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何故邪魔をするのだ、と影は鏡に問いかけた。
既に己の形も定まらぬ、抜け殻のような存在は、空虚で腹を一杯にして薄く、悲しく微笑む。
僅か口角が持ち上がった程度の、表情筋の痙攣のようなもの。
それを浮かべることの意味など、とうの昔に忘れてしまっていた。
────否、知っていたはずである。
わからなくなってしまったのは、己が魔王になったからだ。
システムに感情など必要ない。
魂に基づくありとあらゆる雑多なものを──それはつまり、感情や意志や覚悟や誇り──ありとあらゆる、人を人足らしめた、生物を生物足らしめた一切の尊厳を、己は喪ったのである。
今日も、瞼を閉じれば世界が燃える。
耳を澄ませずとも、怨嗟の声は鼓膜を揺らす。
嫌だと言って、一体誰が助けてくれるというのだ。薄暗い路地にうずくまる子供さえ助けられぬというのに。
魔王は嗤う。鏡のなかのヒトガタは、酷く哀しそうな顔をした。
「これは定め。これは決まり。ルールに逆らうのは愚かだと、そうは思わぬのか」
『傷つく人がいる事を、仕方ないで済ませたくはない』
「たとえそれが、世界のバランスを崩すことになったとしても──?」
『私は賢人でも、勇者でも、英雄でもない。ちっぽけな一人の人間だから。……私の手の届く範囲の人が悲しむのを良しとはしないよ』
嗚呼、駄目だ。
システムに重大な欠陥があってはいけないのだ。
バグが、この鏡の中で形をとって、我の邪魔をする。
この身は世界の怨恨を、ありとあらゆる負の感情を受け止め、吸収し、発散することで成り立っている。
魔王がいなくなったなら、誰がコレをやるというのだ?
『わかってるくせに、あなたは私。私はあなた』
「──黙れ。過去の我。我の影」
やがて、靄々とした、曖昧なヒトガタは霧散した。
ぐるぐると渦を巻いて、それは薄暗い鏡の中で新たに形を取り始める。
『ねぇ、もはや止まれないのなら────私と一緒に眠ろう』
伸ばされた、見覚えのある手。
己のものであり、もう既に己のものではない、片割れの手。
嗚呼、嗚呼。
なんて甘美な響きだろう。
いっそ、眠ってしまえたらいいのに。
勇者はきっと泣くだろう。
いつか来る災厄の時──あの人はきっと泣くだろう。
喪ってしまった、かつての私も、きっと苦しむことだろう。
「──そんなことはできないと、わかっているくせに」
今度こそ、本当に霧は霧散して、真っ暗な鏡の中には何も映らなくなってしまった。
────嗚呼。
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