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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
72/109

72.縺ゥ縺?@縺ヲ縲√?螢ー縺ォ蠢懊∴縺ッ縺ェ縺

 

 故郷の壊滅に伴って、魔王(わたし)の存在が確認された。


 やがてあの人は勇者に認定されて、魔王を殺しに来るだろう。

 なんの理由がなくたって、いずれ()()()。勇者と魔王は、必ず争うものだからだ。


 魔王となる前の(わたし)──今はもういない()は、魔王に連れ去られたと思われているらしいということを、風の噂で聞いた。


 広義では、間違っていない。

 確かに()魔王(システム)に連れ去られ、喪われてしまったのだから。


『ねぇ、本当にいいの?』

「良いも悪いも、決まりは決まりだ」

『ねぇ、私の片割れ、私の宿主』

「それはもう、過去の話」


 魔王とは、其れ即ち概念である。


 最初から世界(そこ)にあり、影とともに(うごめ)き息をする。

 世界の怨嗟を吸収し、魔王という()()()は、大きく、強くなる。


 魔王はこの世界の模倣子(ミーム)なのだ。

 口伝えで伝染し、それが形を取った、生まれながらに死んだ生命体。

 かくあれかしという、人の心の闇によって、魔王は生きていた。


 どす黒い心の(おり)を溜め込んで、そうやって育った魔王は、やがてこの世界に生きる器に憑依する。


 ──その器が、(わたし)であったというだけの話。


 憑依された魂は歪み、捻じれ、消失する。

 最早、憑依された(それ)は魔王以外の何物でもなく。魔王であった以前のあらゆる全ては消え、二度と戻らない。


 こうして、魔王である己が何かを思考できるのは、単純な話、この鏡のせいでもあるのだ。

 押しつぶされ、消えてしまうはずだった(わたし)欠片(かけら)を握りしめた──二つめの魂。器の同居人。



 魔王になって(のち)、過去、未来、そして現在──そうしたもの全てを喪うことは悲しいことだと思っていた。

 だが、今になって思考う。


 ──忘却は救いなのだと。


 忘れられていたならば、あの人がきっと悲しむだろうなどと……苦しむだろうなどと考えて。

 ……そんな考えで、役割を全うすることを躊躇(ためら)う──などということは、きっとなかったはずなのに。


(ああ)。どうして、どうして────」


 どうして(わたし)なのだ。


 どうして(わたし)が、こんな。


 生けとし生ける者の悪意を、苦しみを、哀しみをありとあらゆる罪業全てを一身に受けて。

 生きながら焼かれるように、それでもなお生きなければならないのだ──?


 (いら)えの無い問いは、部屋の隅に転がり落ちて、答えを探して(うごめ)いた。



──どうして?


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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