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高級霊にもらった30万  作者: チュン
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 それからマントルは、「トランスフォーム教団」と原稿チェックなどを行ったが、それらはすべて電話とFAXで、再び、出向くことはなく、雑誌の発売日を迎えた。ところが発売の当日、教団からマントルに直接電話が入り、今すぐ来てほしいと言う。仕方なくマントルは車を走らせた。

「間違いがあるといけませんので、原稿チェックもやりましたし、何か問題がありましたか?」

 アーヴィングに会うと開口一番、マントルは尋ねた。

「問題は、これだよ。これはどういう意味ですか?」

 アーヴィングが差し出したのは、マントルが書いた記事でも広告でもなく、編集ページで、そこには、宗教学者ゴンチャロフ氏の寄稿文が掲載されていた。題名は「霊感商法についての一考察」というものだった。

「これは、正当な宗教活動を行う、我が教団への冒涜かね」

 マントルは動揺を抑え、黙ってその記事に目を通した。

「あの、こちらの教団では霊感商法をされてるんですか?」

 顔を上げるとマントルはアーヴィングに尋ねた。

「いや、うちは信仰に基づく活動をしているだけで、違法なことなどは一切やりませんよ。やるはずもない」

 寄稿文は霊感商法への注意喚起は書かれていたが、具体的な教団名などは書かれてはいなかった。

「だったら、問題ないんじゃないですか?何が問題ですか?」

 そう言うとアーヴィングは目線を外した。

「いや、宗教団体というと、誤解や偏見を持たれる方もいられるので、ちょっと考えすぎました。気になさらないください」。

 話はそれで終わり、マントルは教団を後にした。それ以来、教団を訪れることはなかったのだが、彼が不思議だったのは、その後、マスコミで「トランスフォーム教団」の霊感商法が大々的に報道されるまで、およそ半年の間、広告出稿が継続されたことである。

 他にも、自己啓発セミナーを大々的に開催したいと言う法師や、地方を中心にヨガ教室を展開したいというマントルと同い年の人物など、「不可思議倶楽部」に広告を出稿したいという話がいくつも重なり、マントルの月の収入は、瞬く間に増えていった。

 ただ、マントルは様々な宗教に接すれば接するほど、ますます宗教というものが分からなくなっていった。

 後に、イスア、クリープとの取材旅行の時、マントルは呟いた。

「本当の神様って、どこにいるんだろう?」

 すると、イスアが笑った。

「遠くの見えない神様なんて仕方ないよ。神様だったら、私たちの周り、見えるところに、いっぱいいるじゃない」

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