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ナイトメアロストチャイルド  作者: おのこ
君に大丈夫だって言えるように
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事情聴取《ブロッキングリミット》

 夕暮れ時の光輪会、トレーニングルームに四人はいた。


「あっははは、リュウコちゃんには伝え方が悪かったねえ、アユム君は被害者だよ被害者」


「オメーがチョーシュ取るつーからよ、てっきりアユムがやらかしたのかと思ったんだよ馬鹿」


「まぁ、お世辞にも素行はよくないわよねえ、夜歩き常習犯だし」


 ケンゴは腹を抱えて笑い、リュウコは不貞腐れ、園長は困ったような笑顔を見せる。


「はは、は」


 この三人が揃うのは夏の海以来、騒がしくもどこか懐かしい光景にアユムは笑っていた。

 その姿を見てリュウコがニッと笑う。


「よーやく、笑ったな、今朝からテメー無茶苦茶つまんねえ顔してたからな」


 そう言ってアユムの頭を殆ど振り回すようにグジグジ撫で、アユムは正直恥ずかしいので止めてほしかったが、何も言い出せずなすがままにされる。

 アユムの頭を蹂躙しながら、リュウコはケンゴにガンを飛ばす。


「どうせ今日のチョーシュもその事絡みなんだろ?ついでにミツキがなんか下らねえ事してんのも、そこら辺のジジョー話してもらおうじゃねえ?」


 ケンゴはその目に全く動じず、あはははは、とそもそもの発端を話し始めた。


「元々は大体半月くらい前かな?病院側で謎の昏睡者の受け入れが増えてるって話でね、患者は至って健康、病気でもなければまたぞろ新種の薬物かと思ったけどその反応もない、お医者さんもお手上げーってなっちゃったのよ」


 ケンゴは両手を上げるジェスチャーをしておどけながら続ける。


「んで、よくわからん事象は全部【魔法】だろうって僕の所(マル魔)に丸投げされたってワケよ、そっから僕も捜査を始めたんだけど、まあ掴みどころがなくてね」


 捜査線上に何度も上がるブギーマンの噂、悪夢を産み出す【魔法】、捜査も虚しく増える犠牲者。


「なんもかんも分からなくて、困ってた所に一昨日、ミツキ君からアユム君が【魔法】でブギーマンって悪夢に囚われるようになったって連絡があってね、ドンピシャ困ってたから飛びつきに来たってワケ」


 ありがとねーアユム君、そう言ってケンゴもアユムの頭を撫でる、流石に今回のこれはイラッとした為、その手を払い除け睨みつけた。


「それで俺に事情聴取って何が聞きたいんだよ、その様子だとミツキからも聞いてるんだろ?」


 ケンゴは指を立て考える仕草をしたかと思うと、宙にマルを描いて言い切った。


「全部だよ、全部、最初の夢から昨日の夢、何があったのか直接聞きたい、というか聞けってミツキ君がね」


 それは長くなるな、と思った所にケンゴが付け加えた。


「申し訳無いけど、今のミツキ君に負担は掛けられないからねえ、僕がお願いしたわけじゃないけど街中駆け回ってるみたいだから、園長、悪いけど」


 言葉の途中で園長が頷き「ご飯はここに持ってくるわ」と部屋から出ていった。


「じゃあリュウコちゃんも…」

「アタシが居ちゃ都合が悪いことでもあんのか?」

「いや、ないね……じゃアユム君、お願いね」


 あまり気にしたことは無かったが、ケンゴとリュウコの関係は気の強い妹と押しに弱い兄のようだとアユムは今更ながらに感じた。

 アユムはため息をつきながら、前置きから始める。


「無茶苦茶長くなるから覚悟しておいてくれよ、それと、笑わないでくれ」


――――――――――――――――――――――――――――――


「なるほどねえ、自虐の悪夢を産み出す【魔法】と推定【魔法使い】の相棒ねえ」


 食事を取りながらのアユムの語りは、予想通りかなり長くなってしまった。

 ケンゴのつぶやきの直後リュウコの不満が噴出する。


「アユムテメー!なんでそーいう重要な事をソーダンしねえんだ馬鹿!隠しきれると思ってんのかアホ!」


「い、いや、そんな余裕なかったし……」


 ケンゴが真面目な事件だと証明していない限り、アユムが悪夢を見るんですゥなんて言おうものなら指差して大笑いするのがリュウコだと口にするほどアユムは愚かではなかった。


「まあまあ、喧嘩はそれくらいにして、真面目に聞くんだけどアユムくんの見立てではあと何日くらい持ちそう?」


 ()()()()()、つまるところ、アユムと名も知らぬ相棒(ケイ)の救出作戦が成長するブギーマン相手に何日で破綻するかだ。

 アユムは腕を組んで30秒程考え、答えを出した。


「【魔法】も無え、知識も無え、人手も無え、その上相手は毎日別モンレベルに成長しやがる。情けねえけど今晩入れて3日って所だな、せめて記憶さえ持ち込めりゃなんとか考えんだけどよ」


 ため息を付きながら言ったその答えにケンゴは渋い顔をした。


「そりゃあ、本当に急がないと不味いねえ……」


 アユムが首を傾げたのを見て、ケンゴは続けた。


「既に急増する昏睡者の生命を維持するのに結構病院側の体制がパンクしかけてるんだよねえ、そんな状態でドカッと増えられちゃうと受け入れ先が先に参っちゃうじゃない?それに」


「それに?」


 ケンゴはアユムのさらなる疑問に、今度は苦味たっぷりな笑顔で答えた。


「毎日増える昏睡者、毎日強くなるブギーマン、きっと無関係な訳ないよねえ」


 この悪夢はサバトに良く似ている。

 ならば行き着く先もまた、そうなるだろう。

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