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 アルがいなくなって、2年ぐらいは寂しい思いをしても、問題無く仕事をしていた。


 あれだけ悩まされた性欲は、2年近く殆ど感じなかったから、もう大丈夫かなと安心していた。が、また何かモヤモヤしだした。


 あぁ。落ち込んで、その気にならなかっただけか。自分では、平気なつもりだったんだけど。

 また、誰かに相手してもらうしかないのかな?

 そもそも、落ち込みたくないから、“あとくされない”相手が良いと思ったんじゃなかったっけ?


 知らない人に声かけるのも怖いし、ある程度、人となりを知ってる人ってなると、また冒険者仲間?


 …そういえば、何か言ってきた人がいたような?

 確かアルとお別れしてから1年近く経った頃、「アルフォードさんからの紹介で…。」とか何とか。

 あの時は、そんな気がなかったから、丁重にお断りしたけど。

「アルめ〜。他人(ひと)に何喋ってんの〜。」

 と怒ってもいた。


 アルには、いずれこうなる事が分かってたって事?それで、最初の「誰か紹介して」っていうのを律儀に守ってくれた訳?


 そんなに私の事を理解してて、後々の心配までしてくれるぐらいなら、私の側に居てくれたら良かっただろうに。私は、悔しくなって憤慨した。


 だけど、現状を何とかしないと。

 昔みたいに、仕事どころか日常生活もままならなくなる前に、声をかけに行った。


 1年ほど前に、誘ってくれた事を覚えてるか聞いて、彼女や奥さんがいないか確認して、魔力が多過ぎてまず出来ないけど、妊娠したら産んでも良いと承諾してもらった。

 ここら辺は、アルの時と同じ。「妊娠しても、責任取れとは言わないし、自分の子供を育てたいなら、結婚しても良い。」という(くだり)で、凄く真剣な目になるのが怖い。やっぱり、人生を左右するから軽々しく答えられないって事かな。


 重い話されて、面倒という風でも無かったし、後でもめるのは嫌だから、必要事項という事で。


 しっかし、この人もAランクにスピード出世した後、結構実績あった筈。モテるだろうに、どうして、相手してくれるんだろうなぁ。

 ギルドの招集案件では、一緒になった事もあるけど、接点はそれぐらいだし、私、目立たないと思うんだけどな。


 こっちとしては、実力あるし、真面目だし、キャリアも有るから人となりも多少は分かるし、相手として安心だけど。


 そんな彼とは、月一ぐらいのペースで逢っていた。


 ある時、彼が討伐任務に失敗して、怪我をして帰ってきた。後遺症も無く治る怪我だったので、安心した。


 でも、その頃から、なんとなく疎遠になって、結局自然消滅してしまった。

 私は、アルの時のような、恋人みたいな関係にならないように、少し引いていたし、逢う頻度もそう多くないのが、彼には物足りなかったのかな…。


 あとくされなく、付かず離れずの関係を保つって難しい。いや、そもそもそんな事できないのかも。



 その1年ぐらい後、また別の青年に誘われた。

 モテ期到来?そんなバカな。王都に移り住んで25年余り、私は殆ど変わってないのに、最近になって急に?


