら、味噌汁のだしを取った。


「なんや。若い娘がこんなぎょうさんの男の中にいて、恋の一つも生れんとは……がっかりやな……まあ、うちの娘が浪士組とどうこうなっても、困る言うたら困りますけどな」


野菜を切って、だしに放り込む。


「豆腐は最後でな。でも、馬越はんは福田はんに惚れてますやろ?」


危うくまな板の上で押さえていた豆腐を握りつぶしそうになった。


「それもありえませんよ!」


前にお珠ちゃんに、井上さんが私の事好きとか言われて誤解して、超!恥ずかしかったんだから!


「ありえますて。見てたら誰でもわかりますやん」


止めてー!


変に意識したら、恥ずかしいのは私なんだから!


「ありえませんて!馬越さん頭の中変態ですから!」


変態の意味を聞かれて、説明すると


「それは、皆男の人はそうどすえ?井上はんだって、沖田はんだって、皆お口には出しまへんけど、頭の中は同じどす」


絶句して止まっていると、


「馬越はんは正直で裏表がなくてええ子や。福田はんかて、馬越はんと一緒のときが、泣いたり笑うたり、一番ありのままで元気や。だから、うちは押しどす」


――――――確かに、馬越さんといると私は普通でいられる


「井上はんも真っ直ぐでええ子ですけど、真っ直ぐ過ぎてそこがどこへ向うか…………少し怖いわ」


――――怖い――――――


奥さんの言葉が胸に突き刺さった。


だってそれは、私が最近井上さんに感じていた事と同じだったから。


怖い


井上さんといると、やさしいし雰囲気で、お姉さんがいるせいか、話さなくても色んなことに気づいてくれる。


本当にほっとする。




――――――けれどたまに理解できない不安に襲われる


井上さんだけじゃない、沖田さんだってそう。


価値観が違うんだって、そう理解するしかないと思ってた。





「もう豆腐入れて」


奥さんの声で、我に返った。


「一緒に居れて、ありのままで居られるっちゅうことは幸せなことやで」


おたまで豆腐を軽くかき混ぜる奥さんの横顔を見ていた。


「若いときはそんなん物足りないやろけど。お椀とって」


伏せてあったお椀を手渡した。


「でもな。娘の頃ってどうしても怖い方へ惹かれるねん。幸せになった姫様よりも、悲恋にな。大棚の若旦那より、陰のあるやくざ者とかな」


「……そうですか?」


奥さんはうなづいて味噌汁をついだお椀を渡された。


「だって福田はんかて、井上はんのが好きやん」


味噌汁の入ったお椀が手から落ちて、土間で跳ねた。


「すみません!」


しゃがんでこぼれた具を拾うと、奥さんが濡れた手拭で手を拭いてくれた。


「火傷した?!」


「大丈夫です」


「いらんこと言うた?うち」


「え?全然!」


奥さんはじっとこっちを見つめて


「ええな福田はんは。今から何でも出来て。死んだら何も出来ひん」


そっと、頬に触れられた。


「しーちゃんもこんなほっぺたしてたわ……」


……しーちゃん?


「早よ、汁が冷めんうちに持っていき」


奥さんに言われて、膳に並べた。





まだ右肩が痛んでお膳が運べないので、取りに来てと皆に伝えに行くと、救護室で何やら話をしていた。


「……と言うことは、福田の妹だと?」


沖田さんの声。


「確かにそのようなことがありましたが……相手が誰とも知れぬことですし……」


井上さん?


「あほな光源氏ですか?」


馬越さんが興味なさげに紙を広げた。


「あ!それ!!」


声を出すと三人は慌てて、公家からの手紙を隠すようにこっちに向き直った。


「飯出来たか?


沖田さんが立ち上がって縁側へ下りてきた。


「……出来ましたけど、自分で取りに行ってください」


「私が取ってきます」


井上さんが部屋を出ると、沖田さんも後を追った。


残った馬越さんと目が合った。


『馬越さんは福田はんに惚れてますやろ?』


八木の奥さんの声が頭をよぎった。


違う……あり得ないから!


