隊士募集中二
なんですって?!
中間テストとは何ですか?!
朝いきなり先生が黒板に日程を書き出した。
ため息をつくと、前の席の男子が振り返った。
「福田さん学校休んでたから大丈夫?」
「うん大丈夫……」
じゃ、全然ないんですけど!!
チャイムが鳴って久美ちゃんと体育館へ向かった。
「まだ変な夢みるの?」
「……え?……うん……」
私、新選組の夢のこと久美ちゃんに話したっけ?
「睦月がぼーっとしてて、おかしいって充君が心配してたから……」
ぼーっとしてるかな?
確かに頭打ってから、夢ばかり見るからたまに夢なのか起きてるのか分からなくなるけど……
「最近もてるんだよね……」
不満そうにくみちゃんが呟く。
「久美ちゃんかわいいからね!」
「何言ってんの?充君です!気付いてないの?」
「えーマジで?そんなことより!中間てどうしよう……」
久美ちゃんにいきなり体操服入れでおしりをたたかれた。
「マジあの好き好きビームで恋に落ちないのか疑問だ」
「は?」
「私なら一瞬で撃ち抜かれるし……視線にも気付いてもないんでしょう?」
もう一度おしりをたたいて、久美ちゃんは体育館のスロープをダッシュした。
「待ってよ!なんの話?」
「悔しいから教えない!」
久美ちゃんが急に止まって、ぶつかりそうになった。
体育の先生に走るな!と一喝された。
「危ねぇな!」
吉川先生の家の角で、飛脚にぶつかりそうになった。
「すみません!」
交差点では一時停止。
正太君は奥の部屋で休んでいて、今のところは大丈夫だとお光さんが教えてくれた。
久し振りの救護室の布団に一人くるまる。
沖田さんは出掛けて留守。
今日は正太君の治療を目の当たりにして、怖くて何もできなかった。
井上さんには困らせるようなことをしてしまうし……
そんなことを考えていていたらあんまり眠れなかった。
「馬越さん!昨日は何にも出来なかったけれど、やっぱり応急措置くらいは出来るようになりたいんです!」
いつものように足りない薬を確認して帳簿をつけていた馬越さんはこちらも見ずに
「医者にでも修行にいきますか?」
相変わらずの無愛想………
「行きたいです!ちゃんと勉強したいんです!やっぱり浪士組には、刀傷の手当てくらい出来る方がいいと思うんです!傷を縫ったりとか、止血が出来るとか………聞いてます?」
「………そうですね………」
昨日から馬越さんは気のせいかぼんやりしている気がする。
朝稽古でもしこたま沖田さんに打ち込まれていたし、朝餉だってあんまり食べていなかった。
まだ胃腸の具合が悪いのだろうか。
「そういえば、お珠ちゃん元気でした?」
お珠ちゃんとの約束を守るために、馬越さんにお手紙を持って行ってもらった。
「元気でしたよ………今度お雪ちゃんの兄に会いたいと言ってましたから、そのうち来るのではないかな…」
「え!どうしよう!!会ったら私だってばれません!?」
馬越さんは顔をあげて
「………それより、まさかとは思いますが、俺とお珠ちゃんの仲をどうこうしようと思ってませんよね?」
「え?だって馬越さん、お珠ちゃんのことかわいいって………」
「………余計な世話です」
馬越さんはむすっとして帳簿を持って部屋を出て行った。
珍しい。
馬越さんが女の子がらみで怒るなんて………
馬越さんと入れ替わりに永倉さんが入ってきた。
「福田あれだなあ~」
障子にもたれたまま馬越さんの出て行った方を向いて
「人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて死んじまえってか?」
「邪魔なんかしてませんよ!応援してるんです。それより、また隊士がぶっ倒れましたか?」
「いやいや。土方さんが呼んでるよ。すぐ来いってさ」
永倉さんは隣の柴犬そっくりな笑顔で
「お前の妹、井上の許嫁なんだろ?かわいかったなぁ~!まあ、井上なら妹が惚れるのもしょうがねぇか」
………私だってばれてないんだ
「………そうですね」
「恋っていえば、左之助もめずらしく!てこずっておもしれーぞ」
あ!
おまささんかな?