 でも、その時は、彼と別れた(そもそも付き合ってないんだけど)のが、周囲に伝わったのかな、と深く考えなかった。


 この彼も、Aランク冒険者として活躍してる人で、明るく屈託のないタイプだった。

 最初のやり取りで、いつも通り、「妊娠したら…。」の(くだり)を話すと、またもや相手に怖いくらい真剣な顔をされた。


 冒険者にこの話題って禁句?怖いよ。


 他に好きな人ができたら、すぐ辞めてくれて良いよと言っておいたのに、ニコニコしながらグイグイ来るタイプで、すっかり周囲に恋人だと思われてしまった。


 実際、休みに一緒にお出掛けするような事はなかったけど、食事やお酒を飲みによく行ったし、その後「部屋に行っても良いですか?」と誘われる事も多かった。

 休みの前日以外は、ちゃんと夜の内に帰って行くし、断れば残念そうにしながらも素直に引いてくれた。


 これで、恋人じゃないとは、まあ言えないよね。


 それと、休みの合う時は、やっぱり一晩中求められて、もう苦笑するしかなかった。


 そもそも、私は体力的には普通よりちょっと高いだけなのだ。仕事の時は、身体強化や結界を何重にも上掛けしてる。

 それに対して、Aランクの一線で活躍してるような人達は、男も女も自前のステータスが高いのだ。

 魔物討伐なんて、装備持って道無き道を歩き、夜営も有りで、魔物を倒して、帰りは装備+魔物の素材を持って戻るという過酷なもので、強さだけじゃなく、体力・気力も必要だ。


 そんなのと比べちゃいけない。

 私が、ソロで魔物討伐できるのは、その行程の殆どを魔力で何とかしてるから。


 まず、身体強化と結界で固めて、現場近くまで空間転移し、荷物は全部アイテムボックス(魔法で領域設定してるから何でも余裕で入る)。魔物は当然魔法で倒すし、何ヶ所か廻る時は夜営もするが、ちょっと広めに結界を張れば、夜もぐっすりで体力回復。


 これを具体的に他人に言った事はない。

 いや、研究所の顔なじみにだけはあるけど、アイツ私の魔力総量知ってるし、魔物討伐の遠征の経験が無いから。

 冒険者に知られると、まずバケモノ扱いされるだろう。

 普通の魔法使い1人で賄える魔力量じゃない。大魔法使いと言われるレベルなら出来るけど、そう何人も居ないし。


 逆に、利用しようとする者もいるかもだけど、私の方にメリットが無い。


 人数が増えると必要な魔力が跳ね上がる。転移に支援魔法(バフ)に結界、回復を人数分。夜営の結界もかなり広くとなると魔力はどんどん削られていく。

 予想外の魔物が出た時に、魔力が足りない事態は考えたくないし、もし、私が倒された時には、どうやって帰るの?


 何よりも一番の理由は、魔物と戦う時に1人なら味方を避ける必要が無いって事。

 周囲に敵しか居ないって、攻撃するの簡単。


 でも、1人で何でも出来ると思ってる訳じゃ無い。

 ギルド招集に参加してるのもその所為で、大量発生した魔物を殲滅するのに、辺り一面焼け野原とか、数体ずつ倒してる内に取り逃がすとか、やらかさないようにしてるのだ。


 おっと、話が逸れた。

 今度の相手は、積極的だというのと、Aランク冒険者は体力やら持久力が凄いって話だった。


 だから、付かず離れずなんて全然上手くできず、むしろ、ほぼ恋人状態だった。




 そんな頃、王都で建国記念祭が行われた。と言っても毎年やっているんだけど、普段は城のバルコニーから国民に王と王妃が挨拶、10年毎の節目に街中をパレード、更に50年毎に王都を挙げてのお祭りになる。


 その年は50年祭で、国の兵士だけでは人手が足りず、冒険者まで駆り出された。

 祭の1週間前から、全国的に魔物討伐が行われる念の入れようだ。

 そして当日は、主に街の警備にあたる。

 兵士は国の施設の方へ行くので、どうしても街の方へ手が回らない。かと言って、王都で犯罪頻発も体裁が悪いので、ある程度の兵士を目につくように配置して、実際には冒険者が治安維持していた。


