22話 感染者
俺は王女に案内されて城の中を歩いている。王女の護衛の騎士たちは途中でいなくなった。王女が帰らせたのだ。
「もうすぐです」
王女が歩きながら言う。今から王と会うんだよな。なんか緊張する。長い階段を歩き最上階まで上ると廊下があった。廊下の奥には扉が見える。おそらくあそこが王宮だろう。
「着きましたよ。準備はいいですか?」
「はい、大丈夫です」
いよいよだ。そして扉が開かれる。扉が開いた先には広い部屋があり奥行きが結構ある。王と思われる人物が玉座に座っている。玉座から入口の扉にかけて赤いシートが敷いてある道が出来ている。典型的な謁見場所って感じだ。その道を挟むように何人か護衛の兵や側近の物たちが立っている。
「ただいま帰りましたお父様」
礼儀正しくお辞儀をする。
「よく帰った。それで調査はどうだったのだ?」
結構かっこいいな。関わりたくはないけど・・・
「調査の結果森の中央付近に何者かが設置したであろう魔法陣がありました」
「魔法陣だと?」
「はい。魔法陣を調査していると急に魔法陣が発動し魔物が出てきて襲われました。おそらく召喚系の魔法陣だと思われます」
「魔法陣から魔物か・・・それで大丈夫だったのか?」
王が少し苦い表情になる。すぐに戻ったが。なんだ?さっきの顔。
「はい。何とかなりました。ハルト様が助けてくれたので」
ソフィアが俺に視線を向けそのあと王に視線を戻す。王がこちらを見る。
「貴様がハルトか?」
「はい。ご紹介にあずかりましたハルトです」
「我が娘を助けてもらったようだな」
「ま、まぁ」
頭を掻きながら答える。周りの人たちから睨まれている。なんで?
「褒美をやらんとな」
褒美か・・・なんも欲しいものねぇ。そうだ、王都の情報でも聞いてみるか。
「じゃあ情報をください」
「情報?」
俺を睨み気味に見る。怖ぇ~。早くここからでたい。
「王都についての情報がほしくて」
「王都?・・・リディアのことか?」
そういえば王都の名前聞いてなかったな。まぁあってるだろう。
「はい」
「リディアなら昨夜崩壊した」
「崩壊・・?」
崩壊?どういうことだ?俺がいない間に一体何が・・・クレアは無事なのか?ヴィンダーさんやミリカさんも・・・。一体どういうことなんだ。
「なにかの魔術でほろんだそうだ。たしか都市全体を吹き飛ばすほどの爆発で」
王が付け足してくれた。爆発・・・そうだとしていったい誰がそんなことを・・・。
「情報ありがとうございます」
「あぁ、褒美はこれでいいのか?」
「はい」
なら俺はもうここにいる必要はない。そして一度王都に行ってみよう。
「じゃあ俺はこれで」
俺は振り返り歩き出す。不意に腕をつかまれた。振り向くとソフィアだった。
「ソフィア?」
「ハルト様!まだ私のお礼がまだです」
叫ぶように言う。お礼?そういえば言ってたな。だが今はそんなことにかまっている時間はない。とにかくクレアの安否を確認したい。早く王都に・・・。腕を振り払う。
「ハルト様・・・」
ソフィアは泣きそうな顔をしていた。そんな顔をするなよ・・・。どうしろって言うんだ。
「キャアーーー」
悲鳴が聞こえた。下の階から聞こえてきた。
「なんだ?」
王が立ち上がり兵に様子を見てくるよう指示する。
「ハルト様」
不安なのか腕をつかんできた。普段の俺なら照れるぐらいはしていただろうが自分でも不思議なくらい何も感じない。
「うっ」
頭痛がした。「殺さないと・・・」。なんだ?この記憶。どこかで見覚えが・・・
「ハルト様!」
ソフィアが大声でしゃべりかけていた。
「大丈夫」
無理に笑いソフィアの頭をなでる。ギぃ~。不意に扉が開かれた。そこには首から血を流した兵がいた。王がさっき下の階に行かせた兵だ。
「おいその血は・・・いや、下の階はどうだった?」
・・・。兵からの返答はない。それに様子が変だ。兵が顔を上げる。
「あ、あぁ~」
不気味な声を漏らす。目の色が黒色になっている。いかにもゾンビって感じだ。
「ソフィアちゃん。俺の後ろに」
ソフィアをかばうように立つ。俺の急なちゃん呼びに驚かなかったようだ。
ギチギチ。妙な音を立てながら兵が挙動不審な動きを見せる。首がペ〇ルギ〇スのように180°傾けたり体を左右に激しく揺らしている。
【動体視力アップ、筋力増強】
小声で身体強化魔法をかける。念のためだ。
「あ、あぁ、あぁ~!」
兵が急に王に向かって走り出す。兵が王に襲い掛かる!飛び上がり王に向かって飛び掛かる。王の目の前まで接近しもうすぐで手が届くという距離でずっと玉座の隣に立っていた兵「強面」が襲い掛かってきた兵の手を斬り腹を蹴り吹っ飛ばす。
すごい。動体視力を上げている状態でも完全には捉えられなかった。
蹴とばされた兵、いやゾンビは壁に激しく打ち付けられる。手から血が出ている。
「ひっ」
ソフィアがおびえている。俺は警戒して剣を抜き構える。
ゾンビはすぐに立ち上がりまたもや挙動不審な動きをする。「ズっ」斬られたはずの手が生えた。そう、生えたのだ。俺は何が起こったのかすぐには理解できなかった。
「え?」
目が合う。俺は気を引き締める。【炎よ】剣に炎を纏わせる。やはり魔術の効果と見た目を想像して剣に想像した思考を送れば魔術が発動する。「剣に思考を送るイメージ」
「あぁ~!」
ゾンビが俺に向かって走り出す。さっきよりも速い。ここに立ったままでいると剣を振ったときにソフィアにあたりかねないので俺もゾンビに向かって走る!そしてゾンビが俺の間合いに入った。そして俺はゾンビの腕と足を片方ずつ斬りゾンビの後ろに躍り込み体を反転させ生じた遠心力でゾンビ胴を斬った。
びちゃびちゃ。気持ち悪い音を立てながら胴を真っ二つに切られたゾンビは地に落ちる。
「ヴぉえぇ~」
ソフィアが吐く。それが普通の反応だ。俺はというと、何も感じない。そう、何も。
「あ、あぁ~」
胴を斬られてもゾンビは生きていた。よくゾンビ映画では頭をつぶしているがこの場合でも・・・
ブスっ。剣に纏っていた炎が刺したゾンビの頭から体全体に広がっていく。そしてゾンビは燃え尽きた。
「うっ」
魔力を使い過ぎたせいかめまいがして膝をつく。まずいな、意識が・・・
バタン。俺は気を失った。




