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あの大地へ、君と  作者: ふんばり屋太郎
プロローグ
3/34

③ 契約

 暗い闇の中を青年は漂っていた。本来であればそれは怖いものだが、なぜか心地よく安心に包まれる。

 できれば誰にも邪魔されず、この時を過ごしたいと思う。なにもかもを忘れ、意識を闇に溶かしたい。


≪憎き人の側面を観させてもらった≫


 脳を通り抜けるように、それは語りかけてきた。


≪彼の者に敬意を示し、お前が良ければ力を与えよう≫


 口の動かし方を思い出せない。それでも記憶をたどり。


「だれだ」


 相手は返答もせず、自分の言葉を続けた。


≪しかし我が身は、人に悪魔と蔑まれている≫


「悪魔じゃないのか?」


 今度は返事をしてくれるようで。


≪名前というのは強い力を持っている。この世界でそうだとなれば、もはや我々は悪魔となる≫


「力を貸してくれるのか」


 否定も肯定も、彼には解らず。


≪強大な力を授ける。だが大本が私と知られろば、お前に刃を向ける者は多いぞ≫


 青年はしばし考えてから、言葉を選ぶ。


「俺はあんたと今さっき会ったばかりだよな。そういうのは危険だ、旧知の仲でも騙されることだってあんのに」


≪そう、教わったのか?≫


 相手は見えないが、うなずいてみる。


「頼るなら、せめてちゃんと調べたり、納得してから決めろって」


≪なるほど≫


 言って青年は苦笑い。


「つっても人間そんな都合良くはできてない。本当に困るとなんも考えず、喜んで頼っちまうんだよな」


≪では頼るか?≫


 顎を左右に振る。


「やめとく」


 今度は相手が考えているのか、しばらく黙り込む。


≪それなら私は精霊として、貴方に協力しましょう≫


「誰だよ」


 笑った気がした。


≪ですが与える力は弱めでいきます。繋がりが強まれば、そのぶん少しずつ≫


「もしかして強大な力って、寿命とか削るつもりだったのか」


 今度は間違いなく笑っている。


≪ご想像にお任せします≫


「おい、ふざけんな」


 上手い話は中々ない。


≪共に歩みましょう≫


「勝手に進まないでください」


 人の話を聞かない精霊だと思ったが。


「今から色々大変なのは事実だからな。それが微力だとしても、けっこう助かる」


 しばし悩んで、まあ良いかと納得した。


≪この出会いは彼の意思。本来であれば、繋がりは薄く≫


 意図せずとも、呼んだのはその行動。


≪この結果は互いの選択。ここに契約はなされました≫


 暗かった世界に光が差し込む。


≪ありがとう。ずっと、大切なことを忘れていた≫


 もうすぐ目覚めるのだろう。


≪私は闇の精霊≫


 今後、直接の会話はないかも知れない。


≪貴方の行く先に、たとえ悔いが残ろうとも、満足いく最後がありますよう≫

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