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24 家畜の飼育

 俺は今、一匹のウサギと向き合っている。


 いや、厳密には六本足のウサギのような生物と向き合っている。


 「お前、なんでそんな目で俺を見てるんだ……?」


 ウサギ(仮)はじっと俺を見上げている。耳がぴくぴく動き、鼻がひくつく。後ろのはずの二本は安定した姿勢を保っているが、前足にあたる四本は微妙に緊張している。まるで、俺が何をするのか見極めようとしているような……。


 ──この世界に来て以来、俺はこいつらを「狩る側」として見てきた。六本足のウサギ(仮)は栄養価も高く、肉も柔らかい。捕まえるのは少し難しいが、安定した食料源としては申し分ない存在だった。


 だが最近、ふと思ったのだ。


 「こいつらを家畜化できないか?」


 狩りを続けるだけでは、いつか獲物は尽きる。ならば、飼育し、繁殖させることで食料を安定供給できるようにする。これは人類の歴史が証明してきた知恵だ。


 そう考えた俺は、生け捕りにした数匹を囲いに入れ、飼い慣らすことにした。


 しかし、こいつらは想像以上に賢かった。


 まず、柵を越えて逃げる。


 そこで柵を高くしてみた。すると、今度は地面を掘って逃げた。


 仕方なく、床に石を敷き詰め、完全に脱走を防いだ。


 すると次は、食べ物を選り好みするという贅沢を始めた。普通の葉っぱや草は食べず、特定の果実や、俺が栽培している作物の若芽ばかりを好む。しかも、その果実が不足すると、途端に動きが鈍くなる。


 「なるほど……お前ら、ただのウサギじゃないな?」


 こいつらは「環境によって変化する」可能性がある。つまり、何かの条件を満たすことで、次の段階へと進むのではないか?


 その仮説を検証するため、俺はある実験を始めた。


 ① 特定の果実を一定期間与える

 ② ストレスのない環境を整える

 ③ 仲間と共に過ごさせる


 こうした条件のもと、数週間が経過した。すると──


 異変が起きた。


 ある朝、囲いの中にいたウサギ(仮)のうち、一匹の体色が変わっていた。


 「……白くなってる?」


 元々は茶色だった毛並みが、白銀に変わっている。それだけではない。目が淡い青に輝き、動きに妙な落ち着きが生まれていた。そして何より……


 鳴き声が変わった。


 「……キュイ?」


 単なる鳴き声ではない。抑揚があり、まるで何かを伝えようとしているような声だ。


 俺は息をのんだ。


 「……進化?」


 この世界の動物は、一定の条件を満たすと、別の存在へと変化するのか?


 俺は興味津々で、変化した個体を観察した。行動も明らかに違う。他の個体よりも知能が高いのか、俺の動きをよく見て、判断しようとしている節がある。手を伸ばすと、躊躇いながらも鼻を近づけてきた。以前の警戒心は薄れている。


 「お前、本当に賢くなったのか?」


 試しに、木の枝を投げてみる。すると、ウサギ(仮)は一瞬だけそれを見つめ、次の瞬間──


 跳ねて、枝を拾い、俺の足元に戻してきた。


 「……マジかよ」


 これはただの動物ではない。ある種の知能を持ち始めている。


 進化とは何か? 環境による適応なのか? それとも、この異世界特有の「何か」が作用しているのか?


 だとすれば、こいつらを育成することで、さらに別の段階へ進化する可能性はあるのか?


 俺は、慎重に観察を続けることにした。


 この異世界の生態系には、まだまだ未知の謎が眠っている──。

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