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続きを書いて。

夜会でエレナを妬むアルリックを慕う令嬢が彼女に絡んできて。

カシアンもアルリックも見目が良く令嬢にもてる。

エレナ言い返して。

それを通りがかったアルリックが聞いて。


## 騎士団長の沈黙と、令嬢の「残酷な誠実」


煌びやかなシャンデリアが輝く夜会会場。その壁際で、数人の令嬢たちがエレナを囲んでいた。

中心にいるのは、長年アルリックに想いを寄せていた侯爵令嬢のクラリスだ。彼女は扇子を鋭く閉じ、冷笑を浮かべてエレナを射抜く。


「……感心しますわ、エレナ様。あれほど世間を騒がせたカシアン様との破局から、瞬く間にアルリック様の婚約者の座に収まるなんて。アルリック様のことも、あの男と同じように貴女を引き立てる『アクセサリー』としか思っていないのでしょう?」


周囲にクスクスと意地の悪い笑いが広がる。

しかし、エレナは眉一つ動かさず、冷ややかな瞳でクラリスを見返した。




### 偽らざる「過去の愛」


「アクセサリー? 心外ですわね。私は、彼らをそんな風に考えたことは一度もありません」


エレナの声は凛として、会場の喧騒を突き抜けた。


「私は、カシアン様を心からお慕いしておりました。彼の語る夢を信じ、彼と共になら地の果てまで行けると思っていた。あの時の私の恋心は、何物にも代えがたい、純粋で、真実な情熱でしたわ」


朗々と語られる、かつての恋人への賛辞。


「彼が詐欺師だった事実は変わりません。けれど、彼に捧げた私の愛まで『偽物』だったと言われる筋合いはありません。私はそれほど、一途に彼を愛していたのですから」


その言葉には、騙された惨めさを超えた、自分の感情に対する誇りがあった。

カシアンという人間は否定しても、自分が抱いた「愛の形」は否定しない。それがエレナの強情で、真っ直ぐな美学だった。


だが、運命は残酷だ。

その言葉を、バルコニーから戻ってきたアルリック本人が背後で聞いていた。




### 砕かれた騎士団長の心


アルリックの手元で、飲み物のグラスがわずかに揺れる。

彼はエレナがカシアンと付き合っていた頃から、人知れず彼女を慕っていた。

己の立場をわきまえ、遠くから見守っていた日々。彼女が下衆な男に騙されていると知った時の憤り。そして、力ずくで彼女を奪い取った今——。


(……一途に、愛していた、か)


アルリックにとって、その言葉はどんな呪詛よりも鋭く胸に刺さった。

どれほど今、彼女の隣にいるのが自分であっても、彼女が「最高に燃え上がった記憶」の中にいるのは、自分ではなくあの詐欺師なのだ。

アルリックは表情を鉄の仮面で塗りつぶし、静かに彼女たちの輪に歩み寄った。


「……盛り上がっているようだが、私の婚約者が何か失礼をしたかな?」




### 氷点下の守護


「ア、アルリック様……!」


クラリスたちが青ざめて後退る。

アルリックはエレナの腰を抱き寄せたが、その指先はわずかに震えていた。


「エレナ嬢。……もう十分だろう。帰るぞ」


「アルリック様? まだ夜会は始まったばかり……」


エレナが彼の顔を見上げた瞬間、言葉を失った。

いつも傲慢で、余裕に満ちていたはずの彼の瞳が、ひどく傷ついた子供のように、暗く沈んでいたからだ。


「……私の前で、別の男への愛を語るのはそれぐらいにしておけ。私の忍耐にも限界がある」


低い、地を這うような声。

エレナは、彼が自分の話を聞いていたことを察した。


「それは、過去の話ですわ。私はただ、自分の気持ちに嘘をつきたくないだけで……」


「過去だろうと何だろうと関係ない。貴女の口から、奴への賛辞が出るだけで……私は、奴を殺さなかったことを後悔しそうになる」


アルリックは強引にエレナを連れ、会場を後にした。

馬車に乗り込むまでの間、彼は一言も発さなかった。




### 独占欲の代償


夜の馬車内。密室の沈黙が二人を包む。

エレナは、いつもなら軽口で応戦するアルリックが、ただ黙って拳を握りしめている姿に、言いようのない胸の痛みを覚えた。


「アルリック様。……怒っていらっしゃるの?」


「……怒っているのではない。絶望しているだけだ」


アルリックは自嘲気味に笑い、窓の外を眺めた。


「貴女がどれほど強情で、一度信じたものを曲げないか知っていたはずなのに。……あんな下衆に捧げられた『純粋な愛』に、私が勝てる日は来るのかとな」


それは、最強の騎士団長が見せた、初めての弱音だった。

エレナは、自分が守り抜こうとした「過去の愛の形」が、今目の前にいる男をこれほどまでに切り裂くとは思ってもみなかった。


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