表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/137

67 水路建設

 水路の水が揺らいでいる。


 風もないのに、微妙に波立ち、どこか落ち着かない様子だ。いや、落ち着かないのは俺の方なのかもしれない。何しろ、俺たちはつい昨日、この水路を完成させたばかりなのだ。ついに村にも上水道が整備され、水不足ともおさらば! という気分でいたのに、まさか「水が生きている」などという奇怪な現象に遭遇するとは思ってもみなかった。


 「……なんか、おかしくない?」


 そう言ったのはセリアだった。


 彼女は水面をじっと睨みつけながら、微妙に眉をひそめている。俺が相槌を打つ前に、ルナがぴょこぴょこと近づいていき、恐る恐る水に手を突っ込んだ。


 「……ぬるっ」


 即座に手を引っ込め、耳をびくんと跳ねさせる。


 「えっ、なにこれ! ただの水じゃない!」


 「水の化け物なのですか!?」


 レイヴィアが興奮して身を乗り出す。人魚だからか、こういう場面でやたらとテンションが高い。いや、別に興奮するのは構わないのだが、水の異変が気になるなら水から離れたほうがいいのではないか。


 俺も試しに水に手を突っ込んでみた。


 ぬるり。


 妙な感触だった。冷たくもなく、温かくもなく、明らかに水とは違う、何かの気配を感じる。まるで、俺の手にまとわりつこうとしているような……。


 「……なんかいるな」


 俺がそう呟くと、セリアが腕を組んで難しそうな顔をする。


 「……別に気のせいってこともあるけど」


 そう言いながらも、ちらりと俺の顔を見る。


 「でも、あんたが言うなら、ちゃんと調べてみるべきかもね」


 相変わらずそっけない口調だが、どこか気にしているような雰囲気がある。……まあ、気のせいだろう。


 とにかく、この透明な何かを捕獲してみることにした。


 俺たちは木の桶を持ってきて、水をすくい上げた。見た目はただの水だ。だが、光の角度を変えてよく見ると、水の一部が不自然に揺れている。水とは思えない質量を持ち、明らかに何かがそこにいる。


 「……これ、やっぱり生き物よね?」


 ルナが眉をひそめる。


 「試しに、濁った水に入れてみるか」


 俺は別の桶に川の底の泥水を汲み、その中にこの透明な生物を入れてみた。


 すると――


 「……うわ、すごい!」


 水がみるみるうちに澄んでいく。


 「これは……水を浄化する生物なのです!」


 レイヴィアが感動したように両手を握る。


 セリアは腕を組んだまま、桶の水をじっと見つめる。


 「……水の流れに擬態する能力があるみたいね。それに、周囲の不純物を吸収してる」


 「つまり、こいつらを水路に放っておけば、勝手に水を綺麗にしてくれるってことか?」


 俺の言葉に、セリアは少し考え込んだ後、小さく頷いた。


 「……まあ、その可能性は高いわね」


 「それなら、こいつらを水路に定住させれば、村の水はずっと綺麗なままなのです!」


 レイヴィアが勢いよく言うと、ルナも楽しそうに耳を揺らす。


 「えへへ、なんだか水の精霊みたい!」


 「名前をつけたほうがいいのです!」


 「おい待て、勝手に命名するな」


 俺が止めるも、ルナとレイヴィアはすでに何か考え始めていた。


 セリアはそんな二人を横目で見ながら、小さくため息をついた。


 「……まあ、悪くないんじゃない?」


 その声はどこか機嫌がよさそうだった。


 こうして俺たちは、偶然にも完璧な水の浄化システムを手に入れたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