そういえば、大勘違い発言からどうなっているんだろう?
「総司も医者の娘と怪しいし」
……ばれてますよ、沖田さん…………
遠くで鴬が鳴く。
みんな春だねぇ。
前川邸から八木邸の離れへ向かうと、小さな男の子が飛び出してきた。
土方副長が玄関で紙を拾っている。
その後ろで山南副長が笑いながら
「土方さんゆるしておやり。歌に絵を付けたかっただけらしいから。昨日、芹沢さんが菊の描き方を教えてたからね。ちょうどいい紙があったって、描いたんだろうよ」
風で玄関の外にも一枚飛んできた。
拾うとふにゃふにゃ文字の横に、お刺身についている菊の花そっくりの絵が描いてあった。
「上手じゃないですか?誰が描いたなんですか?」
「福田君。今しがた出てった八木さんとこの子だよ」
「へー上手ですね。………でも、この漢字は………梅の花?って書いてません?」
土方副長が玄関から飛び降りて来て、紙を引っ手繰った。
「先に部屋に行ってろ」
何怒ってるんだろう?
「………はーい」
山南さんと一緒に奥の部屋に歩いて行った。
襖を開けると芹沢局長と近藤局長が談笑していた。
「おお!福田君!羽織を作り直そうと思ってな」
芹沢局長に手招きされて畳に広げてある紙を覗きこむ。
羽織のデザインは基本的に変わっていない気がしたけど、隣に書かれた誠の旗と提灯のデザインは
「これかっこいいですね!」
「そうかそうか!では決まりと」
芹沢局長は紙をくるくる巻いて立ち上がった。
「え?皆さんの意見は?」
「聞いたよ。それから君に、仕事を一つ頼みたい」
芹沢局長はこほんと咳払いをして
「将軍の下坂の折に、浪士組も任を賜ったが………如何せん、人数が足らん。そこで、隊士募集をする」
「すごいじゃないですか!」
近藤局長を見るとこくり頷いた。
「そしたら!お給料もたくさん貰えますよね!芹沢局長もお金の心配しなくて済みますね!」
無理矢理借りたりしなくてすむよね?
「おお、そうだ!わしの苦労を知っているのは福田君だけだな。そこで、見栄えのいい君に道場を回って、隊士を集めてほしい!」
「ええ?!」
叫んだのは私ではなく近藤局長。
「こんないかつい奴らより、福田君や、井上君、救護班の……なんといったか?あいつや……沖田君ならまだいいな………の方が、目立つし、人当たりがいいだろ?」
そこへ拾い集めた紙の束を持って土方副長が入ってきた。
「責任者は土方君にやってもらおう。いい人材を期待している」
芹沢局長は上機嫌で母屋の方に行ってしまった。
「………何の話だ?」
近藤局長は頭を抱えて
「だから福田君は目立っては困るというのに………」
その隣に土方副長は腰を下ろした。
「だから、何の話だ?」
「土方さんがいい男だってことだよ」
山南さんはほっこり笑って
「でも、意外だな!福田君が、芹沢さんと仲が好いなんてね。お金の心配しなくてすみますね………か」
「だって、公事宿で、浪士組の局長は強請りたかりで、無理矢理お金を借りるって聞いて………浪士組のためにそんなことまでして、大変だなって………お給料が出たら、少しずつでも返せるじゃないですか」
山南さんはにこにこ頷いて話を聞いて
「そうだね。では、皆で協力して、隊士を増やしましょう」
「はい!頑張って勧誘してきます!隊士募集のちらし作っていいですか?」
「いいよ。紙は土方さんにもらいなさい」
「はい!土方副長!紙下さい!」
土方副長は眉を寄せて
「だから、いったい何の話だ?」
「と、いう訳で、隊士募集のお仕事を賜りました~」
巡察から戻ってきた沖田さんに得意気に話していると
「俺は忙しいから、福田達でやって」
沖田さんは刀を置いて畳に横になった。
「え!芹沢局長が沖田さんもって言ってましたよ?将軍様の下坂の警備ですよ!すごいんですよ!!」
「…………分かってるよ。近藤さんもついに攘夷決行の日が近付いたって、隊旗や提灯作ってたし」
「…………将軍様の下坂って、攘夷決行のことなんですか?」
外国と戦争になるの?
