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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
62/109

62.曰く、最大の防御。

 

 何処か遠くで悲鳴が上がる。

 それもそうだ、だってここは店の中。貴族たちの集まる高級店舗の只中(ただなか)で、突然起こった爆発のようなもの。悲鳴が上がらない訳がない。


 無残に砕かれ、穿(うが)たれた壁が、背後でガラガラと音を立てて崩れた気がした。


 私を押さえつけたのは多分、隣にいたジークさんで。

 地面にひれ伏すようになった私達の前に展開されていたのは、六角形を組み合わせた、蜂の巣を思わせる(シールド)だった。


堅牢の盾(スメラギ)…………」

「〜ッぶねぇ〜!!!」


 赤髪が、風に煽られて揺れる。獣じみた蒼の瞳孔がぎょろりと、這いつくばるシキミを見下ろした。


 チラと隣のジークさんを見れば、これは? という顔をしている。

 精霊(スメラギ)は見えないはずだから、この半透明の六角形は何ですか? ということだろう。


「ぽ、ポーチに入ってた、武器です」

「使えますか?」

「多分……」


 何かを言いかけたジークは、(シールド)の向こうを睨みつけると口を(つぐ)んだ。


 煙の向こうから、ゆらりと人影が現れる。

 ふらつき、今にも崩折(くずお)れそうなシルエットは、もはや人ではない何かを思わせた。


 慌てて身を起こせば、視野は広がれど視界は不明瞭のままだ。


「あ、れ……エイデンさん……?」

「恐らくは。でも、こんなに突然、何故──?」


 苦痛に満ちた悲鳴のような、獣の呻き声のような、形容し難い咆哮(ほうこう)が地を(はし)る。


「ジーク! 聞こえる!? 魔力暴走よ!」

「ハァ!? 暴走するほど魔力持ってなかっただろォ!?」

「一気に魔力がハネ上がりやがった……オイ優男(やさおとこ)! ()()()()()()!」


 煙に巻かれて見えないが、どうやら皆無事らしい。

 方々(ほうぼう)から掛かる声は、焦りを含みながらも冷静だ。(いささ)か上ずった声が、起こるであろう戦闘への興奮を見せる。


「──ッこれは、もしかすると()()()()()()()しれませんよ……!」


 仲間の声を聞いて、ジークの顔が(わず)かに歪む。

 いつもは飄々と、笑顔でモノゴトを処理してしまう彼の、珍しい──多分、シキミが見るのは初めての顔。


「ジークさ──」

()()()。戦えますか──その武器で」


 名前を呼ばれて、思わずドキリと心臓が跳ねる。

 初めてだ。こんな、こんな場所で彼は、初めて私の名前を呼んだ。


「ッ……はいっ!!」


 なんで今なのか、とか、どうして呼んでくれたのか、とか。

 そんな疑問は、シキミに認知される前に霧散した。


 柔い黒曜石(こくようせき)が、下がる(まなじり)の奥で微笑(わら)う。


 背中を少しは預けてもいいって、そう思ってもらえた気がする。

 ああ、本当にそうだったらいいのに。私の思うとおり、彼もそう思ってくれたならいい。



「……堅牢の盾(スメラギ)! 力を貸してッ」

「任せな、俺様のマスタァ」


 堅牢の盾──名の由来はその頑丈さから……だけではない。


 最強の盾。最強の防御。──それ即ち


『攻撃は最大の防御ってなァ!』


 スメラギの姿は掻き消えて、眼前に展開されていた盾は細かい粒子となって渦巻く。

 薄赤い粒は空間を泳ぐように流れ、シキミの両手足を覆い始めた。



 まるで外殻のように形成される、肉食獣の四肢を模したような鎧。

 鋭い爪の付いた手甲が肩まで覆い、鉄靴(てっか)も何やら爪のある、獣じみた形でシキミの足へと収まった。


 細かい、細かい六角形が合わさり、やがてその継ぎ目は消え失せる。

 燃えるような深紅(しんく)──まるでスメラギの髪のような色の武具。


 ギリ、と踏み込んだ足が、柔らかな絨毯を掻き削った。


テンションが上がるに任せて書きました。

いつ呼ばせるか、それはずっと迷ってたんですが……ここに来てジークさんが勝手に呼び出したので彼にお任せします。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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