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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
88/109

88.曰く、無垢な少女、奮闘す。


 スキルとは、要するにMP(魔力)消費の無い技のことだ。

 剣技や身体強化、耐性や隠蔽etc.

 その数は多く、使用方法によっては戦局を左右する事もある。


 大きく分けて種類はニつ。

 取得した後は常時発動したままになる、俗に言うところの "パッシブスキル"。

 そして、身体強化や特定の剣技の様に、選択して初めて発動する "アクティブスキル"。


 アクティブスキルには、一度使ったら一定時間(ターン)の再使用不可という制限が。そして、効果が発揮される持続時間(ターン)数が決められていた。


 もちろん、それはゲームの中だけの話。

 先攻、後攻で1ターン。お互い殴り合ってフェアに行こう……なんて、現実じゃああり得ない。


 打ち込めば打ち込むだけ強い。殴れば殴った数だけ有利になる。

 素直に攻撃される必要はない。避ければ避けただけ、勝機は増える。


「そういう()()()がないとはいえ、時間制限がないわけじゃなさそうだし……ッ!」


 真っ赤に染まった身体強化と武器強化のスキル群。再度使用不可を示す赤文字が出たのなら、やっぱり時間制限はあるんだろう。


 思考を巡らせながら、頭上に振り下ろされる棍棒(こんぼう)をいなしてそのまま斬りつける。

 分厚い脂肪と、みっちり詰まった筋肉の抵抗が、ただでは斬らせまいと抵抗するのを感じてしまう。


「短期決戦……しかない、よね……! 三匹目っ!」

「シキミ、伏せて」

「はひっ……!」


 本能に従い、シキミは土下座もかくやという姿勢で地面に伏せる。

 その直後。ジークの振るう刀から、光る斬撃が弧を描いて()()()


 シキミの背後にいた、四、五匹のオークを薙ぎ払い。そのまま頭上を通り過ぎた斬撃は、木々に深手を負わせて霧散した。

 しとどに濡れる、大きく(えぐ)れた幹を見て、彼が水を飛ばしたのだと知る。


「……手っ取り早くていいのですが、やはり仲間を巻き込んでしまうのは感心しませんね、コレ」

「く、首がトばなくて良かった……!」

「最悪、頭の先がちょっと切れるぐらいの高さですから。大丈夫ですよ」

「ジークさん。ソレ人間は死にます」


 本気か冗談か、いまいちわからない言葉のやり取りを合図に、二人は再び動き出す。


 背を合わせ、離れ、交差して。

 まるで、舞踏会でダンスを踊る男女のように。血の花を咲かせ、彩る二人は舞台(じめん)を濡らす。

 不格好なステップで、亜麻色の髪の乙女は踊る。黒髪の王子のリードで、お姫様は十二時(タイムリミット)まで踊れるのだ。


 二人の死の舞踏は、着実にオークの数を減らし、赤が舞う度、潰れた断末魔が(こずえ)に響く。


 シキミの両手剣は、最後の一匹の心臓を真っ直ぐに貫いた。

 小さく呻いて、やがて動かなくなったソレから剣を引き抜けば、熱い血潮がシキミを濡らす。

 何匹分もの血を浴びて、シキミの髪はすっかり原色を失っていた。


 街道の、(わだち)の残る道には、オークの死骸が折り重なっている。

 もう、道を囲う木々は戦いの気配を失い、すっかり静かになっていた。


「……ふぅ。討伐完了……ですね」

「いきてる……しんでない……」

「はい。よく頑張りました」


 そっと頭を撫でる感触に、ふと気が抜けて泣いてしまいそうになる。


 ──怖かった。何度戦ったって、何度敵と対峙(たいじ)したって。命の削り合いは、怖い。

 戦争なんて知らずに生きてきた。誰かが死ぬのはテレビの向こう。いつか自分が死ぬかもなんて、馬鹿な夢想か妄想だった。


 それでも、私は戦った。

 戦って、生きている。今はもう、それだけでいい。


 たかがオークと笑うがいい。無知で無垢な少女の、泥塗(どろまみ)れの奮闘だ。笑うがいい。今は気分がいいから、笑うぐらいなら許してやる。

 ──そんなことを、誰に向けるでもなく、つらつらと考えて。シキミはまた、ふぅ、と大きく息を吐き出した。


 ジークと顔を見合わせれば、黒い瞳が微笑する。

 一緒の場所で戦っていたとは思えない程、彼は綺麗なままだった。正しく一糸乱れぬ姿。

 一方のシキミは、いつぞやの "血濡れの少女" 再びである。


 うふふ、と照れたように笑い合ったその時。ほんの少し、遠くから「おーい」と呼ぶ声がした。


「無事かー!?……まぁ無事だよな」

「怪我してないでしょうね~!?」


 テオドールとエレノアが、グリフォン達を引き連れて、街道を真っ直ぐこちらへと向かってきていた。


 なんだか、酷く懐かしいような気がして駆け寄れば、打った背中が(わず)かに痛む。


「あらあらまぁまぁ……こんなになって……」

「またキレーに血ィ浴びてんな……」

「……無事で何よりだ、小さき子よ。アルニラムとアルニタクも心配していた。後で存分に構ってやってくれ」


 テオドールとエレノアの後ろ。二匹のグリフォンが、同意するように「ぎゅい!」と鳴いた。


 近づいてきたエレノアに、杖で頭をコツンと叩かれる。


 全身を通り抜けた()の気配がして、疼くような痛みが消えた。

 爪の奥にまで入り込んで、こびりついて固まっていた血も、全身を覆っていたオークの残骸も、綺麗さっぱり消え失せたのがわかる。回復と、浄化の魔法だろうか。


「よく頑張ったわね」


 そう言って、優しく微笑んだ美しい魔女は、ジークに向けて「突然飛び降りるのは無しでしょ!?」と怒鳴った。


ご連絡。

ここしばらく毎日投稿が続いておりましたが、ちょっと忙しくなってまいりまして……しばらく二日に一回とかそういうペースになるかもしれません。(ストックなどない)

読んでくださってるみなさん!!ごめんなさい!!!毎日ちゃらんぽらん執筆でストックがない私が悪いんです!!!!(懺悔)


…………という保険をかけておきますので、日が遅れても怒らないであげてください…………。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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