沖田さんが面倒くさそうに寝返りうってこっちを見た。
「……大阪まで遊びに行くわけじゃないぞ?」
……下坂って大阪へ行くことなのね……知らなかった。
「攘夷となったら、港の守りが要だから、大阪の港を視察に行くんだぞ」
「………分かってますよ。でも、外国に勝てるんですか?日本は、戦争で負けてるし………」
「何言ってんだ?まだ戦も始まってないのに」
「………そうですね。でも負けると思います。刀と鉄砲なら、鉄砲が勝つでしょう?」
沖田さんは急に体を起こすと刀をとった。
「………どっちが勝つかやってみるか?」
………怖い
今背中がぞくりとした。
「そんな腰抜けは、ここにはいらねぇ………」
「?」
「尊皇攘夷の志のないものは、いらねぇ」
冷たい目で見られて、軽蔑の目で見られて背中が冷たくなった。
「………まあ、福田は雑用係だからな。女だし」
またごろんと横になった。
怖かったけど女だしにちょっと頭にきた。
「…………尊皇攘夷とか訳わかんないけど!女だけど!私は負けると分かってる戦をするなんて訳が分かりません」
沖田さんは頭を起こして
「負けるって誰が言ったんだ?公事宿で幕府の役人にでも聞いたのか?それなら、黙っておめおめ異国にこの国を乗っ取られたいのか?」
「違うってば!そういうことじゃ!!」
「じゃあ何だよ?」
そう言われると言葉につまる………
「………みんな大好きだから、死んで欲しくありません」
沖田さんも
馬越さんも
井上さんも
近藤局長もみんな………
「…………ばかかお前は。みんな死ぬ覚悟をして、ここにいるのに………」
沖田さんは目を閉じた。
「だから、お前にはここは無理だって言ったんだ」
井上さんが言ってた。
沖田さんたちは将軍上洛の警備で江戸から来たんだって。
攘夷決行の日を決めるために将軍様は京都に来た。
それが近々決まる。
決まったら外国と戦争になるの?
刀と黒船が戦うの?
沖田さんはこっちに背中を向けて黙ってしまった。
「…………沖田さん、ねぇ……寝てるんですか?もう!」
夕べも朝方戻ってきたので眠たいのだろうけど。
患者さん来たら邪魔なので、隣の部屋に足を持って引きずって行った。
「痛てて!何すんだ!」
「あ!お光さんのこと永倉さんにばれてましたよ~おやすみなさい!」
襖を閉めた。
だって、刀で勝てるわけないし!
日本は最後は、開国するんだよ!
幕府もなくなるんだよ!
ふと、気が付いた。
「…………幕府がなくなったら、浪士組はどうなるんだろ?」
新選組はどうなっちゃうの!?
そう言えば今日は何年の何月何日なんだろう?
幕末って何年くらいあったの?
あとどれくらいで明治になるの?
しまった……全く日本史が頭に入ってない……
「こういう時は井上さんに聞こう」
今日は井上さんを見かけていない。
近藤局長付なんだけど、今朝八木邸を訪ねた時もいなかったし、前川邸の大部屋を覗いてもいなかった。
いつも気配なく現れてびっくりするんだけど……
八木邸の厨を覗いても誰もいない。
「何してんだ?」
声に振り返ると、芹沢局長と一緒にいる隊士がお金の音をさせて厨に入ってきた。
昨日酒はないかって取りに来た人だ。
「あの女いないのか……お前どこに酒があるか知ってるか?」
「知りません。昨日、もうないって言われませんでした?」
「酒くらい置いとけよ……お前買ってこい」
顎でしゃくって、隊士は瓶に座った。
「…………はい。店の場所はどこですか?」
「そんなことも知らねえのか!ちょい走っていけば店ぐらいあんだろ…………」
ちょい走るってどのくらいよ……?
「何本買ってきたらいいんですか?」
「お前が担げるだけ」
なんか適当でいいのかな?
「早く行け」
「お金は?」
その右手でさっきからちゃりちゃり鳴らしてる巾着は酒代ではないのかな?
