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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
43/109

43.曰く、だいたいペースが一緒。

 

 ──端的に言うと、大騒ぎになった。


ザワザワと漫画のように騒然とするギルド内で、シキミは一人「やっぱり留守番が良かった」と頭を抱えた。



 種も仕掛けも大アリな手妻(マジック)もどきを披露した後。

 「それはおいおい考えて、まずは報告に行きましょうか」というジークの一言で、シキミたち一行は冒険者ギルドへ行くことになったのだ。


 日も暮れて、遠出の冒険者たちもチラホラと帰還し始める頃。受け付けのカウンターで何やら報告している姿がよく目に付く。


 せっかく帰ってきたんだから一緒に、と半ば連行されるようにしてやってきた冒険者ギルドの、参加してもいないダンジョン攻略の達成報告とはこれ如何に。

 こと今回においては他人もいいところなのだが、両脇をテオドールとエレノアに固められて逃げられるわけがない。九割九分、私を揶揄(からか)って遊んでいるだけなのは明白なのだが、それがわかるからと言って何かが変わるわけでもない。


 まだ「白銀の糸(アルゲントゥム)」を結成して間もないため、パーティー結成の情報など出回っているわけもなく。Aランクチームに突如混じった異物(シキミ)へ、好奇の視線が容赦なく突き刺さる。

 冒険者の憧れ、そのAランクを冠する彼らにDランクのお()りなど役不足もいいところ。

 若干敵意の含まれた視線(それ)が、怖くないと言えば嘘になる。


 そんなもの気にするなとばかりにこうして連れ出すのも、Dランク(わたし)仲間(パーティーメンバー)であるということの宣伝の一つなのかもしれないけれど。


「先日お受けした『白銀(はくぎん)回廊(かいろう)』の達成報告なんですか……」

「……えっ……あの、三日前に受けてらっしゃる……?」

「はい。一昨日(おととい)出発してダンジョン内で一泊。先程帰ってきたばかりです」


 ギルドカードを作るときに顔を合わせたテンション高めの金髪美女とは違う、ベテラン風の受付嬢が「お前マジか?」という顔でこちらを見てきたので、慌てて一歩下がり、シキミはジークの背後へと退避した。私は参加していない。


「え……っと、 "達成報告" ということは、ボスの討伐まで……?」

「はい。最深層まで。諸事情あって急いだので、隠し部屋の確認まではしていませんが」


 これが証拠になります、とカウンターの上に置かれた人の頭ほどもある魔石と、数枚の(うろこ)。そしてシキミの腕ほどもある太い牙が幾つか。

 その瞬間、盛大にざわつくギルド内と、冒険者内で交わされる驚きの声。「おいおい嘘だろ? またかよ」という誰かの声に、その場に居合わせた人間は──もちろん当人たちを除いて──秘かに全員同意した。

 シキミはと言えば「アッこれいつもの感じなんだ」と半ば諦めと納得の境地に立っている。もはや涅槃(ねはん)を感じるところまで来た。(さと)れる。


「ボスの情報、ダンジョン内の構造などの情報はまた後日。俺が別個で来ます」

「そ、今日はとりあえず報告だけってことで。どう? これで承認下りっか?」

「──ッは……はい! 大丈夫です。過去の実績を(かんが)みて、さらにこれだけ証拠があればまず問題ないかと……」

「ではとりあえず。今日はこれの買取でお願いします。お金は三等分で、それぞれに入れておいてください」


 朗らかにそう言ってのけるこのパーティーとは、いったいどれほどの化け物なのか。一日でダンジョン攻略というのがどれ程のものなのかは、周囲の反応を見ていれば馬鹿でもわかる。

 本当にとんでもない人に拾われてしまったなぁ、という何度目かの感慨は、一人の男の声でかき消された。


「よぉ、テオ……と、新人ちゃんか? また派手にやってんな」


 にぱ、と人懐っこそうな笑みを浮かべる金髪──それは元気な受け付け嬢や、あの天使君とは違う、脱色したようなひどく軽薄な金色だったのだが──の少年が、片手を上げ、ひらひらとこちらに振りながら歩いてきた。

 顔にいくつもつけられたピアスを見るだけで、どう頑張ってもカタギではない。


「よぉ、シャウラ。暫く見かけなかったな」

「オウ、売れっ子の傭兵ちゃんだからな。ちょっと遠く行ってたんだわ」

「まだ首が繋がってるようで何よりだ」


 顔を輝かせたテオドールと数度手を打ち合わせて、二人は拳を合わせて笑う。

 少し似た雰囲気の二人は仲が良いらしい。


「おや、テオは魔の牙(オルコ)の方と面識があったんですね」

「なんだ、優男(やさおとこ)。俺たちのこと知ってんのか」

「はい。()()()()()()()はかねがね」


 へー、やっぱタダモンじゃねぇのな。

 小さく零された言葉と、笑っていながらも冷たく刺すような眼光がその場の空気を一瞬で変えた。

 騒がしいギルト内からシキミたちだけが切り取られたようなそれに、知らず知らずのうちに身体が強張る。


「…………ンま、アンタならオカシかないわな」


 再び(まと)う空気を変えた男は、先までの鋭さは何処へやら、どこか小型犬にも似た人懐っこい笑顔でへらりと笑う。

 遠くなった音が引き戻されるように、ギルドの喧騒はまたすぐ側で聞こえ始めた。


「バケモンばっかで()んなるなァ……ったく。お嬢さんもバケモノ見習いか? 頑張れよ」


 再びジークの背後に隠れたシキミを覗き込むようにして顔を出した男の、琥珀(こはく)色の猫目がきゅうと弓なりに緩み、真っ赤な口腔に白い犬歯がちらりと見える。

 慌てて首を左右に振ればケラケラと楽しそうな声を上げて笑われてしまった。


 ふと、何かに気がついたかのように顔を上げた彼が、突然「またな」と言ったかと思えば、来たときと同じように片手を振って、金色はふらりと人混みの中に紛れてしまった。


「……残念。逃げられてしまいました」

「テオも変な友達作るのねぇ」

「いやあんまり姐さんには言われたくねぇかな……」

「どうするんですかバケモノ見習いって! 見習ってなれるもんなんですかバケモノ!」

「いけるいける」


 またテオは適当言うんだから、と呆れたようなエレノアの手が、そっとシキミの背を押した。

 数歩前に出て、ようやく四人が少し並ぶ。


「収入も入りましたし、今日は俺のおごりで美味しいものを食べましょう。高いやつです」


軽く緩めた首元から取り出した銀色の冒険者カード(ドッグタグ)が、彼の手のひらで揺れた。


「さっすがリーダー!」

「わかってんじゃない」

「あ、私、お肉がいいです……!」

「変なとこで図太いな嬢ちゃん」


 出来たばかりの寄せ集め。偶然(うん)で繋がった不思議な(えにし)

 全く違うようでどこか同じな四人組は、仲良く連れ立って冒険者ギルドの喧騒を後にした。



 散々騒がされ、放置された冒険者達の心は「お前ら似た者同士だよな」の声で(おおむ)ね一致したとかしないとか。



しばらく更新できずにごめんなさい!!

また落ち着く間にさっさとストックためたいんですけどたまらないですねストック。なんでですかね。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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