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レベル1からやり直してこい!?  作者: 参星
呪われた宝石編
33/109

33.曰く、はじめてのおつかい。

 

 昔よく、テレビで見た海外の露店街を思い出す。

 色とりどりの食器や果実。肉や野菜や、よくわからない品物たち。そうした雑多なものが所狭しとひしめいている光景とは、まさしく別世界という感じがして、自然と気分が盛り上がる。


 居並ぶ店々の中には揚げパンのような軽食や、水あめのような駄菓子の類もあれば、さながら夏祭りの夜店のようであった。

 風に乗って漂う砂糖とバターの甘い味。

 食欲を誘う、誘惑の香りにシキミは思わず大きく息を吸う。


 さて、どれを買おうか。


 依頼の確認ついでに銀貨を冒険者カードに登録しようかとも思ったのだが、露店では硬貨のほうが使いやすいですよと言われてしまったので、まだ手に持ったままである。

 丸い金属は手のひらに握りこまれて、人肌に(ぬく)くなっている。

 ──ちなみにピンとくる依頼はなかった。


「よぉ、そこの可愛いお嬢ちゃん。アイスあるよ! どうだい? 食べていかないかい」

「味は?」

「バニラ、イチゴ、チョコ、リンゴとモモだ!」

「お値段は!」

「お嬢ちゃん可愛いから銅貨一枚おまけして、一掬い銅貨4枚でどうだい?」

「買います!」


 声をかけてきた元気のいいおじさんが、こっちこっちと手招くものだからつい足が向かってしまった。

 この世界でもアイスがあるのかと近づけば、ソフトクリームというよりはジェラートに近いそれが寸胴鍋のようなものに入って冷えていた。

 掬ってコーンに乗せるのだろう、アイスクリームディッシャーを片手に、カチカチと鳴らしているのが面白い。


「手持ちが銀貨しかないのだけれど、大丈夫ですか?」

「……おっ? お嬢ちゃんさてはイイトコのご令嬢かな?……大銅貨があるだろう? お釣りはそれで渡すから平気さ」

「だ、だいどうか……」

「おう、1枚ありゃ銅貨10枚と同じよォ」


 俺達にとっちゃ銀貨のほうが珍しいぜ、と朗らかに笑われては確かにと頷く他はない。

 しかし、よくよく考えてみれば当たり前の話ではある。数が必要な硬貨であれば、五円玉なり、五百円玉なりが必要にもなるのだろう。

 おかげさまで、私はすっかり深窓のご令嬢扱いなのだが、世間知らずと(なじ)られるよりはマシだ。


 それにしても、貴族かもしれない人間に、そうとわかった上でこの軽口、この態度。どうやらこの国の貴族と平民の距離は近いらしい。それが良いのか悪いのか、シキミには判断ができない。

 そういえばその辺りの話はできずに、否、聞けずに彼らは出かけてしまった。帰ってきたら詳しく聞きたいのだが、さて、それまで覚えていられるかどうか。


「あはは、うっかりしてました。寝起きだからぼぉっとしちゃって。……チョコレートいただけます?」

「はいよ──お釣りは大銅貨9枚と、銅貨6枚な。まいど!」

「ありがとうございます!」


 銅貨より一回りか二回りは大きい銅貨を貰い、握ったそれをスカートのポケットへと放り込む。

 そのうちこんな財布も必要かな、と胸元を見下ろせば、ピンクの蛙の顔がお使い代を飲み込んでケロリと揺れていた。


 すっかりフリーになった右手でしっかりと掴んだコーンから、ひんやりとした冷気が伝う。

 ひとくち口に含めば、しっかりとした甘さにココアの香り。ちゃんとした、濃いチョコレートの味がするものだから、この世界のスイーツ基準には否が応でも期待が高まる。

 舌触りは柔らかで、ソフトクリームとジェラートの混じったような不思議な食感。未知の感覚が舌を優しく撫でてゆくのが面白い。


 やっぱり何もかもが同じではないんだ、と、今更ながらの感想をアイスと共に口に含みながら、シキミはまたキョロキョロと周囲の物色を始めた。

 アイス片手に観光の、気分は気楽な旅行客だ。



 そんな風だから、まぁ、気がつくのに遅れた、というか。

 正直視界にも入っていなかった。



 どん、という衝撃と、遅れてやってきた「やってしまった」という気持ち。

 漫画によくある「高かったんだぞこの服、どうしてくれんだ!?」という展開が脳裏を駆けめぐって蜷局(とぐろ)を巻いた。

 頼れる保護者たちは不在だというのに、一体自分はどうなってしまうのだろうと不安に怯えながら、シキミはとにかく目の前の天使君──否、少年に謝ることに決めたのである。




本編と全く関係ないんですけど(書くことがなかった)

私いつも他の作家様の作品読みに行かせていただく度に評価忘れるんですよね。

読んで(あるいは感想、レビュー書いて)満足するんですよね。レビューとか感想みたいに目立つところにおいてほしくないですか? 評価。忘れるので。(解:お前がポンコツなだけ)


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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