20話 ミューゲルニア王国
「着きましたよ。ここが我が国ミューゲルニア王国です」
王女が俺の前に立ち礼儀正しいお辞儀をする。おぉ~。すごいな。中央に高くそびえたつ城がありその周りに家や建物が並んでいる。そして壁が王国を守るように囲んでいる。
「ではまず通過儀礼をしなくてはいけませんね。ハルト様冒険者カードか通過許可証はお持ちですか?」
ん?冒険者カード?通過許可証?なんだそれ。全くわからん。ここで「なんだそれは?」とか聞いたら馬鹿に見えるよな。まぁここでグダグダしててもしょうがないので聞くことにした。
「え~と、なんですかそれ」
人に聞く立場なのでさすがに敬語を使った。急に敬語になったので王女は少し驚いたような表情をしていたがすぐに答えてくれた。
「冒険者カードは冒険者ギルドに所属することによってもらえるカードのことです。通過許可証は王都に自由に出入りできるようになる証のことです。ちなみに通過許可証は門で買えます。ちなみにお金はもっていますか?」
「すいません、持ってないです」
申し訳なさそうに頭を掻きながら答える。
「いいです。ハルト様は命の恩人なので私の権限で許可します」
王女がほほ笑みながらそう言う。ありがてぇー。人助けもするもんだな。
「ありがとうございます」
「ではいきましょうか」
王女「騎士たちも」とともに城壁近くまで歩いていく。門のちかくまで来たら見張り兵であろう人が敬礼をし。
「王女様。ご無事でしたか!」
と声を張り上げる。
「ええ。あなた達もお疲れ様」
笑顔で手を振りながら答える。まだ子供「推測に過ぎない」なのにすごいな。さすがは一国の王女だな。
見張りの兵と目が合う。そして剣を向けられた。
「何者だ!」
警戒されているようだ。まぁ、この見た目だし。
「大丈夫です。この方は私の命の恩人ですので」
王女がかばってくれた。本当にいい子だなと思う。
「し、失礼しました。では通過許可証をお持ちですか?」
「この方は許可証をもっていないので私の権限で許可します」
「わかりました。ではお通りください」
敬礼をし道を開ける。そして俺たちは王都ミューゲルニアへと入った。中に入るとまず目に入ったのは商店街だ。中央に3メートルぐらいの道がありその道を挟むようにいろんな店が並んでいる。ザ・異世界。そんな感じだ。それにしてもほんとにすごいな。商店街だけあってにぎわっている。競りをしているところや食べ物を買う人もいれば武器をみて悩んでいる人もいる。ゲームの世界に入ったみたいだ。俺はあたりを目を輝かせて見る。
「ハルトさんはここに来るのは初めてなんですか?」
「はい」
「じゃあ私がエスコートしなくちゃですね」
王女がほほ笑みながら言う。可愛いーーー。俺は一人っ子だったからこういう子を妹にしたい。ま、現実はそう上手くいかないもんだけどな。
「お願いします」
「というかなぜ急に敬語になったのですか?」
それはそうだろうな。だってさっきまで敬語どころか不躾なことばっか言ってたからな。
「王女と聞いたらあとから怖気つきましたので」
「ふふ、面白い方ですねハルトさんは」
少し笑いこちらを見ながら言う。やばい、本格的に妹にしたい。なぜか騎士から物凄く睨まれたような気がした。まぁ、気のせいだろう。気にしても仕方ないので気にしないことにした。
「今はどこに向かっているんですか?」
「お城に向かってます」
城か、ここからでも見えるがかなりでかいな。ん?俺今からあそこに行くの?まじで?やばいなんか緊張してきた。俺なんかやらかして殺されねぇかな。そんな不安が頭をよぎる。そして王女と王国の話をしながら城に向かって歩く。王女から聞いたのだが王国内でも妙な事件が起こっているらしい。ある家の話なのだがあるとき妻が夫を起こしに部屋へ行ったらしい。だが夫はベットの上で死んでいたという。特に外傷はなく目立つ傷と言えば何かに噛まれた跡があるのだそうだ。おそらくネズミだろうと予測されているらしい。ここまででもかなり妙な事件なのだが本当に妙なのはここからだ。夫を火葬場へと運ぶ途中夫が急に妻にとびかかり妻の首元をかみちぎったという。そして夫は他の人にも襲い掛かり警備員が殺したとようだ。そして噛まれた妻を治療しようと人が近寄った「妻に」だが妻も同様近づいてきた人に嚙みつこうとしたらしい。妻もその場で殺されはしたもののこの事件は謎に包まれているらしい。俺はこの話を聞いて一番最初に思ったことは、いや、ゾンビやん。え?うそでしょ?異世界にまで来てゾンビなんかと会いたくないんですけど。嫌なんですけど。まぁ、その二人も殺されたことだし大丈夫だろ!俺はこの時盛大なフラグを立てたことを知るよしもなかった。なんだかんだで城に着いた。途中何回か人から怪しまれる目を向けられたり警備の兵から剣を向けられたりとちょっと大変だった。王女がかばってくれたのだが。
「着きましたね」
俺たちは今城の前にある巨大な門の前に立っている。ここにいるだけでも城のでかさが伺える。緊張してきた。俺の様子を悟ったのか王女が
「緊張しなくても大丈夫ですよ」
と言ってくれた。でも緊張するもんは緊張するんだな。ふぅ~。よし!落ち着いた。
「ありがとうございます。では、行きましょうか」
「そうですね」
俺たちは門をくぐった。門の先の橋を渡り少し歩くと槍をもっている兵が二人ほどまたもやでかい扉の端に立っていた。また警戒されなければいいけど・・・。兵がこちらに気づいた。
「ソフィア様。おかえりなさいませ」
敬礼をしながら言う。俺思うんだけど王族に向かって敬礼ってするんかな?なんか違う気もするけどまぁいいか。
ソフィアはニコッと笑い。そのまま扉へと歩いていく。槍を持っている兵が扉の上にある小さな塔に向かって手を上げなにか合図をした。そしたら扉が少しずつ開いていく。おぉー。すげぇな。
そして開いた扉を通る。その先にはまっすぐに通路が伸びておりその通路を挟むように花畑が広がっていた。きれいだな。思わず止まって見てしまう。そして城は塔みたいな建物が隣接して建っていてその中央に四角と言っていいかわからないがそんな形をした建物が建っている。典型的な城って感じだ。
「綺麗ですよね」
王女が止まっていた俺に声をかける。おっと、進まないとな。そして俺たちは歩き城の最後の扉まで来た。また武装をした兵が立っていた。
「おかえりなさいませ」
兵が敬礼をする。だからなぜ敬礼?いや、もしかしたら俺の価値観が間違っているのかもな。
「お父様はいる?」
「アルフレッド様なら王宮にいます」
「そうですか」
ソフィアが答える。
そして兵が合図をする。門が先ほどみたいに開きだす。さっきと同じ仕様のようだ。兵と目が合う。
「失礼ですがソフィア様、そちらはどちら様でしょうか」
「私達の命の恩人です。名はハルトと申すそうです」
王族が一般市民と変わらない青年にそんなへりくだった言い方をしてもいいのか?
「左様ですか」
納得してくれたかはわからないが少なくとも俺を今までの兵みたいに睨んではこない。そして扉が開ききる。その先には石造りの廊下が続いていた。
「では、行きましょうか」
ソフィアが歩いていく。ついて来いという意味だろう。そして俺は王女の背中を追いかけるようにして歩いて行った。