 冒険者は、国内の者に限らない。

 ギルドは世界中にある。冒険者証を持っていれば、何処の国でも仕事を受けられるが、それだけでは王都を警備する側には入れない。

 国内の冒険者なら、Bランク以上(S・A・B)。

 外国所属の冒険者なら、Aランク所持に加えて各国のギルド支部から紹介状が必要。

 条件が厳しいが、テロリストに紛れ込まれても困るので、妥当だと思う。


 建国祭の前日、警備担当の冒険者は、担当地区に分かれ簡単な打合せ。その後当日早朝からお仕事開始。


 打ち合わせに集まった中には、外国から来た冒険者が2割程いた。

 彼らと、名前とランクの自己紹介をして、解散した。


 警備する側だけど、明日のお祭りは楽しみだ。前回は冒険者になりたてで、地元に帰ったところだったから、祭は見に行かなかったんだよね。


 さて、お祭り当日は朝から忙しかった。

 喧嘩、スリ、迷子は引っ切りなしで、子供の誘拐は個人・組織合わせて数件、反乱組織の摘発が2件。

 特に、組織的な誘拐が厄介で、1人か2人を眠らせて、抱っこしたりおぶったりすると、普通の親子連れと区別がつかない。王都近くの小さな森に隠した車(ガソリンじゃなくて魔力を動力に動く車だ。)に、子供達を閉じ込めて、それを何回も繰り返す。

 普段、森には魔物がいるけど、祭のために駆除したせいで、犯罪者の隠れ場所になるとは。この1週間の労力を逆手に取られたのがムカつくので、ガッチガチに拘束して、恐怖映像を幻覚で見せといた。物理攻撃だと、手加減メンドーだし。


 そうして、祭の方は無事とは言えないけど、色々解決して、終了した。

 捕まえた犯罪者は兵士に引き渡して、冒険者側には大きな怪我もなく、ギルドでの打ち上げになだれ込んだ。


 静かに1人で飲み食いしていたら、外国の冒険者達が、ちょっと居心地悪そうだった。

 普段、喋る方ではないけど、せっかく来てくれたんだからと思って、少しずつ声をかけた。

 祭の話をしていると、顔なじみのギルド職員が話しかけてきた。


「リーリアさんが愛想振りまいてるの珍しいですね〜。」

「振りまく程ではないけど、一緒に仕事した縁もできたしね。」

「そ〜ですね〜。良かったら、皆さん此処で沢山仕事していって下さいね〜。あ、この姉さん人気あるから、強くないと順番待ちに入れないですけどね〜。」


 ん?順番待ちって何?別にたいしてモテないけど。

「今そういう相手はいるけど、順番待ちされる程モテた事はないよ。」

「あっ。いや、まあ、隠れファンが意外といますよって事ですよ〜。じゃあ、しっかり飲み食いしていって下さいね〜。」


 慌ただしく去って行ったな。

 この話題は止めて、今までの仕事の話でも聞こう。

 そうして、色々な外国での仕事や旅の話を聞いた。



 そういえば、国境付近までは魔物討伐に出掛けた事はあるけど、外国に行った事は無いな。

 前世と違って、観光目的の海外旅行に行く人は少ない。それは、やっぱり魔物のせい。


 国境を作っているのは、国の勢力じゃなく魔物の棲息地域で、どうしても駆逐しきれない、魔物の発生しやすい土地が残っている。

 各国は、その中で比較的分布のうすい所を繋いで、街道を維持している。


 普通の人が外国に行くには、その道を護衛を雇って通る事になるので、どうしても、商人とか、国の使者とかになる。


 そのおかげとは、あまり言いたくないけど、人間同士の戦争は、殆ど無い。

 まあ、人が集まれば、争いは起きるので、紛争が無いわけではないし、国同士でも経済的な衝突で国交断絶してる所もあるらしい。


 この国は、人間とその混血の割合が多い国だけど、世界には獣人の多い国とか、エルフの国とか、魔族の国とかがあるし、場所は公にされてないけど、龍の国もある。

 せっかく異世界に来たんだから、そういう国に行ってみるのも良いかもね。


 外国からの冒険者と知り合った事で、よその国にも興味を持ったのだった。



お読みいただきありがとうございます。

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