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 その後は………凄かった、としか言えない。

 だって、私の経験人数なんて、片手で足りるというか余るぐらいなのに、相手はイケメン凄腕Aランク冒険者だよ。

 数年前までは、結構遊んでたようだし、経験が違い過ぎ。

 あっという間に、訳が分からなくなって、気を失うように寝て、目が覚めたら、「続き」とか言われて、動けなくなって、食事まで用意されて(私の家なのに!!)、また「続き」をお願いされて、丸一日経ったところで、翌日は仕事とかで、名残惜しそうに帰っていった。


 何アレ、バケモノでしょーっ。元旦那の時も思ったけど、この世界の男ってどんな体力してんのっ。今回は、更に酷かった。一晩どころか丸一日?Aランク恐るべし。

 一応、私と彼の両方に回復魔法はかけといたけど、明日仕事無くて本当に良かった。向こうは仕事になるのかな?



 彼のおかげでスッキリしたので、また、仕事をこなす日々に戻った。

 だけど、一回すれば終わり、とはいかなかった。

 結局、女の身体は月経周期に左右されている。まあ、簡単に言えば、また性欲が高まってきたのだ。

 それでも数ヶ月は我慢したが、解決策を知ってしまった私の我慢は続かなかった。


 こんな事になるなら、いっそ処女のままでいれば良かったのかな?知らなければ、耐えられたと思うんだけど。

 ただ、後悔してるのは結婚じゃなくて、最後まで(すが)りつけなかった事だし、よく考えたら前世でも経験あるから、知らないままってのは、なかったわ。


 彼方此方に声をかけるのは、恥ずかしくて出来ないので、今回もアルフォード君を頼る事にした。

 前回あれだけしたんだから、少なくとも、嫌々ではなかった筈。


 大抵の冒険者は、朝、晩ギルドに顔を出す。もちろん、数日掛かりの依頼もあるから、毎日ではないけど、まずギルドで探すのが無難。


 ある日、早めに依頼を終えた私は、ギルド職員に彼の事を聞いてみた。

 もうかなり付き合いの長いその受付嬢は、ニヤニヤしながら、今日の夕方戻る予定だと教えてくれた。各依頼のスケジュールを把握してる筈だから、確実だろう。

 その顔ヤメロと言いたいけど、あながち違うとも言えない用事なので、何も言えなかった。


 ギルドには、打ち合わせの為の談話スペースがあり、軽食や飲物も出している。王都のギルドともなれば、かなり広い。

 私は、その中でも受け付けの見える位置に座り、しばらく待つ事にした。


 夕暮れ時、冒険者達は続々とやって来ては、受け付けで今日の成果を報告し、報酬を受け取る。

 そんな中、十数人の集団が賑やかに入ってきた。その先頭は目当ての彼だ。あの集団は彼がリーダーを務めるパーティーだろう。依頼の規模によって、人数を振り分けてるという話を聞いた事があるけど、今日は全員で受けるような依頼だったようだ。


 何となく眺めていたら、不意に彼が此方を向いて、ニコッと笑いかけられた。さすがイケメン、爽やかだ。じゃなくて、混雑した中、よく私に気付いたな。


 彼は、完了報告を他のメンバーに頼んだらしく、私の方へ来てくれた。

 ありがたい。彼のパーティーメンバーのいる所から連れ出すのは、かなり恥ずかしいと思ってたところだったから。


「お疲れ様。今日の仕事は上手くいったみたいだね。怪我人もいないし、皆の顔が明るい。」

「お疲れ様です。4日掛かりの仕事が無事終わったところです。そちらも、完了報告ですか?」

「実は、お願いがあって、君を待ってたんだよ。」

「俺を、ですか?もしかして、例の…?」

「うん。1週間ぐらいの内に休みがある?その前の晩から、私の家に来てくれると嬉しいんだけど。」

「明日、今回の依頼主に直接完了報告したら、数日休みなので、明日の夕方から行っても良いですか?」

「うん。待ってるよ。ゴメンね、急にこんな事頼んで。じゃあ、また明日。」

「はい。では、また明日。」


 はあ、何とか頼む事ができた。

 今回は、モヤモヤのピークより前だけど、こうやって早めに解消していけば、仕事を断る事なく、上手くやっていけそう。


 明日の午前中は、掃除と買出しだな。

 今日は早く寝てしまおう。



 さて、当日昼から私は料理をしていた。

 前世の記憶をもとに和食だ。普通の家庭料理だけど。

 日本からの転生者がそれなりにいるおかげで、この世界には和食の調味料や米がある。と言っても、故郷には無かったが、そこはさすが王都。ちょっとお高いが、何でも揃っていた。


