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25 気候の変化

 それは、空の色が変わったことから始まった。


 俺は朝起きて、いつものように畑を見回り、ウサギ(仮)の世話をし、川の水を汲みに行こうとして、異変に気づいた。


 空が、紫色になっている。


 どこかの幻想画のような、不気味なまでに鮮やかな紫色が、空一面に広がっていた。まるで世界のカラーバランスが狂ったような違和感がある。


 「おいおい……今日は一体何が起こるんだ?」


 異世界に来てからというもの、俺はこの手の異変には慣れつつある。だが、それでも「紫の空」は初めてだった。


 そして、次の瞬間──雨が降り始めた。


 最初の一滴が肩に当たる。冷たくもなく、温かくもない、妙にしっとりした感触。普通の雨とはどこか違う。


 「……まあ、雨くらい降るよな」


 俺は特に気にせず、小屋へ戻ろうとした。だが、その途中で異変が起こった。


 ──ポツッ、ポツッ。


 雨が当たった地面から、何かが芽吹いている。


 「……え?」


 それは、見間違いではなかった。雨粒が落ちた場所から、細かい芽が次々と顔を出している。通常なら、植物が発芽するには時間がかかる。だが、この雨は違う。


 降り始めて数分も経たないうちに、小屋の周囲の地面が緑に覆われていく。


 「……やばいな、これ」


 俺は慌てて小屋へ駆け込んだ。そして、屋根に落ちた雨を観察する。すると──


 木材の表面に苔のようなものが広がっている。


 「まさか、この雨……触れたものに植物を発生させるのか?」


 試しに、手のひらに一滴落としてみた。


 ──じわっ。


 「おいおいおい!?!?」


 手の甲に、うっすらと緑色の細かな毛のようなものが生えてきた。


 俺は慌てて水で洗い流し、なんとか事なきを得た。だが、確信した。


 この雨は、普通の雨ではない。


 降り続ければ、俺の小屋はすぐに「植物の塊」になってしまう。下手をすれば、住居が丸ごと森の一部になってしまう可能性すらある。


 「……対策しないとまずいな」


 俺は屋根を見上げ、考える。この雨を防ぐには、「水を完全に弾く素材」を使うしかない。だが、この世界の木材は雨を吸収しやすく、ただの葉や布ではすぐに劣化してしまう。


 「何か、適した素材はないか……?」


 俺は周囲を探索し、以前発見した鉱石を思い出した。


 「水を寄せつけない黒い鉱石」


 川の近くで拾ったこの鉱石は、不思議な性質を持っていた。水をかけても、まるで油のように弾くのだ。


 「こいつを屋根に使えば……」


 俺はすぐに作業を開始した。


 まず、黒い鉱石を砕き、粉末状にする。それを粘土と混ぜ、薄く延ばして天日干しする。すると、水を弾く性質を持った防水タイルが完成した。


 次に、それを屋根全体に敷き詰め、雨を完全に遮断する構造にする。


 そして、ついに実験の時が来た。


 翌日も雨が降った。だが、俺の小屋だけは緑に覆われることがなかった。


 水を弾く鉱石を使ったことで、屋根の表面には雨粒が溜まらず、すぐに滑り落ちていく。おかげで、小屋の内部には一切の異変がない。


 「……よし、大成功だ!」


 この雨季を乗り越えられるのなら、俺の異世界生活はさらに安定する。


 だが、この不思議な雨の正体は、まだ解明されていない。


 この世界には、まだまだ未知の現象が潜んでいる──。

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