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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

チートつっても……僕は人の『ステータス』が見れるだけで、凄いのは他の人なんですって。

作者: フユキ

 

 異世界召喚された。

 クラス召喚。

 授業中、教室の床に魔方陣が光って気づいたら石造りの巨大な部屋。

 目の前にはエラそうなオッサン。

 オッサンの言う事を要約すると───



「お前等は勇者」


「魔王復活の予言があった」


「お前等、ウチの変わりに戦ってきて」


「チートあげるから」



 ───とのこと。

 なんでだよ。

 ……と、思ってたけどみんな乗り気みたい。

 なんでだよ。

 まあこの手の作品は読み漁っているし……何とかなるか。



「はあ、取敢ず【ステータス】と」



※※※※※※※※※※

名前・灰矢 健人(はいや けんと)

種族・人間

性別・男

年齢・17歳

職業・学生

常態・軽い混乱

肉体の強さ・103 ( )

魔力の強さ・62

【言語理解】

【ステータス閲覧】

※※※※※※※※※※



 コレが僕の強さか。

 ……強いのか、弱いのか。


 スキル表示は基礎しか無いな。

 コレから貰うのか?



「お、健人!

今なにをしたんだ?」


「ああ、貝田くん。

今のは【ステータス】って言って……」



※※※※※※※※※※

名前・貝田 仁(かいた じん)

種族・人間

性別・男

年齢・17歳

職業・学生

常態・中くらいの混乱

肉体の強さ・2824 ( )

魔力の強さ・143

【言語理解】

【鬼神の加護】

※※※※※※※※※※



 つ……強いな。

 てか、スキル欄が違う?

 【言語理解】はともかく、【ステータス】って、この手の話の御約束スキルだからデフォだと思ってたけど……まさか違う?

 えっ??

 僕のチートって【ステータス閲覧】!?

 いやいや、まさか……。



※※※※※※※※※※

名前・千賀 義彦

種族・人間

性別・男

年齢・17歳

職業・学生

常態・強い混乱

肉体の強さ・712 ( )

魔力の強さ・803

【言語理解】

【必中必殺】

※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※

名前・松岡 良子

種族・人間

性別・女

年齢・17歳

職業・学生

常態・強い混乱

肉体の強さ・446 ( )

魔力の強さ・2036

【言語理解】

【聖女の祈り】

※※※※※※※※※※



 あれっ?

 あれれっ??

 まじか。

 まじで僕のチート、【ステータス閲覧】か!?

 戦闘用チートが無くて、こんな世界でどうやって生き残ったらイイの??



◆◆◆



 ───ってなワケで……早々、戦線離脱しました。

 基本ステータスが低い上に、スキルも戦闘に役立たないから。 せめて一般生活に役立つスキルなら、仕事はある。

 材料さえあれば、過去に食べた料理を一瞬で再現する【調理】。

 どんなに汚れも、一瞬で綺麗にする【掃除】。

 一度理解した物体の、複製を作る【模型】。


 ……でも僕のスキルは、商売にも成らない。

 たまに、物の正体や品質が分かる【鑑定】や本物か偽物かを見抜く【真贋】等の順番が待ちきれない人や彼等にお金が払えない人から、「同じチートだから」 という理由で仕事がくるけど……大抵ガッカリされる。

 だからいつも、


「チートつっても……僕は人の『ステータス』が見れるだけで、凄いのは他の人なんですって」


 と、説明しなきゃならないんだ。

 なので普段は森で薪を集めて売っている。

 クラスの、優しい女子が【大工】のスキル持ちで……街外れの森の中に格安で建ててくれた小屋に寝泊まりしている。



「はぁ~……誰か早く、魔王たおしてくれないかなあ……。

そしたら、日本に帰れるのに……」



 コレはエラそうなオッサンが約束してくれた。

 【真偽】のスキル持ちが、嘘じゃないって証明している。



「……ん?」



 げっ!

 赤ちゃん……!?

