28話 リリア
門の上に立っている「誰か」は門から飛び降り華麗に着地した。剣を構える。
「誰だ」
「私?そうだなぁ~、リリアっていうの。リリィって呼んでね❤」
その女は少女のような容姿をしておりどこか嗜虐的な笑みを浮かべている。
「ハルト君」
急な君呼びに驚いたがすぐに平常心になる。ソフィアが俺の袖を掴んでいる。不安なのだろうか。まぁ、生粋の箱入り娘だったろうからな。
「大丈夫だよ」
ソフィアの頭をなでてやる。少し頬を赤くしていた。
「ねぇ~、せっかく名乗ってあげたのに無視するの~?リリィ傷ついちゃう」
まじで何なんだこいつ。ぶりっ子じゃねぇか。
「で?何の用だよ」
睨みながら問う。
「睨まないでよ~、怖いなぁ。まぁいいや。なんでこの国がこうなっちゃったのかわかる?」
「さぁな、知らん」
「だと思ったから私が教えてあげる。この国をゾンビだらけにしたのは私」
こいつのせいなのか。てっきりレイグルたちのせいかと思ってた。ん?ゾンビっていったか?
「なんでこんなことをしたのですか!あなたのせいでどれほどの人が亡くなったと思っているのですか!」
ソフィアが目に涙を浮かばせながら叫ぶ。
「うっさいな~。まぁ、面白そうだったからしただけだよ?」
「ふざけないでください!」
【ファイヤーアロー】
ソフィアの手に炎の弓矢が具現化される。ソフィアは弦を引きリリアに向かって矢を放つ。
リリアは腰にあった双剣を抜き炎の矢を斬る。
「無駄だよ。私の剣には魔術回路を断ち切る付呪がしてあるからね」
「なっ」
「ソフィアちゃんは下がってて。俺がやる」
最近魔術を使ってみて思ったことがある。炎属性は威力重視の魔術になる。「ハルトの場合」なら威力ではなくスピードを重視するなら?そこで思いついた属性がある。雷だ。
【雷竜】
剣に雷の竜が具現化されていく。
「なにそれ!?」
リリアは初めての魔術を目にして少し驚く。
「行くぞ!【一閃】」
俺はリリアに向かって一直線に飛び掛かる。自分でも驚くほど速度が出た。あっという間にリリアの前に来た。リリアに胸辺りに剣を叩き込む!
「!?」
ガイィン
リリアは双剣でガードする。だがハルトの速度の乗った剣に耐えきれずぶっ飛ばされる。
「きゃっ」
ドゴォン
外壁にぶち当たる、
「かはっ」
吐血する。痛いよ。視界が霞む。違うの私は・・・
「ぐすっ、うっ、うぇ~ん」
は?急に泣き出したリリアにハルトとソフィアは愕然とする。え?え?どゆこと?急な出来事に俺の頭は理解するのに時間を要した。
「ハルト君。一回話を聞いてみない?」
走って駆け寄ってきたソフィアがそう提案する。
「そ、そうだね」
泣き芸という可能性もゼロとは言えないので警戒しながら近づく。
「え~と、大丈夫?」
「ひぐっ、ぐす」
リリアは泣いている。
「お~い」
さらに近づく。リリアは顔を上げ
「近づかないで!殺さないで」
そう叫びながら後ずさる。
「ちょ、落ち着けって。殺さないから話をしないか?」
「本当に殺さない?」
上目づかいに俺は危なくトゥンクしそうになったがぎりぎりで踏みとどまる。
「あぁ、殺さないから」
手を差し伸べる。リリアは手を掴み立ち上がる。まじでなんなんだ・・・。
「で?この国をこんな風にしたのは君なの?」
「違う」
「でもさっき自分で言ってたじゃない」
「それは・・・」
「じゃああなたのせいではないんですね?」
ソフィアがリリアに優しく問う。
「う、うん。嘘ついてごめんなさい」
「嘘の限度を超えてるぞ・・・」
「てかさっきゾンビって言ったよな?」
「え?う、うん。言ったけどなに?」
「スマホってわかる?」
スマホという言葉を聞いたリリアは顔を上げ
「うん。でもなんであなたも知ってるの?」
「俺は日本から来たんだ」
「え?本当?」
「うん」
「私も」
やっぱりな。ゾンビという単語を知っていた時点で少し疑ってはいたがそうか、日本人か。
「同士だな」
手を差し伸べる。
「うん」
リリアは手を握り少し笑う。
「で、どうやってこっちに来たの?」
急な質問に戸惑っていたリリアだったが話してくれた。内容はこうだ。買い物の帰り道に突然ナイフで刺され病院に運ばれたものの死亡。死に方えぐすぎだろ・・・・。そのあとは真っ白な空間で目が覚め神に合って異世界に生まれ変わるか天国に行くかの選択をしてこっち「異世界」に来たようだ。そして転生ボーナス的なので魔術師殺しの双剣をもらったそうだ。
「そんな感じでこっちに来て旅の疲れを国で癒そうとしたらこうなってたの」
「そうか・・・。なかなか悲惨だな。それにしてもなんであんなぶりっ子みたいなこと言ってたんだ?」
「別にふりをしていたわけじゃないよ。思ってることをぶりっ子風に言ってるだけ」
「ふ~ん。ナチュラルのほうが可愛いと思うよ?」
「フぇ?あ、ありがと・・」
奇妙な声を上げたかと思うと顔を真っ赤にして顔を下に向けた。ソフィアもなぜか怒ったような顔をしていた。なんで?
「で、こっからどうする?」
「港町に行きませんか?」
ソフィアが提案する。港町か・・・、いいかもな。
「そうだね」
「じゃあひとまずの目的地は港町ですね!」
さっきまでのことを忘れたかのようにソフィアはワクワクした様子で言う。
「・・・・」
リリアは俺たちの話を聞きながら悲しそうな顔をしていた。
「お前も一緒にくる?」
「いいの?」
「あぁ、それに同じ出身地の奴がいると心強いしな」
「じゃあ一緒に行かせてもらいます」
「おう!」
そうして三人は港町へと足を向けるのであった。つけている者たちがいるとも知らずに・・・




