マザーグース連れ去る
「まぁ、耳で聞いても分からんじゃろ。目で見て、肌で感じた方が早いからの。初めからそうするべきじゃったか。」
なにが?という言葉は、おばあさんの歌声のせいで飲み込んでしまった。
すてきー。
なにごと?
「マザーグースのおばあさん
散歩をしたくなったなら
あちこち空を翔けてゆく
綺麗なガチョウの背に乗って」
ハッと手を見ると、おばあさんに手を引かれていた。
「こっちじゃ」
どこかに連れて行かれそうになり、足を精一杯踏ん張った。
「ちょ、まっ、痛っ…、ババア!」
ほんの少し前まで、私の足の踏ん張りとおばあさんの引っ張る力は拮抗していた。
あの一言が良くなかったのかもしれない。
急にものすごい力で引っ張られ、容赦なく引きずられた。
「いったい!痛いってば、力強いなぁ!」
「ちゃんと説明するんじゃなかったっけ⁈」
抵抗虚しく、ズリズリと引きずられてしまった。
足痛い。
「マザーグースの住む家は
森の中の一軒家
一羽の梟ドアにいて
見張り役に励んでる 」
また歌いだした。このマイペースおばばめ。
あっという間にドアを開けたおばばは、私を外へと引きずり出した。
木、木、木、森…と自分のいる場所に混乱していると、「ホーホー」という声を耳にした。
横を見て、生唾をゴクリと飲み込んだ。
ギラギラとした目の梟が、一羽、たたずんでいた。
「マザーグースのおばあさん
散歩をしたくなったなら
あちこち空を翔けてゆく
綺麗なガチョウの背に乗って」
「また、なに歌って…」
「ガー、ガー」
気づくと、横に、人が乗れそうなくらい大きなガチョウがいた。
「うわっ‼︎でかっ!どっから出てきた、そういやいたなガチョウ!いや、でかいな!」
驚くべきことに、おばばはビッグなガチョウの背に乗った。
未だにおばばは私の手を握っている。
なぜ離さない、おばば。
嫌な予感に襲われたとき、おばばと目が合った。
おばばはニコッと微笑んだ。
「…おばば?…おばば⁈」
あの一言はちゃんと封印したのに、おばばは私を荷物のようにガチョウの背に乗せた。
「ババアなにする…⁈」
「じきわかるじゃろ」
「ちゃんと説明するって言ったじゃん⁈嘘つき‼︎」
「ガー、ガー!」
ささやかな抵抗をしていると、ガチョウが羽ばたいた。
「浮いてる…飛んでる…」
「ガー、ガー?」
呆然としていると、おばばは誇らしげに言った。
「すごいじゃろ!どこまでも飛んで行けるんじゃぞ!」
「地面遠い…遠い…死ぬ…」
「ガー!ガー!」
可哀想な私。
おばばのせいで気絶した。
読んでいただきありがとうございます。
楽しんでいただけましたら幸いです。
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三春 絃
・オババは害はあるけど悪意はないと思ってる。
・「お姉ちゃんに会いたい」
ガチョウ
・「女の子も乗るんだ。重量オーバー笑笑」
・優等生の性悪