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9話 一対多でも、圧倒的な力の差があれば関係ない



引き続きよろしくお願いします!



ハイネは、女の子を抱えて起き上がる。


ぐったりとしていて、息が浅かった。

とても痛ましいが、致命傷には至っていないようで、まずほっと息をつく。


「ナナさん、この子とみなさんをお願いしてもいいかな」

「は、はい。もちろんです、ハイネ様! あの、大丈夫ですか……?」


ぐったりと息の浅い女の子を、駆け寄ってきたナナへと預け、


「うん、たぶんね。ちょっと後ろに下がっててよ」


腰刀を抜いた。


「そんな腰刀で、これだけの人数が相手にできるわけないだろうがよ! 馬鹿めェ!!」


先の男が再び吠えた。が、


「ーーーーマナ、構築」


ハイネの耳にもう、それは届いていなかった。


まずは村民とナナが安全圏へ離れるまでの時間を稼がなくてはならない。

その一心で、イメージするは大きな盾。


『武器変幻』を再構築して、腰刀の周りにマナを纏わせる。

柄を長く伸ばして作り出したのは、白い光を放つ薙刀だ。


「な、なんだよ、あれ!? ぜんぜん魔力を感じないのに、あんな魔法!?」

「親分、武器が変わりませんでしたが、今!?」


輩たちが動揺の声を上げる中、ハイネはあくまで対処に懸命だった。


まだ、マナの扱いに慣れきったわけじゃないのだ。片手間にできるわけではない。

大気中のマナと、体内に眠るマナを同期させ、

薙刀の支点を握る。



魔力をその端まで行き渡らせたのち、手首を捻り、強い回転をかけた。

すると薙刀は、発動者であるハイネも驚いたことに、自然と術者の手を離れていく。


「な、な、なんだ!? 夢でも見てるのか? 勝手に武器が動いてやがる」

「くそ、これ以上は目も開けていられないっ」


目で追えないような速度の旋回だった。砂や木の葉を巻き込み、塵へと変える。


凝視しても、獲物が薙刀だと判別することさえ難しい。


描いたとおりの大きな盾が、そこにはできあがっていた。

炎魔法を込めた弓矢が打ち込まれるが、まるで虫を払うかのように、ものともせず弾く。


男らは、もう完全に怯んでいた。腰を抜かして、尻餅をつくものさえいた。



ハイネは強風に姿勢を崩されそうになりながらも、後ろ目に村民たちの様子を確認する。


無事に、倉庫らしき建物の影へと避難しているところだった。


さて、どうするか。


このまま薙ぎ払うこともよぎったが、殺すわけにはいかない。


ーー人を殺めることは決してしない。それが罪人だろうと、憎むべきは罪。


いくら創造神・ミーネに見放されても、聖職者だった人間として、それはハイネにとって絶対だった。 


「マナ、再構築」


一対多数は、昨日、魔物たちで経験済みだった。



腰刀を回収して成したのは、再びブーメランである。

ただし、刃はついていないので、殴打こそすれ、殺めるようなことはない。


「お、お、お前ら! やれ! 一斉攻撃で、あのいけすかねぇ野郎を殺せ!!」


炎の矢や、風の剣閃、水の防御壁。


男に率いられた集団は、さまざまな魔法を用いてくるが、それら全てをブーメランが打ち砕く。


それを見て、あわあわと焦り出したリーダー格らしき男は、ほんの数コマ前とは一転、


「くそ、邪魔なよそ者がよ! せっかく楽しい儀式の途中だったってのに。お前ら、一旦ひくぞ!」


退却を指示した。


背を部下に守らせ、自分の保身に気を配りながら、門の外へと逃げ出していく。


「くそ、覚えとけよ! このカミュ村の管轄を任された代官たるワテに逆らって、タダで済むと思うなよぉ〜」


捨て台詞さえ、後半にかけて遠ざかっていった。


去るのなら、深追いはしない。

捕まえたところで、ハイネの身分で、どうにかできるわけでもないのだ。


自分が一方的に殴られたというのに、相手が罪に問われず、ハイネが疑われたことは数えればキリがないほど経験してきた。


ハイネは、手に戻ってきたブーメランを腰刀へと戻しながら、ほっと息をつく。


とりあえず、無事に勝利することができたらしかった。



武器変幻の残り使用回数も、ちゃんと余すことができている。



疲労の溜まった中での初の対人戦としては、上々だったろうか。


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