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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
97/109

97.曰く、目出度し日の出、胸には不安。


 一夜明け、シキミは再び上空でジークに抱えられていた。


 相変わらず、恥ずかしいような、照れるようなドキドキが無いといえば嘘になる。……が、しかし。不安やら心配やらがその胸を占めていれば、ドキドキのみにに勤しむ余裕などあるはずも無く。


 ニ度目の空の旅。今回は少し急いだ帰路である。


 呼び出されたミンタカは「……主人よ、やけに早かったな」と言ったきり、何も聞いては来なかった。



 魔力を大量に消費して、ややぐったりしているのを悟られたのか、昨晩はグリフォン達に囲まれて眠った。

 インベントリに戻ったエヴァンズは、酷く不満げな声を漏らしていたが、魔力残量的にも再び出ることは叶わず。ウィスタリアからの「拗ねた」という報告を最後に、神器達の声は途絶えた。


 柔らかな羽毛と、少し高めの体温。まさに生きた羽毛布団とでも言うべきグリフォンに囲まれながら、シキミは穏やかに眠りについた。

 おかげさまで良質な休息を得たシキミは、次の日の朝にはすっかり元気を取り戻し。いつも通り、美味しそうに朝食を頬張っていた。

 そんな切り替えの速さは、彼女の美点でもある。


「しかし、こうも頻繁に人間の魔化に出会ってしまうとは。……無い無いと言われていたばかりに、驚きもひとしおといったところでしょうか」


 ともすれば呑気にも聞こえるその声は、いつもよりも少しばかり硬い。


「本格的に、魔化が広まってるということでしょうか……」

「わかりません。偶々(たまたま)……と言うには、少し無理があるかもしれませんね」


 行く先々で出会う魔物達を、数が多くなっているから故の偶然と取るか、狙われていると取るか。

 どちらがマシかと言われたところで、どちらも嫌なことに変わりはないのだけれど。


「帰ったら、魔の牙(オルコ)の二人を呼び出して、できるだけ早く会ってもらえるように掛け合いましょう」

「呼び出し……は、何となくジークさんならできそうですけど。……会ってもらう、っていうのは……えっと、あの人たちの()()……さん……?」

「はい。証拠になる()()しれない、コレを手土産に」


 ニコリと微笑んだ彼の、その手にあるのは、屍者(ししゃ)慟哭(どうこく)がぎっちり詰まった布袋。

 はちきれんばかりのその体を、重たそうに垂らしている。


「証拠に、なりますかねぇ」

「場合によっては……いえ。上手く行けば、ですが。これを手がかりに、裏で糸を引いている人の一部ぐらいなら掴めるかもしれません」


 できるかどうかわからない、なんて顔をしておきながら、上手く回してしまうのがこの人の凄い所だ。

 だから、きっと今回も──。


「……主人、我らに心配ばかりかけてくれるなよ」

「うふふ、釘を刺されてしまいました」


 ばさり、ばさり。

 グリフォンの大きな翼が、朝焼けの空を切り裂いてゆく。


 日の出前に出てきたものだから、シキミ達は日の出を空から拝むことになった。

 血のような赤に照らされて、世界は静かに赤に染まる。


 地平線から顔を出した、まだ幼い太陽は、彼らの胸で脈打っていた、あの魔石と少し似ていた。


短かったので放出します。


「拗ねた」報告が今回のハイライトです。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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