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悪役令嬢シリーズ

悪役令嬢帝国〜あなたも断罪を受けたのかしら?よろしければ、我が国にいらっしゃいますか?

「君との婚約を破棄する!」


 婚約者の王子に、全く違う国で、ちょうど同日同時刻に婚約破棄されたリリアールとマリアナ。




「な、なんのことですか……?」


 気弱なリリアール。





「その女狐が悪いのよ!」


 強気なマリアナ。





 そんな2人は、同じ“ユカト王国”に国外追放され、出会い、共に暮らすことに。





 マリアナが2人の住む小屋を建て、リリアールは家事をする。そして、仲良く狩猟や採集、栽培をして自給自足していた。


 ある日、仲良くなった近所のおばあさんからこんな話を聞いたのだった。




「おんや、リリちゃんにマリアナちゃん。聞いたかい? この国の王子が婚約者を放り出して、平民の娘にお熱なんだって」




 その言葉を聞いた2人は、その浮気王子への断罪を決意した。そして、婚約破棄劇を中止させるために、すぐさま動いた。時にはスパイとなって潜入し、時には噂を聞き出し証拠を集め、偽造した招待状で卒業パーティーに潜入した。







「ミア。君との婚約を破棄して、」


「おやめなさい!」


「き、君たちは何者だ?」






 王子の婚約破棄を止めた2人は、図らずもそのまま王子の断罪を行なった。







「う、浮気者で、今まで支援してくれた婚約者一家を裏切り、し、しかも、国の財政に悪影響を与えるなんて……く、クズ王子でいらっしゃるんですね?」



 首を傾げながらリリアールがそう言うと、周囲は皆納得してしまった。



「な! 不敬だぞ!? 皆のもの。彼女らを捕えろ」




 そう叫ぶ王子を庇おうとする者は、国王も含めてその場には誰もいなかった。浮気相手の女性も、分が悪いとわかると逃げ出そうとしている。





「第1王子の王位継承権を剥奪し、第2王子を後継者と据えることとする。ミア嬢。よければ、第2王子と婚約し直してくれないだろうか?」


 国王がミアに頭を下げ、第2王子がミア嬢の前に跪く。


「ミア嬢。兄上の婚約者でいらっしゃるから、ずっと気持ちを抑えておりました。絶対に幸せにするので、私と結婚してくださいませんか?」








 それから、マリアナとリリアールの2人は各国で婚約破棄を止め続けた。


 2人の信奉者も現れらようになってきたところに、ミア嬢……いや、ミア王太子妃から2人への呼び出しがかかった。







「マリアナ様。リリアール様。あのときは、本当にありがとうございました。しっかりとお礼を申し上げることもできず……申し訳ございませんでしたわ」


「いえ、貴女が幸せなら、それでいいのよ!」


「お、王太子妃殿下からのお言葉……ありがたく……」






「父であるマッシュ公爵と相談して、お2人へのお礼を考えていたら、遅くなってしまいましたわ」



「そんなのいいのに!」



「あ、ありがとうございます……」





「元々、現王太子が次期王弟として治める予定だった領地をお2人にお渡しいたします。すでに各所の許可は取っていますわ。国王陛下も“あんな事態が起こったのに一番平和に事態を治めることができたのは、お二人のおかげだ。感謝している。賛成だ”とおっしゃっておられます。詳しくは、マッシュ公爵から説明しますね」



 ミア王太子妃の言葉を聞いて、マッシュ公爵が部屋に入ってきた。



「あのクソ王子……この義父がいて、よく浮気なんてしようと思えたわね」


 マリアナが思わずそう呟くのも納得なゴリゴリマッチョな公爵がにこやかに3人の元にやってくる。





「マリアナ嬢にリリアール嬢。娘とこの国を救ってくださり、ありがとうございます。元々現王太子が治める予定の地は、王都より南寄りのこちらの地域です」


 マッシュ侯爵が説明しながら指差す。


「リア地方と言いまして、狭いですが、豊かな地域です。こちらの地域をわが国の属国として独立させ、お好きなようにお二人に統治していただけたらと思います。統治の知識はお持ちでいらっしゃるでしょうから、問題ないでしょう。いかがでしょうか?」


 マリアナとリリアールは目で会話をする。


「ありがたく、受領いたしますわ」


「い、今、そちらの地域に住んでいる国民たちは、我が国の国民としていいのでしょうか? あと、税はどういたしますか……?」


「国民たちは今まで通り暮らしていくことができるのならば、問題ないと言っております。また、税収は一部こちらにも回していただきますが、基本的にはそちらで整備していただいて問題ありません」


