表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第4話 村人は知りませんが、だいたい事故です

よく晴れた、気持ちのいい午後のこと。


「フレアちゃん、いるかしらー?」


近所に住む村人の女性が、家の前までやってきた。


「フレア様なら、先ほどまであちらで……」

そう言いかけて、アリエスは言葉を止める。

さっきまで確かにそこにいたはずなのに、姿が見当たらない。


「フレアちゃん、色んな人に頼られてるから忙しいでしょう?

でもね、ちょっとお願いがあって……」


申し訳なさそうに言う女性に、アリエスは別の意味で申し訳なさそうな顔になる。


(フレア様、さっきまでフェイスパックしながら昼寝してたのに……。

もしかして、何か察して隠れてる?)


「フレア様ー?どこですかー?」


すると、どこからともなく――


「はいはーい、おまたせー♪」


パタパタと、完璧に身支度を整えたフレアが現れた。


(……やっぱり)


「あら、フレアちゃん。忙しいのにごめんなさいねぇ」


「いえいえー!ちょうど今、前の仕事が片付いたところでしてー」

オホホホ、と大げさに笑うフレア。


(大嘘つき……)


「最近、雨が少ないでしょう?

畑の作物の育ちが良くなくてね。

ちょっと見てもらえたらと思って」


「なるほど!急ぎの用事もありませんし、さっそく行きましょう!」


にっこり笑って答えるフレア。

アリエスは慌てて後を追う。


「フレア様、私も行きます!」

(嫌な予感しかしない……)



畑に着くと、女性のご主人が困った顔で待っていた。


「悪いね、フレアちゃん。わざわざ来てもらって」


「いえいえ!いくらでも呼んでください!」


「さすがフレアちゃん。頼りになるねぇ」


夫婦の称賛を、複雑な気持ちで見つめるアリエス。


(何も起きませんように……)


フレアは土と作物の様子を確かめると、静かに目を閉じ、魔法の言葉を紡ぐ。

畑が柔らかな光に包まれ、地下水が巡り、やさしい雨が降り注いだ。


「……わぁ」


「葉っぱの色が、全然違うわ!」


(やっぱり、普通にすごいんだよなぁ……)


「ありがとうねぇ。お礼に中でお茶でも飲んでいって」


「ありがとうございます。もう少しだけ様子を見てから伺いますね」


夫婦は安心した様子で家へ戻っていった。



「喜んでもらえて良かったですね、フレア様!」


「そうね。でも、どうせならもう一段階……」


目を輝かせ、フレアは杖をくるりと回す。


「ちょっ、フレア様!?

今が一番いい状態ですから!これ以上は――」


「大丈夫、大丈夫♪」


止める間もなく、杖が振り下ろされた瞬間――


ザバーーーーーン!!


「っ!?」


(やっちゃったーーーーーー!!!)


雨、というより豪雨が畑を襲う。


「フレア様ーー!!

だから言ったじゃないですか!!

泥沼になってます!!」


「落ち着きなさい、アリエス!

これをこうして、あれを――」


その時、家から夫婦が慌てて戻ってきた。


「フレアちゃん!今の音、大丈夫!?」


(ああああ……)


だが。


「あら……?」


畑は、何事もなかったかのように元通りだった。

……見た目だけは。


「だ、大丈夫なのかしら……?」


「えぇ!土壌を改良しましたので、栄養もばっちりです!」


「まぁ!さすがフレアちゃん!」


(……本当に?)



数日後。


「フレアちゃん!!いるかしら!?」


例の女性が、息を切らしてやってきた。


「フレア様!どうするんです!?

絶対怒ってますって!!」


「……私はいない。いないことにして」


「卑怯です!!」


「あ!アリエスちゃん!フレアちゃんいるわよね?」


フレアに代わり謝ろうとした、その時――


「すごいの!大豊作よ!フレアちゃんのおかげ!」


「でしょー?予定通り♪」


どこからともなく現れるフレア。

後ろから、ご主人が野菜と果物を抱えてやってきた。




「いやー、さすが私♪」


「……いやいやいや!

今回は結果オーライなだけですからね!!」


「まぁまぁ、細かいことは気にしない気にしない」


収穫物を抱えてホクホク顔のフレアを、アリエスは安堵と呆れの混じった目で見つめる。


(やっぱり……ポンコツなのかも)


こうして今日も、騒がしく平和な一日が過ぎていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