 落とし物……なワケ無いよなあ。

 タマに居るんだよね。

 要らない物を森に捨てるヤツ。

 捨て児かあ……。

 せめて名前が分かれば……いや、分かっても僕に出来る事なんて───



※※※※※※※※

名前・無名 アスモデウス

種族・魔王

性別・女

年齢・0歳

職業・赤ちゃん

常態・空腹

  ・オシメが濡れている

肉体の強さ・23 ( )

魔力の強さ・862144783532214792

【良縁】

※※※※※※※※



 ……………………んん?



◆◆◆



「パパぁ~!

薪あつめてきたよぉ~♡」


「有難う、サキ」


「あとナマイキなドラコンも採ってきたよぉ~♡」


「あ……有難う、サキ」



 アレから3年。

 まだ魔王は倒されていない。

 だってウチに居るもん。

 案外バレないもんだね。

 よく分かんないけど……西の大陸に魔王が出たとか (←四天王最弱の男だったらしいよ?) 、東の大山脈の頂上に魔王城が出現したとか (←時期がサキの生まれたぐらいの日にちと、合うんだけど。) 、デマが飛びかっている。

 僕はこのコを育てる事にした。

 そりゃ一瞬、考えなかった(・・・・・・)ワケじゃ無い。


 ……でも、まあ無理だった。

 今ではこの生活も悪くはないかなあと、思っている。



「じゃあドラコンの素材採取するかあ」


「わーい♡」



 ドラコンの腹をさく。

 サキが無茶な魔物ばっかり採ってくるんで、魔力を無くした魔物の一番柔らかい部分を裂くぐらいは出来るようになってきたよ。

 こーゆーのは、腕力よりコツだし。



『ゴロン』


「あっ、パパ!

ドラコンのお腹から、何か出てきたよ!?」


「そうだねぇ、何だろう?

真珠かな?」



 もう20歳の僕が、両手で抱きかかえられる大きさの……綺麗な真球。

 何だろ?

 ドラコンの宝?



『ビキッ……ビキッ……ッ!!』


「割れる!

割れたよ、パパ!」


「う……うん。

中身は───あ、赤ちゃん!??」



 な、何で赤ちゃんが……?



※※※※※※※※

名前・無名 ペンドラゴン

種族・勇者

性別・男

年齢・0歳

職業・赤ちゃん

常態・空腹

  ・オシメが汚れている

  ・絶対防壁

肉体の強さ・385 ( )

魔力の強さ・752116

【天命】

【絶対防壁】

※※※※※※※※



 ………………ええぇ?



◆◆◆



「サキ御姉ちゃぁーん!

待ってよー、【聖剣エターナルカリヴァー】!」


「あっ、ちょっと!

聖剣スキルは卑怯よ!?

【次元崩壊ダークプラネット】!」


「痛ぁーい!」



 痛いで済むんだ……さすが勇者。

 万が一、狙いがズレて地表にカスリでもしたら大陸の形が変わるスキルなんだけどな……。

 赤ちゃんでもドラコンに食われても平気なんだし、ソレでこそ人類の守り手なのか。


 アレから7年後。

 この世界に転移して10年。

 僕は27歳。

 サキ (魔王) は10歳。

 レイ (勇者) は7歳になった。



「ああーん、お父さーん!

御姉ちゃんが酷いんだよー!

……だから一緒にお風呂入ろ?」


「ちょっと!?

なんで、『だから』 になるのよっ!!?

……お父さんとお風呂に入るのは……あ、アタシだもん…………」


「二人とも、もう大人でしょ?」



 確かに父として、惜しみない愛情を注いだつもりだけど……なんか二人からは親子愛じゃない、もっと別のナニかを感じる気がする……。

 育て方、間違ったかなあ……?



◆◆◆



 ソレから更に1年後。

 ウチに客がきた。



「客なんて珍しいな……誰だい?」


「俺だよ」


「君……ひょっとして、貝田くん!?」



 一緒にこの世界に召喚されたクラスメイトの貝田くん。

 スキル【鬼神の加護】により、凄い肉体の強さを持っていたハズ。

 ソレでも真の勇者たるレイの方が強いんだけどね。



「ど……どうしたんだい?」



 まさか……魔王であるサキを退治しにきた、とか?



