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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
54/109

54.曰く、秘密の入り口。

 

「夜にばかり活動してると、昼夜逆転しそうじゃないですか……?」

「もう結構逆転してんぞ」

「起きたの昼だしねぇ」


 ふあ、と大きな欠伸を一つ。

 シキミたち白銀の糸(アルゲントゥム)の一行は、薄暗い夜道を連れ立って進んでいた。


 大通りに連なる街灯には、魔法の光が灯っている。

 (みち)に面した飲食店から、光と共に賑やかな声が漏れ出していれば、まだこの街の夜は長い。



 カフェ・バー『箱庭』。

 名前の通り、昼はカフェ、夜はバーの飲食店。

 値段はそれなりだが、出すものは値段以上の一級品。味良し値段良しの言わずと知れた名店で、このアズリルの街で知らぬ者はいない──のだということをシキミは今知った。


「まぁ、何だ。憧れの名店みたいなもんだよな」

「通えるようになったら一流……みたいなイメージあったわよね」

「ジークさんたちは行ったことあるんですか?」

「ある……というより、もう常連に近いですね」

「あっ、ですよね〜」


 お小遣いとして銀貨をぽんと投げ出したり、龍の鱗をお土産だと言い張ったりするような人間が、そんな飲食店に通っていないはずがない。


 どうやら、冒険者たちのステータスとして利用されるその店は、何も飲食店だけの素直な経営はしていないそうで。


 街灯に照らされたジークの瞳が、悪戯っぽく(きら)めいた。

 それがまるで内緒話をする子供のようで、そんな顔もするのかと、その意外さに思わず眠気も覚めた。


「あのお店の商品は、何も飲み食いするものだけではないんです」

「そ、お酒や料理よりずぅ〜っと高いけど、買えるのよ。()()()()()が」


 『箱庭』通いが "一流冒険者の証" だと称されるのは、そこに通えるだけの金銭があるという事、情報を買うという事が必要な立場である事……を、示すから。


箱庭(あそこ)の面白いところはな、常連一人一人に違う合言葉がある……ってとこだ」

「あ、じゃあ認められないと……?」

「そういうこと。……情報売る側が客を選ぶってんだから、なかなかだろ?」

「男心(くすぐ)ってますねぇ」

「男心かどうかはともかく、ドキドキはするだろ」


 と、ちゃっかり(くすぐ)られているテオドールをよそに、シキミ達は大通りを外れてゆく。



 情報屋にとっては、客も商品の内だろう。

 誰がどんな情報を得たか、それだって立派な情報(しょうひん)だ。


 それを自ら制限してゆくなど、下手をしたら死活問題だろうに。

 情報収集に余程の自信か、ツテがあるのか。あるいは、認められないほどの雑魚の情報など要らぬと、そういう──自負、なのだろうか。


 裏通りは入り組んでいて、明るい光も人の声もない。

 細い路地裏に立つ商売女の、値踏みするような視線を何度か感じては、慣れぬ空気にビクリとする。


 そんなことを意にも止めない三人は、意気揚々と進んでゆくものだから、シキミは慌てて歩調を合わせた。


「どんな面倒事があるのか、ちょっと楽しみになってきました」

「その言葉は私にグサグサ突き刺さりますッ……!」

「まー、なんだ、ほら、なんとかなる」


 オイオイと泣き真似をしてみたり、テオドールの下手な慰めを受けたり、ちゃっかりエレノアさんと手を繋いだり。薄暗い夜の道にあって、なんだかやたらと騒がしい四人組は、一つの古ぼけた壁の前で立ち止まった。


「ここです」

「壁ですけど??」


 目の前には薄汚れた壁──と、長方形の凹みが一つ。胸のあたりまでしかない、小さな窪み。

 その端に手をかけたジークは、躊躇(ためら)うことなく──それはまるで引き戸を引くように──引いた。


 月明かりに照らされてなお、街灯の届かぬ薄暗い夜の中。

 ぼんやりと浮かぶ壁の、その中央に、(かが)んでようやく通れるほどの四角い穴が空く。

 

「い……入り口……」


 ね、言ったでしょう? と振り返るジークの、したり顔が夜闇に弾けた。


ジークさんおちゃめ回です。


またしばらく更新遅れるかもしれませんが、がんばります!!!


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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