 普段あまり料理しなくて手際が悪いと言っても、夕食を昼から作るのはどうかと思う。でも、なんかソワソワして、他の事が手につかないので、ゆっくり料理する事にした。

 特に煮物は、作って置いておくと、美味しくなるし。

 煮物の後、米を水に浸したところで、呼び鈴が鳴った。


 案の定、来客はアルフォード君だった。

「早めに終わったので、来ちゃいました。甘い物はお好きですか?」


 こっちからお願いしたのに、手土産持って来てくれるなんて。しかも、この箱王都でも特に有名なパティスリーのじゃない?本当にソツがないなぁ。

 やっぱり、ご飯作っといて良かった〜。


「うん。甘い物大好き!入って。お茶入れるね。」

 つい、嬉しくなって、満面の笑顔になる。はしゃぎ過ぎた。恥ずかしい。


 台所を簡単に片付けて、お茶を用意した。

 ケーキを食べてる間、ずっと頬が緩みっぱなしだったと思う。だって、美味しい物、特に甘い物を食べると自然に笑顔になるんだから、仕方がない。


 お茶の時と、料理を作る間、色々とお喋りした。最近の仕事、お気に入りの店、休みに何をしてるかとか。

 特に、料理は興味津々で覗き込んでくるので、緊張した。

 何でも、最近料理にハマって、美味しい料理を見つけると、自分で再現しているらしい。


 前回、美味しい具だくさんのスープを作ってくれたもんね。何ソレ、ハイスペック。何で独り身なの?


 一番時間のかかる煮物が出来てたので、あとはそんなに待たせずに出来上がった。

 ケーキ食べてから、あんまり時間経ってないけど、食べられるかな?

 …私はともかく、成人男性が食べられないって事は無いか。

 ちょっと早いけど、夕飯にしちゃおう。


 この世界には、日本酒も焼酎もある。前世では、日本酒の方が好きだったんだけど、好みの味のお酒をまだ見つけられてないので、今日は焼酎を用意した。

 その分、汁物はいらないなと思って、お味噌汁は無し。


 和食が珍しいのか、彼は凄く喜んでくれた。

 褒められて悪い気はしない。機嫌が良くなると、自然杯もすすむ。

 多めに用意した筈の食事が、あらかた無くなった頃には、ほろ酔いになっていた。


 ふと、会話が途切れて彼を見ると、熱のこもった目で此方を見ていた。驚いて、固まっていると、肩を抱き寄せられた。

「あの、片付けが、」

「後で手伝いますから、今はこっちを見て。」

 耳元で囁かれて、顔が熱くなった。

「じゃあ、せめてシャワーを、」

「此処へ来る前に、一度家に戻って身綺麗にして来ましたけど、ダメですか?」

 わーん。色気ダダ漏れで、たちうち出来ないよ〜。


 そのまま、寝室に連れていかれた。


 えっと、その後は、前回よりも手加減してもらえたらしく、記憶が飛んでる所も無いし、動けなくなる程では無かった。


 ただ、いつの間にか、「リアって呼んでも良いですか?俺の事はアルで。」と言われ、承諾させられていた。


 アルフォード君って呼び方ダメだったかな?子供扱いしてるつもりは無かったんだけど。

 まあ、外見だけなら、彼は25、6才に見える。金髪、(はしばみ)色の瞳、背も高くて、細身ながら前衛職だけあって筋肉もかなりついてる。実際は31だっけ。この前ステータス見たし。


 それに対して私は、瞳と髪は薄い茶色、背は女性の中では少し高い方だけど、筋肉も大して付いてないし(魔力で強化してるだけで本体は普通)、20才ぐらいにしか見えない。

 外見的に年下の女性から君付けは、やっぱ止めといた方が良かったか。


 実際は、54才だったから20以上年下になるんだけど。うわー。考えたら凹んできたわー。


 手加減してもらったとはいえ、朝には起きられず、昼ご飯を食べに出掛けた。

 ちょっと足がふらついたら、手をつながれた。

 いい大人が転んだらみっともないので、遠慮なく掴まっておいた。別に(身体強化で)傷ひとつ付きゃしないけど。


 家に戻ったら、「続き」をお願いされて、また寝室にこもって…。確かに目的はソレだったけど、ここまで頑張ってくれなくても良いんですけど、と思っていたら、「他の奴に頼まないで下さいね。」と約束させられた。口調は穏やかだけど、目が笑ってないよ、アル。怖い。



 そうして、一緒に過ごすのが、数ヶ月に一度から毎月になり、アルがしたい時も、ってなるのにそう時間はかからなかった。

 その頃には、周囲から、すっかり恋人のように扱われていた。頻繁に連れだって歩いてるのを、皆に見られてるんだから、当然だろう。


 まさか、身体だけの関係です、なんて言える訳もなく放置していたけど、アルは良いのかな?