「ツケで買ってこい!どうせ何買ったかなんてわかんねえんだからよ」
……ツケ?
「ツケってなんですか?」
隊士は立ち上がって、いきなり胸ぐらを掴んだ。
「ふざけてないで早よ行け!お前救護班とか言ってるが、近藤のただの居候やろ?芹沢局長にどうやって取り入ったか知らんが、刀も持てんような隊士など、何の役にもたたん只の穀潰しや」
穀潰し……
ただ飯食いってことだよね……
私、他の隊士にそんな風に思われてたの?
胸を押されて、戸口へ体が傾いた。
背中が誰かにぶつかった。
「……山南副長がちらしを作るから、皆を集めるようにと…………」
後ろで馬越さんの声がした。
隊士は手のひらを不思議そうに眺めて、そして
「おい。そいつ捕まえろ……」
馬越さんは耳元でめんどくさそうに呟いた。
「……何かやらかしましたか?」
「……ツケがわからなくて」
隊士にいきなり胸をわし掴みされた。
「ひっ!何っ……」
口から出かかった悲鳴をこらえる。
馬越さんが隊士の腕を掴んだ。
「……佐伯さん、男の胸まさぐって楽しいですか?」
佐伯さんと呼ばれた隊士は腕を振り払って、お金の入った巾着を馬越さんに投げつけた。
「…………気のせいか。お前買ってこい」
すれ違いざまに睨みつけられたけれど、負けじと睨み返した。
「……その面じゃしようがない。俺も昔はよくありましたから……」
ちょっと開いた胸元を直す。
よかった……カッチカチに巻いてて。
「え?俺もよくあった?」
馬越さんは巾着をお手玉のようにほおり投げて、にやり笑った。
か、かわいい!
あんまり笑わないけど、本当に笑うとずるいくらいかわいいんだよね。
子供だったらぎゅってしたいよ!
「何買おうかなぁ。酢でも入れてもらうかな」
「ええ?!そんなことしたら怒られますよ!」
「買って来いって言われたの佐伯さんでしょう?知ったこっちゃねぇ」
いつもの無表情に戻って、お手玉しながら歩いて行く。
「……でも………」
「福田さん、どれだけ人がいいのですか?あ!山南副長に呼ばれていたんだった……やっぱり佐伯さんに返してきます。救護室に先に行ってて下さい」
救護室では、山南さんが一人で墨を摺っていた。
確か土方副長、沖田さん、井上さんも隊士募集メンバーだったのに…………?
「他の人達は用があって、ちらし作りは私が任されたんだよ」
山南さんは、さらさらと紙に筆を走らせる。
…………なんて書いてあるか全然分からない……
「こんな文句でいいかな?」
「……すみません。ひょろひょろ字読めないんです……」
ふむと、山南さんは頷いて、もう一度書き直した。
「これなら読めるかな?」
今度は楷書で書いてあった。
「隊士募集、要項一、武道ニ覚或ル者。二、攘夷ノ志有スル者……あと、何かな?」
山南さんはうーんと首をかしげた。
「……あの、私は武道に覚えがないですけど、どうして入隊できたんですか?」
山南さんはほっこり笑って
「腕っぷしの強いのだけでは、心許ないでしょう?隊には色んな役目がある。福田君は救護を。他にも会計方や、学のある者、色んな人が必要でしょう?」
「……でも、私は医者ではないので、お役にたてなくてすみません……」
「そんなことはないよ。福田君と馬越君はよくやってくれている。君達のことは、隊士達も心強いと思っているよ」
さっき、佐伯さんに穀潰しと言われて、少し落ち込んでいたけれど、その言葉に胸がじんわりした。
「さて、何だかぱっとしないな……絵でも描くかな……」
山南さんは、紙の下半分にへのへのもへじの出来損ないみたいな顔を描いた。
「……ないほうがよかったね……」
絵は得意ではないらしい……
私も筆と紙をもらって、紙の上と下にだんだらの模様を描いてみた。
真ん中に、てるてる坊主が刀を抜いている絵を描く。
「ははっ!上手いなー!!よし、私は文句を書くから、福田君は絵をお願いする」
途中から馬越さんも参加して、ちらしが三十枚出来上がった。
「これをどこに貼ってもらおうかな……」
山南さんはふと馬越さんを見て
「君は京で育ったらしいね?道場や人が集まる所をしらないかな?」
ちらしを作る係りを山南さんにお願いして、私と馬越さんでちらし貼りに市中に出た。
「どこから行くんですか?」
馬越さんは
「お梅さんの店と、吉川先生。あと、公事宿でも回りましょうか?道場は面倒臭いことになりそうだから、山南副長にもご同行願いたかったのですが……」
「面倒臭いこと?」
「……とりあえず、叔母の店から」
お梅さんの店につくと、胸から釘ととんかちを取り出して、断りもせずに店の壁に釘で打ち付けた。
「だめじゃないですか?!勝手に貼り紙したら!釘で打ったら壁に穴空くじゃないですか!!テープとか糊とかないんですか!?」
「……頼んでも、断られるから……さっさとずらかりましょう」
小走りで逃げる馬越さんの後を追いかけていたら、ふと、店先にいる娘さんと目が合った。
「あ!まささん」
まささんは、じーっとこっちを見て、思いきり笑顔になった。
「お雪ちゃーん!」
手を振り返えそうとして、今はお雪ではないことに気付いた!