「顔が赤いですが……?」


「え?何でもないです!それより、皆で何してたんですか?」


馬越さんはお尻の下から公家からの手紙を取り出して


「何だろうと広げたら、逢い引きの文でした。すみません。知らぬとはいえ、盗み読みして……」


馬越さんはいつもの無表情で、こっちへ文を差し出した。


「逢い引き?」


「そんな相手がいるなんて……いつの間にと皆で驚いていたところです。早く支度をしなければ遅れますよ?半刻は福田さんの脚では掛かりますから」


文を掴むけれど、馬越さんは放さない。


「行かないですよ。その公家さん知らない人だし、井上さんにも怒られたし。お腹すいたからご飯食べましょう?」


「行かないのですか?」


馬越さんは可愛い目を見開いた。


「行くわけないじゃん!逢い引きとか訳分かんないし、怖いし」


「……なんだ。行かないのか……」


つまらなそうに呟いて文を放した。


文を広げてみてもひょろひょろ字は全く読めない。


「これ何て書いてあるんですか?」


馬越さんは縁側の隣に座って


「字が読めなかったのでしたね」


文を除きこんだ。


「……春風の戯る先に君あれど……」


「……?短歌ですか?春風の……?」


「一片の花弁に想い募れば……」


そこまで読んで、馬越さんはため息をついた。


「……そこらの懸想文売りより酷いな」


「懸想文売りって?」


「覆面した公家が、恋文を売ってるんですよ。それを箪笥に閉まっておくと良縁が来たり、良いことがあるとかないとか」


「へー……と言うことは、この文は下手だと言うこと?」


馬越さんは頷いて


「何だか古臭いでしょう?じじいが書いたみたいだな……俺ならこんな回りくどい言い方より……」


少し考えて、こっちを向いた。


「その餅の様な頬を食いたい」


…………………………………………


可愛い黒い瞳を見つめて、何を言わずとしているのか、その意味を汲み取ろうとしたけれど


「はあ?」


口をついて出てきたのは疑問符でしかなかった。


「――冗談はさておき」


冗談だったのか!?


「いつまでその格好でいるのですか?」


「格好って?」


いつもの袴姿だけど?


