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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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6/12

6話

予約投稿してますが、予約時間は適当です。

 東京ダンジョンの入り口を抜けた瞬間、空気が変わった。


地下の湿った冷気とは違う、乾いた夜風。ネオンの光と、コンクリートの匂い。

そして、それを覆い隠すように並んだ人影。


「……あー」


俺は思わず声を漏らした。


ゲート前の広場を半円状に囲むように、黒いスーツ、ギルドの制服、管理局の腕章。

数はざっと見ただけでも二十人以上。

銃口こそ向けられていないが、全員がこちらを対象として見ている。


「やっぱりこうなるよな」


「暇な奴らなのじゃ」


隣で相方が、心底どうでもよさそうに呟いた。

相変わらず和服姿で、刀を腰に差したまま。

さっきまで40階層を蹂躙していた張本人とは思えないほど、落ち着き払っている。


「え、え……?」


護衛してきた配信者の女の子。

白瀬ユイは、遅れて状況を理解したらしく、目を見開いた。


「し、白瀬ユイさんですね」


一歩前に出てきたのは、管理局の職員らしき男だった。

年齢は三十代半ば。声は丁寧だが、目は笑っていない。


「東京ダンジョン40階層での遭遇事故、ならびに不審な戦闘ログについて、少しお話を――」


「妾たちが助けただけじゃ。質問があるなら、妾たちにせよ」


「……その、そちらのお二人のお名前と所属を」


俺は肩をすくめた。


「所属? ないな。フリーだ」


「では、冒険者登録番号を」


「持ってない」


一瞬、空気が凍った。


管理局の男が、ゆっくりと息を吸う。


「……未登録で、40階層に?」


「今日が初めてだし」


ざわ、と周囲が小さく揺れた。

信じられない、というより信じたくないという反応だ。


「東京ダンジョンは初だそうじゃ」


相方が楽しそうに付け足す。

悪気はない。たぶん。


「……危険行為です」


「結果的に全員無事だろ?」


「それは――」


「なら問題ない」


短いやり取り。だが、その裏で視線が交錯し、無言の情報交換が行われているのが分かる。


――こいつら、どう扱う?


――強すぎる。


――敵対したら被害が出る。


――でも放置もできない。


「なあ」


俺は、白瀬ユイの方を見た。


「もう帰っていいぞ。今日は十分だろ」


「は、はい……! 本当に、ありがとうございました!」


彼女は何度も頭を下げ、そそくさと人混みの向こうへ消えていった。

それを止める者はいない。


残ったのは、俺たちと、囲む視線。


「……さて」


俺は短くそう呟き、魔力を展開した。


足元に魔法陣が広がり、視界が白に反転する。

管理局の視線も、ざわめきも、その場の空気ごと切り捨てるように、身体が引き抜かれた。


次の瞬間。


見慣れた天井と、静まり返った部屋。


「ただいま、じゃな」


相方が、まるで散歩から帰ってきたかのように言う。


「……疲れた」


俺は靴を脱ぎ、そのままソファに倒れ込んだ。

東京ダンジョン初挑戦。

三十階層を越え、四十階層付近で配信者を救助。

未登録で囲まれ、即帰宅。


冷静に考えると、やっていることが全部おかしい。


現実感を取り戻すため、俺はリモコンを手に取り、テレビの電源を入れた。


『――速報です。本日未明、東京ダンジョンにて異例の戦闘ログが観測されました』


画面に映ったのは、さっきまで俺たちが立っていた転移ゲート前の広場。


「……早いな」


『東京ダンジョンは、これまで三十階層付近まで比較的安全とされてきましたが――』


その言葉に、俺は小さく眉をひそめる。


「30階層、か」


初だったから分からなかったが、

あの温度差、あの軽装パーティ、配信者が平然と潜っていた理由。


全部、そこにあった。


『通常、三十階層以降は引き返すパーティも多く――』

『しかし今回、四十階層付近で本来想定されていない高危険度モンスターの出現が確認され――』


テロップが切り替わる。


 「東京ダンジョン 想定難易度を逸脱か」


「ほう」


相方が、楽しそうに画面を覗き込む。


「安全だと信じておった者たちには、悪い知らせじゃな」


「30階層までは大丈夫って空気だったもんな」


画面には専門家と名乗る人物が映り、解説を始める。


『本来、あのクラスのモンスターは――』

『熟練パーティが連携して対応するレベルであり――』


映し出される参考映像。


 俺たちが、護衛しながら片手間で倒してきた連中だ。


「……そんな扱いなのか」


「妾たちが基準を狂わせておるだけじゃ」


ニュースは続く。


『なお、当時現場に居合わせた配信者の映像が、各所で確認されており――』


俺は、わずかに嫌な予感を覚えた。


「……映像、残ってたか」


「配信しておったからのう」


相方は、どこか他人事のように言う。


画面の向こうでは、現場を取り囲んでいた管理局員や冒険者たちの様子がスローで流れていた。


――囲まれていた二人組は、顔にモザイクがかかっている。


「まだ、正体は割れておらんようじゃな」


「時間の問題だろ」


 東京ダンジョンは、三十階層までは安全という共通認識の上に成り立っていた。


それが今日、

誰にも止められない形で壊れた。


しかも原因不明。

未登録。

初見。


「なあ」


俺は天井を見上げたまま言った。


「これ、しばらく静かにしてても無理だよな」


「当然じゃろ」


相方は即答した。


「妾たちはもう、噂になった」


テレビの向こうで、キャスターが締めくくる。


『今後、東京ダンジョンの危険度再評価と、立ち入り制限の見直しが――』


俺は目を閉じた。


面倒なことになった。


だが同時に、思ってしまう。


三十階層で止まる理由がなくなった東京ダンジョン。四十階層で、あれだ。


「……なあ」


俺は隣を見る。


「次、行くなら」


「うむ」


相方が、楽しそうに笑った。


「今度は、もっと下じゃな」


東京ダンジョンは、もう安全じゃない。

それを証明したのは、他でもない俺たちだった。

…一章どう終わらせようか

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