 私は別に、恋人とか結婚とかもう必要無いから、誤解されたままでも良いんだけど。


 アルには、他に好きな人が出来たら、すぐ辞めて良いよと念を押しておいたけど、複雑な顔をされたので、それ以上は言わなかった。

 好青年だからなぁ。情が移ったかな。


 取り敢えず、要件は伝えてあるんだから、離れたくなれば、言ってくるだろう…そう軽く考えていたら、なんと8年も関係は続いた。


 付き合いが長くなれば、馴染んでくるもので、もう恋人と呼んで良い関係だったと思う。いや、ちゃんと恋人だったら、もっと早く別れていたかも知れない。

「恋人という関係」だと、他より自分を優先して欲しいとか、何かやってもらっても当然と思ったりとか、無遠慮になってしまう時もあるだろうけど、少し他人行儀な気遣いが、長く保った理由かなと思う。



 ある時、上級の魔物が王都近郊の街に現れ、その街の冒険者では手に負えないと、王都のギルドに救援要請が来た。強いが、確認されたのは1体だったので、アルのパーティーに依頼が来た。

 メンバーの増減はあったものの、十数人のバランスの取れた実力派集団で、誰もが、堅実な選択だと思った。もし、もう一体出ても十分対応できるだろう。


 これが、魔獣と呼ばれる超級の魔物なら、S・Aランクの招集事案、上級魔物の集団発生なら、A・Bランクの招集事案になる。


 万一を考えて、王都にいるAランク冒険者には、待機要請が出ていたが、皆「実質休みだね」という反応だった。

 だが、蓋を開けてみれば、2体の出現で消耗しつつも倒した所に、更に3体目が現れ、何とか倒したものの、負傷者が多く出たらしい。

 駆けつけた待機組ができたのは、負傷者の手当てと、後処理だけだった。


 そして、アルも負傷していた。いや、負傷して治癒されていた。

 出血多量で優先して治癒魔法をかけたらしいが、回復役は魔力切れスレスレで、魔力の残っている者は低位の治癒魔法しか使えなかった。それでも、死なせるよりはと、治癒魔法がかけられた。

 大怪我に低位治癒魔法をかけると、かなりの確率で後遺症が残る。多分、一見傷が塞がっても、中身が適当に繋がるのだろう。だが、大きい血管だけ治して、高位治癒魔法が使える者を待つなんて、器用な事が出来る者はそうはいないだろう。それが出来るぐらいの実力があれば、高位治癒魔法も使えるだろう。


 アルにも、足に後遺症が残った。日常生活には問題無い軽いものだったが、それでもAランクを続けるのは厳しい。

 アルの仲間達は泣いていた。特に庇われた者は酷く落ち込んでいた。

 だけど、アルはあっさりと冒険者を辞める事を決め、仲間や友人に別れを告げた。


 私には、落ち着いて話したいと、家を訪ねて来てくれた。

 故郷の冒険者ギルドからギルマスになって欲しいと誘われて、故郷に戻るそうだ。


 私は泣きながら、最上級治癒魔法をかけてみたが駄目だった。怪我は治っているという判定なのだろう。魔法が上滑りしていくのを、呆然と見る事しかできなかった。


 どんなに魔法が使えても、どうにもならない事があるのは分かってる。でも、その時私は、本当に役立たずだ。


 それでも私には魔法しかない。だから、彼に付いて行く事はできなかった。でも、引き止める事も出来なくて、ただ涙を流した。彼もそんな私に苦笑しても、「付いて来て欲しい」とは、言わなかった。


 多分、愛情はあったと思う。燃えるような激しさは無くても、揺蕩(たゆた)う水の様に穏やかな。

 どちらも言葉にはしなかったけど、一緒にいれば、ふと感じる気持ち。


 でも、私にはそれだけじゃダメだったから。だから、恋人とか結婚とかナシでって決めたんだから。また、同じ事を繰り返さない為に。



 私達は、相手の幸せを願い、「今までありがとう」とお礼を言いあって、お別れした。






お読みいただきありがとうございます。

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