プロローグ
世界中にその名を轟かせた勇者パーティ
『エテルネル・リアン』
「勇者エリオット」の名を知らないものはこの世にいない。
彼の率いたパーティは、小さな村出身の幼なじみで結成され、少しづつ、そして着実にその名を広めていった。
彼らは、魔王軍との戦いの末…
遂に、魔王「ルーパス・アシェット」を討ち取った………
わけではなく、魔王と勇者の友好平和条約を締結したのである。
何を隠そう、このパーティ、戦闘は大嫌い、平和にいきましょう!がモットーなのである。
つまるところ、”戦い“というのも、剣術やら魔法やらで攻撃するのではなく、平和的に話し合いを重ねて解決していく。
「私、勇者をさせて頂いております、エリオット・ミハエルと申します。
この度はお忙しい中、ありがとうございます」
サラリーマンの名刺交換なるものから始まる、魔王軍との会合を数々こなし、各地での問題を解決してきた。
そしてこの度、遂に魔王城にて、魔王ルーパスとの会談が実現したのである。
「それで、我が軍との共生を望むと、そういうわけですか」
「ええ、どうでしょうか?そちらにも、悪い話ではないと思うのですが…」
「貴殿たちが各地で我が軍との諍いを無事に解決してきたという話は私の耳にも入っております。それも、一滴の血も流さない戦いであったと…」
エリオットはここぞとばかりに胸を張り得意気に答える。
「えぇ!私たちパーティのモットーですから!」
「甘い!何と甘すぎる考えか!
仮にもお主は勇者であろあうが!ここで戦わずしてどこで戦うというのだ。もう目の前に敵軍の首があると言うのに。皆がみな、その考えを尊重するわけではなかろうが!」
“自称”勇者、エリオット・ミハエルは各地でもこのような事を言われてきた。
中には、『腑抜けのパーティ』と言われたこともある。
それでも、エリオット達は信念を曲げずにやってきた。
勇者というのは、自らの命をかけても、その国の民を守るもの。
それは分かっているのだ。
けれど、自分のような考えの勇者がいても良いのではないか。
腑抜けの平和主義者、大いに結構。
それで民が守れるのなら。人であろうが、魔族であろうが、一滴の血も流れず終われるのなら、それでいいじゃないか。
今の今まで、そう思っていた。
いや、今後もこの考えは変わらないだろう。
しかし、まさかの敵軍の大将から説教をくらうとは。
よもや、会談は失敗に終わるかと思われたその時ー。
「がはははは!
何と愉快な。今まで幾度となく血気盛んな勇者のパーティが我ら魔王軍の首を狙ってやってきたが、お主らのような考えのパーティは初めてだ!
良かろう、その友好条約とやら、調印しようではないか」
かくして、人間と魔族との間に永遠の平和が約束されたのである。
***
「…で、先程から何をされてるのです?」
広々とした庭の中心で一心不乱に杖を振る女性。
「だからぁ、どうしたら効率良く水やりが出来るか、実験してるんだって」
彼女の名は「フレア・エバネス」
勇者パーティ『エテルネル・リアン』のメンバーで、唯一の魔法使い。
輝くような金髪を風に靡かせた、30代とは思えぬ美貌。
所謂、美魔女というやつである。
「いや、普通に水やりすればいいのでは?」
「いやいやいや、私一応、魔法使いよ?
普通にやったんじゃ、面白くないじゃない」
「水やりに面白いもクソもないでしょー」
「あら、じゃあアリエス、あなた私もよりも効率よくやる方法があって??」
ほっぺたをツンツンされている、彼女。
フレアの周りを飛び回り、小さな攻撃から逃れようとする、妖精の「アリエス」はフレアの従者のような、使い魔のような、友人のような、ツッコミ役のような、そんな存在。
これは、世界を騒がせた勇者とその仲間たちの冒険譚!
…などでは決してなく、パーティメンバーのフレアと、アリエスの日常の話。
しかも、アリエスがメインなのである。