「戻らないのですか、娘に」


ああ……そういうことか……


確かに芹沢局長に娘でいいって言われたけれど


「女の着物って、動きにくいですよね。こっちのが楽だし慣れてるから、これじゃ駄目かな……」


「駄目ではないですが、どうしたらいいですか?俺は」


「?」


今日の馬越さんの話はくみ取れないことが多すぎる。


まあ、何考えてるか分からないのは最初からだけれど。


人差し指を一本立てて


「一。これまでと変わらず、男のようにして扱う」


指を二本立てた。


「二。これまでと変わらないが、女として扱う」


指を三本立てた。


「三。これまでのことは忘れて、今日初めて会ったことにしてやり直す」


「三が一番意味分かんないですけど、出来たら今まで通りでお願いします」


「……一ですか? えー、つまんねえ……」


「え!?今までつまらなかったんですか?」





井上さんが朝餉の膳を運んできた。


「今日は大坂の方へ勧誘に行きますから」


「三人で行くんですか?」


「はい。福田さんは早く怪我を癒してください」


井上さんは優しい笑顔だけど、私はまた


――――ひとりぼっちで留守番


仲間外れ


役立たず


いる意味がない


どんどんマイナス思考に陥っていく。


「あー! 嫌だ嫌だ。私も吉川先生に治療方法習ってきます! いただきます!」


ご飯を口いっぱい頬張ると


「……どうかしましたか?」


井上さんの困惑した声に笑顔で答えた。


「皆が帰ってくるまでに、救護の腕上げときます!」




何かしなければ、一人でぼんやりしていたら、またマイナス思考になって、芹沢局長に斬られてしまう。


夢とはいえ、痛かったんだから。


傷も心も。




「それは女やいう事を知らんかったときのことやろ?」


吉川先生は救急ガイドブックと交換に治療法を教える約束を無効だと言い出した。


「そんな! 約束したじゃないですか!!」


「光に薬の処方でも習え」


薬の入った木箱を抱えて出て行こうとする、吉川先生の後を付いて行った。


「――何してん」


「私、このままではダメになるんです。だから、今日から先生のインターンになります」


「また訳の分からん異国語を使うて……ガイドブックも意味調べるのに四苦八苦でよう分からんし……」


「え?だったら聞いてくださいよ。私にわかる事なら何でも!」


吉川先生は、しまったとどんぐり眼で空を仰いだ。


「浪士組で病人出てるかもしれへんで」


「今、皆大阪に行ってるので大丈夫です」


吉川先生は黙って、私を無視して歩き出した。


私もその後を勝手について行った。




思いつきでの行動で自暴自得なんだけど、あまりの移動距離に何度も吉川先生を見失いそうになった。


大きなお屋敷の中にはもちろん入れてもらえず、門の外で待っていると、怪しい人に間違えられて、変な目で見られるし……


とうとう、神社の市の中で先生を見失ってしまった。


のども渇いたしお腹もすいた。


明日からは、水筒とお弁当持参で来なければ……


「…………で、ここはどこ?」


通りがかった女の人に尋ねると、市比賣神社だと教えてもらった。


で、どうやって壬生まで帰ればいいのだろう……


川の方へ歩いていくとそこが五条大橋だと分かった。


確か前に、馬越さんと井上さんと神社に遊びに行ったとき、四条大橋を渡ったんだ。


じゃあ次の橋を西に進んだらいいはず!


橋を引き返して、最初の辻を右に曲がった。




本当に京都の道って碁盤の目みたいなんだなと、改めて思った。


余りこうして町をぶらぶらすることもなかったので、通りの名前や、どこに何があるのかなんてほとんど分からない。


けれど、東に鴨川があって、四条通を真っ直ぐ西へ進むと、見慣れた風景になってきた。


大宮通りを上ると公事宿や二条城につくし、下るとお梅さんのお店や吉川先生のうちに出る。


もう少し行くと、刀屋さんや団子屋さんもある。


湿気の多い空気が息苦しくて、足を止めてため息をついた。


販売機もないし、コンビニもない。


お財布は掏られてお金もないんだけど……


「……疲れた」


あと少し、頑張ろう。


汗で湿った足袋が気持ち悪くて、木陰でしゃがんで脱いでいると、目の前に紺色の着物の女の子が同じようにしゃがみこんだ。


「どうされはったんどす?」


小首を傾げて菖蒲を一輪胸に抱いていた。


この……小さくて、白くて、柔らかそうな美少女は…………


馬越さんのことを好きな、小悪魔こまちちゃんではありませんか!


面倒くさいので無視して立ち上がると


「何かうち悪いことしました?」


眩暈のしそうな切ない表情で訴えてくる――――


駄目だ駄目だ!


これに騙されてはいけない!


逃げ出そうと後ろを向くと、予想だにしない力で左袖を引っ張られた。


「――うち、負けまへんえ」


こまちちゃんが背伸びして、耳元で囁いた。


「どないなことしても、欲しいもんは貰いますさかい」


座ったこの恐ろしい目は、本当にさっきのかわいいこまちちゃんだろうか?


