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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
41/109

41.謔イ縺励>縲∝凍縺励>縺薙→縺後≠縺」縺溘�縺ァ縺吶€�

 

 何故邪魔をするのだ、と影は鏡に問いかけた。


 既に己の形も定まらぬ、抜け殻のような存在は、空虚で腹を一杯にして薄く、悲しく微笑む。

 僅か口角が持ち上がった程度の、表情筋の痙攣(けいれん)のようなもの。

 それを浮かべることの意味など、とうの昔に忘れてしまっていた。


 ────否、知っていたはずである。

 わからなくなってしまったのは、己が魔王になったからだ。


 システムに感情など必要ない。

 魂に基づくありとあらゆる雑多なものを──それはつまり、感情や意志や覚悟や誇り──ありとあらゆる、人を人足らしめた、生物を生物足らしめた一切の尊厳を、己は喪ったのである。


 今日も、瞼を閉じれば世界が燃える。

 耳を澄ませずとも、怨嗟の声は鼓膜を揺らす。

 嫌だと言って、一体誰が助けてくれるというのだ。薄暗い路地にうずくまる子供さえ助けられぬというのに。


 魔王は嗤う。鏡のなかの()()()()は、酷く哀しそうな顔をした。


「これは定め。これは決まり。ルールに逆らうのは愚かだと、そうは思わぬのか」

『傷つく人がいる事を、仕方ないで済ませたくはない』

「たとえそれが、世界のバランスを崩すことになったとしても──?」

『私は賢人でも、勇者でも、英雄でもない。ちっぽけな一人の人間だから。……()の手の届く範囲の人が悲しむのを良しとはしないよ』


 嗚呼、駄目だ。

 システムに重大な欠陥があってはいけないのだ。

 バグが、この鏡の中で形をとって、(わたし)の邪魔をする。


 この身は世界の怨恨を、ありとあらゆる負の感情を受け止め、吸収し、発散することで成り立っている。

 魔王(わたし)がいなくなったなら、誰がコレをやるというのだ?


『わかってるくせに、あなたは私。私はあなた』

「──黙れ。過去の(わたし)(わたし)(バグ)


 やがて、靄々(もやもや)とした、曖昧なヒトガタは霧散した。

 ぐるぐると渦を巻いて、それは薄暗い鏡の中で新たに形を取り始める。


『ねぇ、もはや止まれないのなら────私と一緒に眠ろう』


 伸ばされた、見覚えのある手。

 己のものであり、もう既に己のものではない、片割れの手。


 嗚呼、嗚呼。

 なんて甘美な響きだろう。

 いっそ、眠ってしまえたらいいのに。


 勇者はきっと泣くだろう。

 いつか来る災厄の時──あの人はきっと泣くだろう。


 (うしな)ってしまった、かつての()も、きっと苦しむことだろう。


「──そんなことはできないと、わかっているくせに」


 今度こそ、本当に霧は霧散して、真っ暗な鏡の中には何も映らなくなってしまった。



────嗚呼。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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