「いや、久々に旧友の顔を……とね」


「つ……疲れてそうだね」


「そりゃまあな。

クラスメイトで、まだ勇者活動しているのは俺の含めて四人だけだし。

他はみんな結婚したりして……さ」



 あー……確かにこの世界へは誘拐同然に連れてこられたけど、住めば都ってやつで一年を通して気候は穏やか食糧は豊富。

 人の性格は堅実。

( 上はアレだけど。)


 受験戦争も無く、かつ、安定した定職に付けた。

( 僕以外。)


 こんな歳になったら、流石に諦めもつくし……この世界に骨を埋める気の人も多いだろうね。



「だけど……俺は残してきた家族と、別の学校に進学した幼馴染みの彼女が気になってるんだ!」



 たぶんその人、もう結婚してるんだろうけど……。



「もう結婚してるんじゃないかしら?」


「ぐはっ!?」


「こ、こらっ!

サキ!?」



 こんな疲れた顔をしてる人を追い詰めちゃ駄目だよ。



「ソレでオジさん、どうするのー?」


「あ、ああ……。

健人、ダークドラゴンという魔物を知っているか?」


「いいや?」


「魔王が誕生して11年……。

然れど、人間界になんの被害も出ていない」



 まあ魔王は、我が家で勇者とトランプしてるしね。



「王は今代の魔王が、病気か……臆病者だと判断した」


「なにぉー!?」


「サキっ!」



 今ちょっと大事な話をしてるから。



「ヘタに現魔王を殺して、戦意旺盛な魔王へと代替わりされても困ると判断した王は、ダークドラゴンという魔物を退治したら地球に帰してくれる……と、約束してくれた」


「そうなんだ!?」



 コレで、そのダークドラゴンとやらが退治されれば……サキが殺される心配が無くなるぞ!

( 真の勇者であるレイより、数万倍は強いサキを殺せる人間が居るとは思えないけど。)



「でっ!?

そのダークドラゴンって何処に居るんだい!?

まさか魔王みたいに、何処に居るかも分からないのに退治へ行けって話じゃあ……」


「いや、ダークドラゴンは西のロレント王国で実際に暴れていて、被害が出ている」


「そう……良かった……。

( ロレントの皆さんゴメンなさい。)

そのダークドラゴンを、貝田くん達で倒せそうなのかい?」


「それが……【魔法使い】は引退したし、前衛も俺以外にあと一人は欲しい」


「じゃあ、アタシが魔法使いをやるわ!」


「き、君が!?」


「なんたってアタシは魔法使いの王、魔おぅ───むぐっ!?」


「サキっ!

……こ、このコは魔法が得意だから」


「じゃあ僕が前衛をやる!」


「き、君まで!?」


「こっちのコは( 聖 )剣が得意だから」


「で……でも子供じゃないか?」



 まあ、11歳と8歳だしね。



「しかし……この国にもはや、マトモな戦士は居ない……。

せめてヤル気の有る君達に頼るしか無いのか───」



 寧ろ、二人だけで充分じゃないかな。

 寧ろ、足手まといなのは……



「寧ろ、足手まといなのは貴方達よ」


「サキっ!」



 僕は怒る時は怒る父親だ。

 ……だって貝田くん、何かもう腐葉土みたいな顔色になってるし。



「……じ、じゃあ貝田くん、少し待ってて。

旅の準備をしてくるから」


「ええっ!?

健人も付いてくるのか?

その……健人、戦闘は───」


「出来ないよ。

けど見ての通り、片親で子供を育ててるから。

ゴハンぐらいなら作れるよ」



 とにかく付いていって、二人が魔王と勇者だとバレないようにしないと。



「……そうか。

まあ、我が子達を放っておけはしないよな」



 一応……君達もね。



 ◆◆◆



「───寂しくなるね」


「そ、そうだ……な」



 貝田くん達が、地球に帰る。

 ダークドラゴンを倒したから。



「俺達の12年は、何だったんだ……」


「な、何かゴメンね。

君達が真面目に戦っている横で、ウチの子達が姉弟ゲンカ始めちゃって。

その余波で、ダークドラゴンを倒しちゃって」


「俺達がズタボロになった相手にな……。

だ、だけど真の 『何だったんだ』 はオマエだよ健人っ!?」


「ええっ!?

