表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は何度も僕を忘れる  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/48

第3章:違和感の積み重ね 1

 朝の教室は、まだ空気が落ち着いていない。


 窓際の席に荷物を置きながら、私はいつものように視線を巡らせる。


 ――いる。


 少し離れた席に、神代の姿。


 それだけで、ほんの少しだけ呼吸が浅くなる。


(今日は――)


 どうだろう。


 昨日の“続き”は、あるだろうか。


 そんな期待を、心の奥で押し殺しながら。


 ふと、神代がこちらを見る。


 視線が、ぶつかる。


 その瞬間。


 ほんの一拍だけ、時間が止まったような感覚。


 神代の目が、わずかに細められる。


 何かを探るみたいに。


「……あれ、お前」


 小さく、声がこぼれる。


 その言葉に、胸が強く打つ。


 神代は首を傾げたまま、私を見ている。


 まるで、思い出せそうで思い出せない何かを、必死に手繰り寄せているみたいに。


「なんか……見覚えあるんだよな」


 ぽつりと、続ける。


 確かめるような、曖昧な声音。


 名前は出てこない。


 それでも。


 ――完全に“初めて”ではない。


(……残ってる)


 かすかに。


 でも確かに、何かが。


 胸の奥が、じんわりと熱くなる。


 期待と、不安が混ざったような感覚。


 言葉を返そうとした、そのとき。


「あ、神代ー、昨日のさ」


 クラスメイトが声をかける。


 神代の意識が、そちらに引っ張られる。


「ん? ああ、あれな」


 さっきまでの表情が、嘘みたいに消える。


 私から視線が外れる。


 もう一度こちらを見ることはなく、そのまま会話に入っていく。


 ――戻ってしまった。


 さっきの“引っかかり”は、もうどこにもないみたいに。


(……やっぱり)


 私は小さく息を吐く。


 分かっていたことだ。


 名前は出てこない。


 記憶は、残らない。


 それでも。


 ほんの一瞬でも、“気づきかけた”ことが。


 どうしようもなく、嬉しくて。


(少しずつ、近づいてる)


 そう思ってしまう自分がいる。


 危うい期待だと分かっていても。


 それでも、手放せない。


 私は静かに席に座り、ノートを開く。


 視線は落としたまま。


 けれど、意識だけが、どうしても神代のほうへ向いてしまう。


 ――さっきの一瞬を、何度も思い返しながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