表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/137

23 農業の進化

 俺は、じっと水たまりを睨んでいた。


 ──流れない。


 いや、それどころか、ほんのわずかに「逆流」しているではないか。


 おかしい。


 俺は水路を掘った。川から畑へと水を引くため、精魂込めて土を掘り、傾斜を計算し、水が自然に流れるようにした。理論上は完璧だった。なのに、流れないどころか、ささやかな水たまりが「ゆらっ」と揺れて、川の方向へと引き戻されていく。


 「これは……どういうことだ?」


 地面を掘りすぎたせいか? いや、そんな単純な話ではない。水は重力に従うものだ。それが逆行するというのは、何かしら異常な力が働いている証拠だ。


 俺は、何度も確かめた。掘った水路の傾斜を見直し、水を撒いて観察し、川と畑の位置関係を再確認する。だが、どう見ても「水は川へと戻ろうとしている」。まるで何かに吸い寄せられるように。


 「まさか……」


 俺は、ある可能性に思い至った。


 ──この土地には、目に見えない「流れ」があるのではないか?


 水の流れではない。空気の流れでもない。もっと根本的な、何か別の「力」の流れが、この地面の下を巡っているのではないか?


 俺はさっそく、実験を始めた。


 まず、適当な穴を掘り、そこに水を注いでみる。そして、じっと待つ。


 水は、まるで生き物のように揺らぎ、次の瞬間──スッと、ありえない方向へと動いた。


 「やっぱり……」


 どうやら、この土地には「地脈」のようなものが流れているらしい。まるで川の流れのように、大地の下を何かしらのエネルギーが走っているのだ。そして、俺が掘った水路は、それに逆らう形になっていた。


 つまり、今のままでは絶対に水は流れない。


 「じゃあ、どうする……?」


 俺は考えた。地脈に従って水路を作り直すか? いや、それでは俺が使いたい方向へ水を引けない。地脈の流れを操作する方法を見つけるべきだ。


 ならば、地脈を「変える」ことはできないか?


 そんなことを考えながら、俺は川辺を歩いていた。すると、足元に妙な石が転がっているのに気がつく。


 青白く、わずかに光る鉱石。


 俺は何気なく、それを手に取った。すると──


 「……ん?」


 指先に伝わる、かすかな振動。


 ただの石ではない。何かしらの力を帯びている。


 試しに、その石を掘った水路に並べてみる。そして、もう一度水を流してみると──


 水の動きが、変わった。


 「これは……!」


 たった数個の鉱石を置いただけで、さっきまで逆流していた水が、今度はスムーズに流れていく。まるで「見えない壁」があったのを押し広げたように。


 つまり、この鉱石をうまく配置すれば、地脈の流れを調整し、水の流れを制御できるのではないか?


 俺はさっそく、大量の鉱石を集め、水路の周囲に埋め込んだ。そして、再び水を流す──


 結果は、完璧だった。


 水は、俺が意図した通りの方向へと流れ始め、畑へと届く。もう逆流することはない。


 「やった……!」


 俺は興奮を抑えながら、もう一度水路を眺めた。水は、まるで導かれるように流れ、畑を潤していく。


 「地脈を利用して、水を制御する鉱石か……」


 この発見は、単なる水路の完成にとどまらない。もしこの鉱石を応用すれば、他の場所でも「流れ」を操作できるかもしれない。川の流れを変えたり、風を操ったり、あるいは……もっととんでもないことができる可能性すらある。


 「異世界、やっぱり奥が深いな……」


 俺は畑を潤す水を眺めながら、新たな可能性に思いを馳せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