「――早くお公家の妾にでもなったらええのに」


!?――何で公家のことをこまちちゃんが知っているの


「――と、妹のお雪はんにお伝え下さい」


天使のほほえみに戻って、丁寧にお辞儀した。


こまちちゃんがいなくなっても、しばらく呆然とその場に立ち尽くしていた。


公家の妾……妹のお雪……欲しいものは貰う……


駄目だ。


空腹と喉の乾きで考えるのも億劫になってきた。


早く戻ろう……


背中に誰かがぶつかってきて、光りで目を細めた。


「公事宿へいた雪という娘を知っておるか?」


首筋に冷たいものが押し付けられた。


「今朝方、家人から文が浪士組の屯所へ届けられたであろう?」


眩しい光りは首筋の短刀からだ……


「聞いておるのか?」


「……聞いてますけど……切れそう……首……」


短刀が外されて、ゆっくり後ろを振り向いた。


「あ!」


編笠の侍……


「――おぬしは雪か?」


「いえ!雪は妹で……」


とっさに答えたけれど、訝しげに顔を覗き込まれた。


視線をはずして


「何か妹に用ですか?」


「文の主にはいつ何時に会う?」


「え?妹は……気持ち悪いから、会わないって言ってましたよ。どこの誰だかも知らないし……」


「――気持ち悪い?」


編笠の侍は鼻で笑った。


「……あの、私……帰ります……」


逃げ出そうとすると、また刀を突き付けられた。


「……妹に用がある。案内せよ」


「だから何の用ですか……あ!その公家さんに会いたいんですか?」


一度会っただけで知らない公家さんだけど……


もし、この人が公家さんの命を狙ってたりしたら……


馬越さんはあの文を逢い引きって言ってた。


きっと待ち合わせの時間や場所も書かれていたんだと思う。


「――ああ。会いたい」


「……誰なんですか?あの公家さんは――あなたも……」




「はて?魔王の宮様のお侍様がこんなところでどないしはりました?」


吉川先生の声に、編笠の侍は刀をそっちへ向けた。


吉川先生は動じる様子もなく


「神泉苑で倒れはったお付きの方は、その後どんな具合でっか?」


侍は刀を下ろして


「……町医者か。そちには関わりのないことだ。立ち去れ」


吉川先生は頭をかいて


「それが……その者はうちのいんたーんなんですわ」


「いん……たん?」


吉川先生!!


「そうなんです!職場体験なんです。今日は一日鞄持ちで医者の仕事とは何か勉強中です」


吉川先生の側に移動して、薬の入った木箱を奪い取った。


ありがとうございますと小声でお礼を言うと、ガイドブックを全部訳せと言われた。


「何をこそこそしている。まだ用は済んではおらぬ」


「だから、知らないってば!」


「文には何と書いてあった?」


「知りません。妹はひょごひょご字は読めませんから」


「では、文を持ってまいれ!」


「え……それは……まだ、あるかな~。捨てちゃったかも」


「おぬし!宮様の文を捨てたと申すか!!」


「だから!宮様って誰ですか!?」


押し問答を続けていると、吉川先生が口をはさんだ。


「――――もしや、また姿をくらませはりましたか?」


網笠の侍が、吉川先生に刀を向けた。


「以前、神泉苑でお会いした時もお供の方が必死こいて探してはりました……妙な浪人に絡まれて、危ない所でしたわ……」


……え?


ということは、この網笠の侍は、


「手紙の差出人のお供ってこと?でも、それならどうして公事宿で私と間違えて、お珠ちゃんをさらおうとしたの?」


「――私?」


網笠の侍に睨まれて慌てて訂正した。


「いえ。妹です」


「とりあえず福田はん。その手紙渡したったら」




屯所へ三人で向かいながら、次々に浮かんでくる疑問を、小声で吉川先生へ質問した。


網笠の侍は、間違いなく、魔王の宮様の御付の家人で、手紙を渡しても、あの公家さんに危害が及ばないこと。


私をさらおうとしたのは、宮様がふらふら出て行って身の危険が生じるなら、お側に置こうと思ったから。


もしくは、仇をなす者なら始末するため――


「ええ!勝手に恋文とか送ってきて、なんで殺されなきゃならないんですか!」


思わず大声出して、後ろからついてくる侍を振り返った。


「……まあ、そういうご時世や」


「……まさか私たちも殺されたりしないですよね?」


「分からんな……そればっかりは……」


呑気にいう吉川先生の前を歩いた。


出来るだけ侍と距離を取っておこう……



屯所の前で、同じように笠を被った侍が立っていた。


入隊希望者かと思ったけれど、笠を取った顔は井上さんといたときに、文を持ってきた侍だった。


あの文はその場で破いて捨てたんだ。


「福田はん……走って屯所の誰か呼んできいや……」


吉川先生が前を向いたまま囁いた。


「え?誰もいないですよ。皆大阪に行ってて」


「あちゃー。こりゃ、お陀仏かいな……」


振り向くと、網笠の侍が刀を抜いた。


屯所の侍もそれを合図に刀を抜いた。


「挟まれたな。どないしよ」


吉川先生の声は呑気だが、これってまさか――――


「私たち……斬られるってこと!?」


「今頃気付いたんか……あほ」


二人が同時に前後から抜刀したままこっちに走ってくる。


逃げようにも前後を挟まれて、左右も高い塀に囲まれているし。


銀ちゃんも持っていない。


刺しているのは脇差一振り。


吉川先生が私の脇差を抜いて、屯所の方から走ってくる侍の方を向いた。


「ダメ!吉川先生斬られちゃうよ!私に返して!!」


「あほ!あんたの腕の方が信用ならんわ」


「私は斬られても大丈夫だから!」


脇差の柄を握って取り合いをしていると、一緒に来た網笠の侍が、吉川先生の背中を踏み台にして高く飛んだ――――








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