表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幕末最前戦の戦士たち  作者: コトハ
はじまりは夢の中で
11/54

同期組二

八木邸に戻ると、近藤局長に、沖田さんと二人で説教を受けた。


「他の隊士と出かけて、何かあったらどうする?!娘なんだぞ!屯所から出るときは、総司お前がついて行け!」


八木邸の奥の部屋で二人並んで正座する。


「えー?嫌ですよ。こいつさらしも巻いてるし、大丈夫ですから。なあ?」


「そうですよ!カチカチですから!沖田さんが触っても、分からなかったですよ!ね?」


沖田総司はくるりと目を左に回して、


「ばっ馬鹿!お前何言ってんだ!触ったんじゃなくて、触らせたんだろうが!」


「そんな事!どうでもいいじゃないですか!触っても、分からなかったでしょう?」


「………う…うん」


「ほら!局長!大丈夫ですから……?」


近藤局長が立ち上がって沖田さんの胸ぐらを掴んだ。


「………総司、胸を触ったって、何かしたのか?福田君に何かしたのか!!」


こんなに怖い顔の局長初めて見た。


「近藤さん?!何にもしてないですよ!大体!こんなガキ!一緒に寝てても猫と寝てるのと変わらないし、女だって思ったこともないし!」


「一緒に寝てる?!一緒に寝てるたぁ!どういうことだって聞いてるんだ!!」


沖田さんが苦しそうに近藤局長の腕をつかむ。


怖い!


このままじゃ!


沖田さんが!


沖田さんが!!


殺されちゃう!!!


必死で近藤局長の腕にかじり付いた。


「やめてぇ!局長!沖田さんを殺さないで!!」


「へ?」


涙がにじんでよく見えないけど、近藤局長の腕を引き剥がさなきゃ!!


「な……なぜ泣いているのかなぁ。福田君は…」


近藤局長は沖田さんから手を離して、なだめるように私の頭に手を置いた。


顔を上げるといつもの局長の困った顔。


「近藤さんの怒った顔が怖かったんですよ」


沖田さんがコホンと咳をして


「でも、殺さないで~!は笑える」


「そんなに怖かったか?福田君。殺したりはせんよ。殺したりは……」


二人は顔を見合わせて笑い出した。


何で笑ってるの?


本当にびっくりしたのに……


心配したのに……!!



「二人の馬鹿!!」


そのまま障子を開けて前川邸の救護室まで走っていった。




そう言えば昔これと似たことがあった。


お兄ちゃんが中学生の時、お父さんに胸ぐらつかまれて、殴られたことが。


そんなお父さん見たことなかったから、怖くて怖くて………


お兄ちゃんは殴られて、廊下に倒れたまま動かなくなった。


死んじゃったのかと思って、お母さんにしがみついてわんわん泣いていたら、死んだはずのお兄ちゃんがむくりと起き上がった。


そして


「くそジジイ」


って言って、もう一発殴られた。


次の朝、お父さんとお兄ちゃんは何事もなかったように、いつものテーブルで並んで朝ごはんを食べていた。


泣きながら眠ってしまって、腫れた目の私の顔を見て、お父さんがやさしく膝に抱いた。


「ごめん睦月。………お前も謝れ」


「………ごめん」


二人が私に謝る姿を、お母さんが笑ってキッチンから見ていた。









前川邸の離れの救護班の障子を空けると、馬越さんがさらしを切って包帯を作っていた。


馬越さんはちらっと顔を上げてすぐ手元に視線を移して


「………局長にお叱りでも受けましたか?」


しまった!


ひどい泣き顔してるのかも!


慌てて顔をごしごし拭いて


「いいえ、何でもありません。包帯足りそうですか?」


「今、二つ作ったところです。それより、もう湿布があまりないですよ」


「足りないもの書いといて、後で局長に補充してもらいましょう」


ふぅー


泣いたら少し頭が痛い……


そろそろ夕餉の支度のお手伝いしなければ


「福田君、いるか?」


沖田総司だ。


黙っていると変わりに馬越さんが返事をした。


「はい。おいでです……では、俺は失礼します」


「え?!」


思わず袴の裾を掴むと


「痴話ゲンカに首を突っ込むつもりはありません。失礼」


……出て行っちゃった



「馬鹿って、何で俺が怒られるかなぁ……」


ぶつぶつ文句言いながら沖田さんが上がってきた。


「お前刀忘れてたよ」


はっ!


何てこと!!


銀ちゃんを忘れるなんて


「………ありがとうございます」


刀を受け取る。



…………沈黙



先にしびれを切らせて話したのは沖田さん。


「……何怒ってんだ?」


「怒ってません」


「ほら~怒ってる。近藤さんの顔が、怖かったからか?落ち込んでたよ。近藤さん」


「違います!私は、本当に、沖田さんが近藤さんに殺されるかと思って、心配したのに!二人とも笑うから……」



包帯を救急箱に片付けてふたを閉じる。


「………悪かった」


「え?」


意外な答えに驚いていると


「だから、悪かったから機嫌直して、近藤さんの所行ってくれないかな?お前に嫌われたと思って、物凄く落ち込んでるから」




それから


近藤局長に誤解を解きに行き、夕餉を終えると本当にぐったり疲れが出てきた。



「……暖かいお風呂に入りたい!」



片付けが終わって救護班の離れに戻ると、沖田さんが浴衣姿で、手ぬぐいを首に巻いていた。


え?これって湯上がりスタイルよね!


「沖田さん!お風呂どこで入ってきたんですか?!」


「どこって、ここの風呂だけど……」


「私も入りたい!」


「入れば?」


「入る!」



もー

お風呂あるなら言ってよ!


今日買ってきた古着と、新しい浴衣を準備して


……下着がない


いいや!


とにかく!お風呂に入りたい!!


「沖田さん!ちょっと付き合って下さい!」


嫌がる沖田さんを無理矢理風呂場まで連れて行った。


「見張ってて下さい」


「は?何で俺が………」


中に入って湯船に手を入れる。


「沖田さん!お湯がぬるい!」


「……風呂炊きまでさせる気か」


石鹸もシャンプーも無かったけど、お風呂は本当に気持ちいい………


暗い浴室で何だか眠たくなってきた。


…………



「お!総司。風呂炊きなんかして、誰か入ってるのか?」


ん?


この声は原田さん?!


「………っあ…原田さんもまさか風呂入りに来たんじゃないですよね?」


え?!


どうしよう!上がらないと!!!


急いで湯船から上がって、髪を手ぬぐいで巻いて頭にダーバンみたいに乗っける。


浴衣!浴衣!!!


「さっぱりしようと思ってな」


「原田さん!今入らない方が、良いかと………」


「だから、誰入ってんだ?」


帯はどうやってしめるんだっけ?


ああ!


蝶々結びでいいや!


「わー!福田!!あがって!」


「何だ……福田か。どれ、背中でも流してやろうか?」


「わー!」


扉が開くと同時に脱いだ着物を抱えて外に飛び出した。


「こんばんは!原田さん」


そのまま部屋までスーパーダッシュ!!


髪も浴衣もびしょびしょ。


部屋に入って敷いておいた布団にくるまった。


………寒い


「はっくしょん!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