何で僕っ!?」



 僕は旅立つ前に宣言した通り、ゴハンを作るぐらいにしか役に立てなかった。



「スキル持ちって、ついついスキルに頼るから……技術って育たないんだ。

魚屋が魚しか、肉屋は肉しか『解体』出来ないのに……健人は大概の生き物のを『解体』『調理』出来る」



 サキとレイの二人が、散歩気分で見たこともない魔獣・魔物を仕留めて持って帰るからね。

 ウチの稼ぎは、そうゆう魔物の素材がデカイ。



「けど……何より【ステータス閲覧】だ!?

俺達が血眼になって探している人間を、パッと見回しただけで発見するなんて!」


「太陽の祠の仙人様を、パパが一瞬で見つけたんだもんねー♡」


「そうだ!

誰があんな……街中で女王様にぶたれて喜んでいるジジイが、偉大なる八賢者の一人だって分かる!?」



 やめて。

 それ、僕の黒歴史。



「パパが分かるんだよ♡」


「ああ、君達のパパは変態の本質を見抜く天才だ!」



 【ステータス閲覧】の誉め方で、おそらく最低・最悪の誉め方。



「地球に帰ったら……【鬼神の加護】なんて、もて余すだけで何の役にも立たないだろう。

だけど【ステータス閲覧】は……健人の才能は違う」


「…………」


「…………。

……一緒に地きゅ───」


「貝田くん。

僕は君と、友達だと思っている『つもり』だよ」



 きょとんとする、サキとレイの頭を撫でつつ……貝田くんの顔を見る。



「……そうか、そうだな。

スマン、忘れてくれ」


「うん」


「……じゃあ、行くよ。

元気で───」


「───元気で」


「「バイバ~イ♡」」



 貝田くん達は寂しそうに笑い……王様が用意させた、世界転送の魔方陣が放つ光の中へと消えていった。



「…………。

【ステータス閲覧】、か」


「パパ?」


「ん……ちょっと考え事をね。

二人共、手伝ってくれるかい?」



 僕がそう言うと、二人の顔が……パアッと明るくなる。

 良い子供達だなあ。

 ……絶対に守らなきゃ。



◆◆◆



 ソレから数ヵ月後……大陸の端で、一軒の『人探し事務所』が建てられた。

 最初は『人探し事務所』という概念の無かった異世界では、パッとしなかったが───数年後には国全体に影響を与える程に成長。


 ……更に十数年後。


 本来は所長しか持って居なかったと噂される『謎のスキル』を、子供たちが受け継いだ事により……事務所は大陸全土へと拡大。

 事務所の名を『探偵事務所』とあたらためる。

 その……どんな犯罪者であろうと国の重鎮であろうと探しだす『スキル』に、数々の暗殺者が送られるも───


 暗黒の破壊魔法(・・・・・・・)光の絶対防壁(・・・・・・)を持つ、子供達に危害を与えるのは不可能であった。


 更に数十年後、人探しだけで世界を平定させた初代所長が老衰で死去。

 最後まで彼は───



「チートつっても……僕は人の『ステータス』が見れるだけで、凄いのは他の人なんですって」



 ───と、自分よりも自分の妻や子供達を褒めあげ謙遜していたという。

 

 

【探】

さぐる。

さがす。


【偵】

そっとのぞいて見る。

そっと様子を見る。

様子を見て時機を待ち受ける。



◆◆◆



貝田くん


「いやぁ~……アレ、絶対魔王だったよな?」


貝田パーティA


「あ、やっぱり?」


貝田パーティB


「男の子の方……聖剣を使ってたよな?」


貝田パーティC


「……ダークドラゴンが相手で良かったあ…………」


貝田くん


「 ソレに【ステータス閲覧】……目前の人間がどうゆう職業か(・・・・・・・)が分かる『アレ』は───

暗殺者も敵対組織も、相手が準備する前に(・・・・・・)───」



◆◆◆



勇者スキル【聖杖ヘンゲンジザイ】


伝説の杖『変化の杖』と同じく、使用者を有りとあらゆる姿に変化させる。

変化時間は、使用者が望む間ずっと。

 

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