止まりそうになった足を、全速力に変えて馬越さんの後を追った。
かなり前を走っていた馬越さんに、吉川先生の家の前で追い付いた。
壁にはちらしが打ち付けてある。
「……許可取りましたよね?」
「今から取ります。御免下さい」
「また、勝手に貼り紙して!」
小さな女の子が戸の隙間から覗いていた。
「こんにちは。先生いますか?」
お光さんによく似た気の強そうな瞳で首を横に振った。
「じゃあ、お母さんはいる?」
首を横に振って急に泣き出した!
「え?どうしよう……一人で留守番なの?」
どうしたらいいか分からず、頭をよしよしした。
「私のこと覚えてる?昨日会ったんだけど……沖田さんと同じ浪士組なんだけど……」
「……沖田はん?」
しゃくり上げながら、上目使いで見た。
「そう!沖田はん知ってるでしょう?私達沖田さんの友達」
いきなり女の子は私の手を払って、馬越さんの後ろに隠れた。
顔だけ出して敵意の眼差しを向ける。
なんで私、嫌われてる……?
「名は?」
馬越さんは女の子の目線までしゃがんだ。
「……みや…………」
「おみや、貼り紙貼らせてもらえると、沖田はんも助かるんや。誰も剥がさんよう、見張っといてくれへんか?」
おみやちゃんは壁の貼り紙を見てこくり頷いた。
「ええ子や。沖田はんにおみやは偉い言うとくわ」
きらきらの笑顔で、おみやちゃんの頭に手を置いた。
おみやちゃんも、笑顔で頷く。
……何なんでしょう……このずるいくらい可愛い笑顔は…………
「さて、次行きますか」
真顔に戻った馬越さんは立ち上がって背を向けた。
「あ!ちょっと待って下さい!おみやちゃん、正太君は元気かな?」
おみやちゃんは、再び敵意の眼差しでこっちを見ると
「家へ帰った」
「もう帰ったの?!大丈夫なのかな……」
「……女も浪士組入れるん?」
……びっくりした!
馬越さんはとっとと角を曲がって行ったから聞こえてないよね。
「……女ではないんだけどな……」
おみやちゃんは、顔をしかめて
「女やん!沖田はんのええ人?お姉ちゃん」
「……いやいや、違うよ。沖田さんはお光さんが好きだから」
「沖田はんが好きなんは、うちどす!お光やのうて、おみやどす!」
「……すみません……」
あまりの迫力に思わず謝ってしまった。
「……沖田さんが好きなんだね」
うんと頷く。
「じゃあ、貼り紙をお願いします!おみやちゃん!」
「……馴れ馴れしく呼ばんといて!」
…………何か私、嫌われてるみたいだな……
公事宿にはお雪だとばれないように、馬越さん一人で行ってもらった。
外でぶらぶら待っていると、人相書きの貼られた立て札が目に入った。
ここに貼ったら目立つよね?
持っていた絆創膏で人相書きの隣に貼っておいた。




