68話
翌日。昼。
チャイムが鳴る。
扉を開けると――
「邪魔する」
レイカだった。
「来たか」
「少し時間をもらう」
その声は、いつもより少しだけ低い。
中に通す。リビング。
全員いる。
ユイも来ていた。
「こんにちは!」
「……コンニチハ」
軽い挨拶。
だがレイカは座ると、すぐに本題に入った。
「単刀直入に聞く」
空気が変わる。
ユイもそれを感じて、少し静かになる。
レイカは真っ直ぐこちらを見る。
「お前」
数秒の間。
「三年前、ダンジョンで消えただろ」
完全に核心。静寂。
ユイが一瞬固まる。
「……え?」
小さく声が漏れる。だが、誰もそちらを見ない。
視線は全て俺に向いている。
少しだけ間。
そして。
「……ああ」
否定はしない。
その一言で、空気が一段重くなる。
レイカが続ける。
「その後、どうした」
逃がさない質問だが、俺は特に隠さない。
「別の場所にいた」
「……別の場所」
レイカが繰り返す。
ユイが完全に混乱している。
「え、ちょっと待ってください……?」
だが話は進む。レイカがさらに踏み込む。
「どこだ」
短く。鋭く。
俺は少しだけ考える。
そして答える。
「この世界じゃない場所だ」
沈黙。完全な沈黙。
ユイの思考が止まる。
「……は?」
レイカだけは、動じない。
むしろ納得したように目を細める。
「……やはりな」
小さく呟く。そして視線を横へ。
相棒とシエルを見る。
「お前たちは」
その問い。相棒が口を開く。
「この世界の人間ではない」
はっきりと言う。
シエルも続く。
「……元々、違ウ」
日本語でゆっくりと。
ユイが完全に固まる。
「……え?」
「え?」
理解が追いついていない。
レイカが小さく息を吐く。
「……なるほどな」
「全部繋がる」
言葉。魔法。戦い方。
全ての違和感が、一つにまとまる。
「お前だけが戻ってきた」
「そういうことか」
「ああ」
俺が短く答える。
ユイがようやく声を出す。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「え、どういうことですか!?」
当然の反応。
だが――レイカは手で軽く制する。
「落ち着け」
「今整理する」
そして、再びこちらを見る。
「三年前、ダンジョンで消えた」
「別の世界に行った」
「そこでこいつらと出会った」
「……違うか?」
ほぼ正解。俺は短く言う。
「そんなところだ」
「雑だな」
「細かく話す気はない」
「だろうな」
レイカが小さく笑う。だがその目は真剣だ。
「だが、十分だ」
ユイがまだ混乱している。
「え、えっと……」
「異世界……ってことですか……?」
小さく呟く。シエルがゆっくり言う。
「……近イ」
「完全ニ、同ジデハナイ」
だが、ニュアンスは伝わる。
ユイが頭を押さえる。
「……マジですか」
現実感が追いついていない。
レイカはその様子を一瞥し、立ち上がらない。
そのまま座る。
「……いいだろう」
ぽつりと言う。
「何がだ」
「お前らのことだ」
少しだけ笑う。
「気に入った」
「は?」
「この世界の外を知ってる人間なんて、そうはいない」
「敵に回すより、味方にした方がいい」
はっきりとした意思。
相棒が小さく呟く。
「『合理的じゃな』」
「『ああ』」
レイカがそれを聞きながら言う。
「その言葉も含めてな」
「全部納得だ」
そして、背もたれに寄りかかる。
「今日は帰らない」
「は?」
「まだ聞きたいことがある」
完全に居座る気だ。ユイが慌てる。
「え、え、ちょっと待ってください私まだ理解――」
「お前もそのうち慣れる」
「無理です!」
騒がしくなる。
だが――空気はもう重くない。
むしろらどこか、開けた感じがあった。
隠していたものが、表に出たからだ。
レイカはそのまま言う。
「続きを聞くぞ」
「覚悟しろ」
「面倒だな」
「今さらだ」
小さく笑う。
そして――次の話へと進んでいく。
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