「まぁ……太っ腹ですこと」


 マリアナが思わずそう呟くのも無理のない高待遇だ。何か裏があるのか、と訝しげに見つめると、マッシュ公爵が答えてくれた。


「お二方が各国のご令嬢をお救いになったことで、各国の権力者が感謝しています。そんなお二人を高待遇で囲い込むことができると、我が国としても外交上有利に進められる、という目論見がございます。また、お二人の作る国が発展しないはずがございません。そちらの投資とお考えください」


「ま、まぁ……そんなに期待していただき……恐縮ですわ」


 リリアールが答える。


「では、地域の名前からリア帝国にしますわ! 女帝は私たち2人ですわね?」


「わ、私もですか!?」


「えぇ。まぁ、1人は副帝のようにしてもいいと思うけど……貴女も私も思い描いていた理想の国があるでしょう? 今までの知識を活かして、実現させましょうよ!」


「是非、我が公爵家としても、後援させてください」


 マッシュ公爵からの後援も獲得して、2人は国づくりを始めた。






ーーーー


「今ここに、リア帝国が誕生しました。マリアナ帝とリリアール帝のお二人です」



 2人が挨拶すると、国民たちは拍手で迎えてくれた。人数にすると、1000人程度の国民だが、皆の表情は期待に溢れている。


「まず、国民の意見を問うために、国民投票を実施しますわ! あとは、生活の環境を整えるために下水道等を完備し、その後……」


 マリアナの語る国づくりのプランに、多くの来賓客が目を丸くする。人口の少ない国だからこそ実現できる部分もあるが、画期的な発案であったのだ。





「マリアナ帝。ご報告申し上げます。南方の国で、婚約破棄が行われるとの情報を入手いたしました」


「あら! 少し出てくるから、リリアールは国を頼むわ!」


「ま、任せてください!」





「お待ちなさい。その婚約破棄、本当にされる必要があるのは彼女でして?」


「な、何者だ!?」


「まぁ! かの有名な悪役令嬢帝国のマリアナ帝でいらっしゃるわよ!」


「私、ファンですの!」


 すっかり有名になったマリアナの登場に会場は沸く。


「そちらのご令嬢。よろしければ、我が国にお越しになって、共に国を盛り立ててくださらないこと?」


「マリアナ帝! 是非伺わせてくださいませ! 我が国の優秀な部下たちも連れて参りますわ!」


「お、おい!?」


「まぁ、ありがとう。では、共に参りましょうか?」









ーーーー


「リリアールめ……自分だけ幸せになりやがって……俺はユリを失ったんだぞ」


 リリアールの元婚約者マルス王子が、そう呟く。自分がユリを殺したがために、新たな婚約者も得られなくなっただけであるのに、逆恨みもいいところだ。


「許さない……」


 腐ってもまだ王子の地位にいたマルス王子は、リア帝国に向けて私兵を連れて向かうこととした。



「リア帝国皇帝陛下にお伝えしたいことがございます!」


 ユカト王国のマッシュ公爵家の使者が2人の元に駆け込んできた。


「何かございまして?」


 マリアナが問いかけると、慌てたように使者が伝える。


「リリアール帝の元婚約者であるマルス王子が挙兵しました。私兵を率いて向かっているのは、おそらくリア帝国という情報を掴んだため、マッシュ公爵からお伝えするように指示を受けました」


「まぁ……」


 驚くリリアールに対して、


「リリアールの元婚約者って本当にバカよね」


 そう言い放つマリアナ。


「各国が支援を申し込みに来るかと思いますが、ユカト王国も支援させていただきたいと、今議会を緊急で開いているところです。マッシュ公爵曰く、間違いなく支援ができるかということです」


「ありがたいお話ね?」


「あ、ありがとうございます……すみません、私のせいで……」


「リリアールのせいではないわ! バカ王子のせいよ! あと、バカ王子を王子のままにしていた国の責任ね?」




 その言葉の通り、リリアールの国はリア帝国に併合されることとなった。



「クソ息子! お前の責任だぞ!?」


「父上! 違います! リリアールが悪いのです!」


「そうよ、あなた! リリアールが悪いのよ!」


「王妃よ、リリアールも悪いかもしれんが、マルスも悪い。あぁ、私の国が……」









「マリアナ帝とリリアール帝、万歳!」


 2人が各地で救った悪役令嬢と優秀な部下を次々とリア帝国に連れてきたことで、異例の速度で国は発展していった。


「次は、どんなものを開発したら、国民の暮らしが楽になるかしら?」


「マリアナ帝に申し上げます! 婚約破棄が行われるという情報が入りました!」


「リリアール! 行ってくるわ!」


「じゃ、じゃあ、私が熊を狩ってきておきます」


「リリアールも強くなったわね?」


「ありがとうございます……新たな国民を迎え入れるお祝いのために、国民たちに振る舞う食事も用意しないと、ですね」


「えぇ。行ってくるわ」





「あなたも断罪を受けたのかしら?よろしければ、我が国にいらっしゃいますか?」

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